ALL OFF 結成からの12年を総括するアルバム
『Re:sound』を語る

ALL OFF

ALL OFFがメジャー1stアルバム『Re:sound』をリリースする。初代RO69 JACK優勝者としてCOUNTDOWN JAPAN 08/09に出演。メジャーデビュー以降アニメ主題歌となるシングルを3連投し、満を持して放つ本作は言うなればライブバンドによる不屈のポップミュージック。ヘヴィなロックから聴きやすいバラードまで多彩な曲調がずらりと並ぶ。そして苦しい状況であっても負けることなく、僕らに寄り添って支えとなってくれるようなメッセージ集でもある。それって最強だし、多くの人に伝わる音楽だと思う。so-hey(Vo)に制作背景を訊いた。

インタビュー=秋摩竜太郎

その時のベストのものを入れるのがポリシーなので。カップリングにもならなかったような曲はアルバムに必要ない

――結成からは約12年ですがやっぱりメジャーデビューが大きな区切りとなったはずで。今回のアルバムはそこから1年の集大成かと思いますが、自分としてはどんなアルバムですか?

「フルアルバムとしては2年ぶりで、気がつけばスパンが空いたなと思います。メジャーデビューしてからシングルを3作出したのでそれらを含めたアルバムを出すことになったんですけど、シングルプラスB面集みたくなるのは嫌で。タイアップのあるシングルだといろんな人のイメージが関わってきますけど、アルバムではそれ以外の曲で自分たちのやりたいことをがっつり出したいなと」

――シングルを3作出してからアルバムへという流れはある程度決まっていたんですか?

「最初の2作を出した時はアルバムの話は特になくて。3作目の『リフレインボーイ』を出したあたりで『アルバム出しますか?』みたく決まったという感じですね」

――そのタイミングで曲のストックはありました?

「常に作り続けてはいるんですけど、その時のベストのものを入れるというのがポリシーなので、シングルの時に作っていたものはひとつも入ってなくて。その時にあったいい曲はカップリングに入れているし、カップリングにもならなかったような曲は必要ないと思ってるので。今回のアルバムに入ってるのは最新のものです」

――2016年の活動において海外というキーワードもありましたよね。アメリカのアニメイベントに出たり台湾のフェスに出演したりしてますが、それらから得たことは?

「海外でやるというのが結成した時からの夢で。ただ日本でももっと認められないといけないということで日本語詞を意識的に増やしてたんですけど、実際海外に行って、バランスが大事なのかなと思いました。英語だけやっててもアメリカのバンドには勝てないわけで。やっぱり僕らはJ-ROCKだから日本らしさは大事だなと。英語と日本語のおいしいとこ取りではないですけど、そういうバランスで勝負したいと思いましたね」

――実際向こうのお客さんはどんな反応でした?

「僕らが出させていただいたのはアニメ系のイベントだったので、日本語が好きな人も多かったんです。現地にローカライズされた音楽を求めてるわけじゃなくて、日本ならではのサウンドを求めてる感じで。それを肌で感じました」

――日本のバンドが海外で勝負するために英語で歌うのはわかるけど、so-heyさんの場合は帰国子女だったということも大きいわけで。つまり自分の個性とバンドとしての立ち位置をミックスする。それって難しくないですか?

「自分が歌詞を書く時って、英語のほうがすんなり出てくるんですよ。やっぱり幼少期に向こうにいたので。今回制作中にメンバーやスタッフと話したんですけど、『お前は中身が日本人じゃない』って言われて。例えば『愛してるよ』とか普通に言っちゃうんです(笑)。日本だと遠回しに言うことが美しいとされますけど、僕はワビサビがわからないのでボンと言っちゃう。そういう意味では日本人のバンドの方が英語で歌うのと違って、現地の人たちと同じ感覚で英語を使っていて、たまに日本語の自分が出てくるみたいな感覚ですね」

自分が苦しかった時は誰にも声をかけてもらえなかった。あの時こう言ってくれたら救われたっていうのを音楽で表現したい

――今作はまずシングル曲にこれまでのALL OFFらしさが詰まってると思うんです。ヘヴィでもあるしキャッチーでもある。

「そうですね、でもシングルはもう世に出してるものなので聴きどころはむしろほかの曲だなと。シングルの“One More Chance!!”や“Never Gave Up”はライブで盛り上がることを意識したんですけど、そうやって身体的にノせるんじゃなくて、アルバムの曲では心をノせるアプローチをしたいと思いました」

――たしかに。このアルバムを聴いて一番グッときたのは“In Shadows”なんですよ。ALL OFFって売れることを是として音楽的仕掛けを散りばめてきたと思うけど、この曲は違う。ただシンプルに感動できるかどうかだけを追求してる。それが心をノせるってことですよね?

「まさにおっしゃるとおりで。もちろん売れたいっていうのは声を大にしてずっと言ってきたんですけど、今回は世間から何を求められてるのかみたいなことを考えるのすらもやめようと思って。メンバー5人で改めて話し合ったんですよ。アルバムを作るにあたって、『俺ら5人が全員一致でカッコいいと思うのは何なんだろうね』って。で、『これでしょ』っていうのを一番最初に出した曲が“In Shadows”だったんです。なのである意味インディーズデビューした時の感覚に近いというか。もう売れるとか売れないとかぶっちゃけどうでもいいので、自分たちが心からカッコいいと思うものをやってやろう。ただひたすら自分たちの内面を出そう。そういう気持ちで作りました」

――僕、書くか死ぬかでライターやってるんですけど。

「めちゃくちゃカッコいいですね(笑)」

――いや(笑)、そういう人間だからっていうのもあるかもしれないけどこの曲の歌詞がすごく響いて。《失くした物》や《つまづいた日》はあるけど、だからこそ今を全力で生きて未来へ向かおうっていう。なぜこういう歌詞を?

「基本的に僕、人生で勝ち組になったことがないんですよ。底辺からものを見るというか、そういう癖があって。中学の頃とかはずっといじめられてましたし。あとは昔付き合ってた彼女にひどいフラれ方をしたりとか。常に見返してやろうっていうネガティブエンジンが満タンなんです。そういう視点から抜け出せなくて。だから、心のどこかに拭い去れない孤独感みたいなものがずーっとある。それを吐き出したくてやってる。だから人生ハッピーな人が聴いてもなんとも思わないかもしれないけど、虐げられてた人とか、満たされてない人に寄り添えるような曲を書けたらいいなっていうのがすごくあります。自分が苦しかった時は誰にも言えなかったし誰にも声をかけてもらえなかった。でもあの時こうしてくれたらとか、こういうことを言ってくれたら救われたのにっていう言葉を音楽で表現したいんです」

――吐き出すと言ってもパンクのように怒ってるわけじゃないですよね。

「曲を書く時に、怒りとか不満がテーマになることってなくて。言えないけど本当はこう思ってるみたいなもどかしい感じが自然と出ちゃうんですよね。相手を攻撃するのではなくて内省的というか」

――そういう音楽に救われたことがあるんですか?

「そうですね。すっごいヘコんで周りに誰もいなかった時にいろんな曲を聴いたんですけど、なんていうか自分を包んでくれたのは攻撃的な曲じゃなくて、あったかい曲だったんですよ。そっと寄り添ってくれるような、そういう曲に僕は救われてきたので、自分が書くとしたらそういう方向なのかなって。そうじゃなきゃたぶん嘘が出ちゃうし、素直にそういうのを書きたいっていうのがありました」

――音楽の力を自分が一番感じてるから人にそれを届けることができるんだと思います。

「それが願いですね。伝わったらいいなと思います」

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