理路整然、ゆえに奇跡
フォスター・ザ・ピープル『スーパーモデル』
2014年03月19日発売
2014年03月19日発売
ALBUM
U2やニール・ヤングなどに評価されつつ、アルバムとしても完成度が高かった『トーチズ』だが、やはり多くの人にとってフォスター・ザ・ピープルのデビュー作は大ヒット・シングル〝パンプト・アップ・キックス〟によって定義付けられていることは否めない。それだけに、セカンド・アルバムは彼らにとって鬼門であった。〝パンプト?〟の成功を完全否定するのも、または再現させようとするのも、どちらも凶と出てもおかしくないギャンブルだから。初期衝動で辿り着いたデビュー作をフォローアップするアーティストが初めて大きな壁にぶつかることはもはやロックの定説である。『スーパーモデル』は期待をはるかに上回る作品だ。正しくデビュー作の成功のメカニズムが解かれていて、前作で見られた珠玉のダンス・ポップもちゃんとあり、マーク・フォスターのビーチ・ボーイズへの愛情も迸る。しかし、LAのセレブ・カルチャーを恐ろしく客観的に描いた本作で強烈に光るのはマークの変態的なアート・センス。前作には見られないサイケでプログレな曲もあり、全体的に深く濃くダークに進化しているのだ。にもかかわらず、迷走することも地味になることもなく、前作と変わらぬスッキリ感が残っているのはまさにそれをはっきり形にできる彼の堅実な職人気質ゆえ。そもそもマークは長年裏方を務めてきた苦労人で、ファーストも初期衝動とはとても言えないほどの緻密さがあった。この人の場合、クリエイティヴィティが爆発しても、暴走することは決してないのだ。『スーパーモデル』はまさにその非凡な才能の実証。恐るべし、遅咲きスター。(内田亮)