前作に続く共作者の一人、ポール・エプワースとの話し合いについて
――今作をポール・エプワースと作る際、鍵を握るのはギターだと思ったのはどんなきっかけだったのですか?
マーク「無理矢理今度はギターだ!って思ったわけではなく、気づいたら、ただそうなっていたんだよね。自然にね。それで、ポールが自分でもこれまでに使ったことのないようなすごくたくさんのレコーディングのテクニックを今回使ってくれた。しかも、彼自身が生きたオーディオ・ファイルみたいな人で、良い音に対する優れた耳を持っているし、どうすればその音を良い音として響かせることができるのかってことについて、ずば抜けたセンスの持ち主なんだよね。しかも、僕らとは違うクリエイティヴな方法でそれをやってのける。だから、技術的な面において彼がこの作品で活かしてくれたアイディアが素晴らしかったんだ。それが、この作品にすごく深みを与えてくれたと思うし、おかげで新たな面がこの作品に加わったと思うんだよね。曲によっては、すごく巨大な部屋に入ったような感じになる曲があると思うんだ。平面的なものに聴こえるのではなくて、まるで、巨大な世界にいるような感じがすると思うんだ。それがポールがこの作品に貢献してくれたすごく大きな部分なんだよね」
シングル曲群とサウンドの進化について
――“Coming Of Age”はどんなふうにできた楽曲なんですか?
マーク「あの曲は、実は偶然できてしまったんだ。僕らは、あの時作り終わった曲と、半分くらいまで作り終わった曲のレコーディングをスタジオでしていて、この曲はジャムをしているところからできた曲だったんだよね。このアルバムの中では最後に書いた曲で、どこからともなく生まれたんだ。だから、全体のレコーディングをしている最中にこの曲を書き上げていったって感じでね。だから、このアルバムの中では、最後に書いた曲で、それが結果的にはファースト・シングルになったんだ。うん、そんなわけで、どこからともなく生まれた曲なんだよね」
――振り返ってみて、あなた達のバンドがどのような進化を遂げたと思いますか?
マーク「一番大きいのは、僕らが本当に意味でのバンドになれたってことだと思うよ。最初にフォスター・ザ・ピープルを始めたばかりの時は、友達同士で集まって演奏していただけのものだった。だけど、2年間一緒にツアーをしたわけだから、そのツアーの2年間が僕らをバンドにしたんだよね。だって、バンドとして契約する前、つまり、すべてが始まる前、僕らは8回しかライヴをしたことがなかったから。だから僕らは実際にツアーをしながらバンドになったんだよね。というわけで、このアルバムは僕らにとって一緒に同じ部屋にいながらレコーディングした最初のアルバムなんだ。『トーチズ』はそれに比べて、断片を集めたというような作品だったからね。ライヴ演奏でその体験を共有しながら生まれてきたものではなかったんだ」
――なるほど。“ベスト・フレンド”は最もこれまでのフォスターに近いアップビートな楽曲ですが、リズムが決定的に違って、よりプリミティヴですよね。また“アー・ユー・ホワット・ユー・ウォント・トゥ・ビー?”みたいなヒップホップ的なインスピレーション、“ゴーツ・イン・ツリーズ”のジョージ・ハリソン、シド・バレット的な感じをはじめ、アート性とポップ・ソングを組み合わせることにおいて、1stと比べより完璧、つまりそれは気持ちのいいカオスだとも感じましたが、その辺りについてはいかがですか?
マーク「(笑)その表現、気に入ったよ。でも……うんと、どうかな。分からないなあ。そんな風に深く考えなかったな(笑)。というのも、そういう曲は全部自由なクリエイティヴィティの中から生まれてきたものだからね。そもそも、セカンド・アルバムを作るにあたって本当に巨大な恐怖があったんだ。セカンド・アルバムのスランプってよく言うくらいで」
――(笑)むしろそれを待ち構えられている感じですよね。
マーク「本当だよ(笑)。だから、その恐怖を自分の中から押し出すために、すごく様々な努力をしたんだよね。その恐怖がクリエイティヴの過程で絶対に邪魔することがないようにね。そして、ただ音楽がクリエイトできるようにしたんだ。フォスター・ザ・ピープルが知られるようになったきっかけとなった曲を作った時のようにね。それがとても辛かった部分で、興味深かったところでもあって、おかげで、ファーストにはない、セカンドで新たに生まれたダイナミックがあったわけだよね。そういう風に作ったから、あまり考えすぎないことが、今回むしろテーマで、ただ音楽を鳴らすようにしたんだ。それをコントロールしすぎないようにしたんだよね」
前作と比較した精神的な変化について
――あなたはツアーにもトイピアノやラップトップを持ち歩いているとインタヴューで読みましたが、デビュー後はどんな場所で曲を書くことが多いですか?
マーク「ツアー中に曲を書いてみようと頑張ったんだ。ツアー・バスにも小さいスタジオを作って、セカンド・アルバムの制作にすぐに取りかかろうとしたんだよね。だけど、ツアー・バスで書いた曲は全部本当にゴミだった。本当に大変だったんだ。笑っちゃうのが、バスに乗っていて、ピアノのコードを弾こうとしていても、バスが道路のへこみにぶつかったりすると、正しいコードを弾こうとしたところから、いきなりソロニアス・モンクみたいになっちゃうんだ(笑)。うん、だからそれほど上手くいかなかったんだよね」
――(笑)。デビューの前、あなたはあなたがいうところの「ハンター・S・トンプソン時代」(※ロサンゼルスで様々なアルバイトを掛け持ちしながら音楽をやろうと必死に試みていた時期)を経験し、ヒットを書き、ファーストで多くの人に知られました。そうした経験と、今作のテーマとの間にはどんな共通点があると思いますか?
マーク「そのどちらにおいても、共通していること、変わらないことは、僕が常に探求し続けているということだよ。心と、体と、精神が何なのかを、常に追求し、理解しようとしていることだと思うよ。それで僕はいつだって放浪者であり、世界をもっと見たいと思うし、人々がどのように生きているのかを知りたいと思ってる。そしてそれを理解したいと思ってるんだ………自分自身について理解したいと思ってるし、自分の周りの人達を理解しようとしているし、神を理解したいと思っている。そして、その間に存在するすべてのスピリチュアルな何かを理解したいと思っているんだ。うん、だから………そういうところは、僕の中でまったく変わらない部分だね」
――以前“ファイア・エスケイプ”は自伝的な楽曲だというのを読みましたが、「Save Yourself」というサビの部分が本当に美しい楽曲です。これはあなたのどの段階における「自伝」ですか?
マーク「すべての曲はある意味『自伝』と言えると思うんだ。それで、その曲は僕にとっては、年老いた男が人生を振り返っている、というような曲なんだよね。それでその曲を書いた時……時に……僕は人を助けたいと思っていて、友達が困ったら手助けしてあげたいと思っているんだけど、時に、責任を背負うというのは……時に僕は、責任を背負いすぎてしまうことがあって、それが重くなりすぎることがあるんだよね。だから、その曲はそういうところから来たもので、つまり、僕が、非常階段になってしまっているということなんだ。誰かが住んでいる建物が火事になってしまった時に、そこから逃げ出すためには非常階段が必要なわけだからね。うん、だから………それを励ましているというか……でも、すごく無意識な部分もあるんだ」
(インタヴュー:羽鳥麻美)
/ フォスター・ザ・ピープル
2009年結成、ロサンゼルスを拠点とするMark Foster/マーク・フォスター(ヴォーカル/キーボード/ギター/プログラミング/パーカッション他)、Mark Pontius/マーク・ポンティアス(ドラム/パーカッション)、Cubbie Fink/カビー・フィンク(ベース/バッキング・ヴォーカル)による3人組。2010年夏にリリースしたシングル『パンプト・アップ・キックス』が全世界トータル900万枚を超えるヒット、2011年5月に発表したデビュー・アルバム『トーチズ』は全世界トータルで200万枚を超える大ヒットを記録。日本では2011年11月に本格デビュー、2012年1月の初来日公演はすべてソールド・アウト、同年夏に行われたサマーソニックにも出演。2013年の約1年をかけて制作した新作『スーパーモデル』を2014年3月に世界リリース。
『スーパーモデル』
フォスター・ザ・ピープル
SICP-4097(ソニー)/3月19日発売
1. Are You What You Want To Be? / アー・ユー・ホワット・ユー・ウォント・トゥ・ビー?
2. Ask Yourself / アスク・ユア・セルフ
3. Coming of Age / カミング・オブ・エイジ
4. Nevermind / ネヴァーマインド
5. Pseudologia Fantastica / シュードロジア・ファンタスティカ
6. The Angelic Welcome Of Mr. Jones / エンジェリック・ウェルカム・オブ・ミスター・ジョーンズ
7. Best Friend / ベスト・フレンド
8. A Beginner's Guide To Destroying The Moon / ビギナーズ・ガイド・トゥ・デストロイング・ザ・ムーン
9. Goats In Trees / ゴーツ・イン・ツリーズ
10. The Truth / トゥルース
11. Fire Escape / ファイア・エスケイプ
12. Cassius Clay's Pearly Whites / カシアス・クレイズ・パーリー・ホワイツ(ボーナス・トラック)
提供:ソニー・ミュージックレーベルズ
企画・制作:RO69編集部