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    宅録女子・ラブリーサマーちゃん、メジャーデビュー! その正体とは!?

    ラブリーサマーちゃん

    現役女子大生でもある彼女、ラブリーサマーちゃんは2013年、18歳のときに宅録で楽曲制作を始めた。当初はバンドメンバーとの出会いを目的に宅録/DTMの方法論を覚え、SoundCloud上に完成した楽曲を公開した。それがほどなくして耳の早いリスナーたちに見つかり、インターネットの世界を中心に宅録アーティストとして注目を集めることになる。メジャーデビューアルバム『LSC』はこれまでのラブリーサマーちゃんを総括するベスト盤的な役割も担っている。じっくり語り合った。

    インタビュー=三宅正一

    今までのラブリーサマーちゃんは青春だったなあと思うし、これからも青春できるようにがんばりたい

    ――「ラブリーサマーちゃんがメジャーデビュー」ってご自身ではどういう響きですか?

    「私のような人がメジャーデビューして大丈夫なのかなっていう……スピードスターの人がおかしくなったんじゃないかって思ったこともありますね。でも、うれしいですよ。メジャーデビューを経験できない人もいっぱいいますからね。自分の音楽がちょっと認めれたみたいでうれしいです」

    ――でも、スピードスターだから違和感がないというか。

    「スピードスターには大好きな人たちがいっぱい所属してるので。くるりさん、GRAPEVINEさん、ハナレグミさん、矢野顕子さん……いいレーベルですよね! スタッフの人たちも音楽に対して誠実で、それもいいなって」

    ――今、2013年に宅録を始めてからのインディーズ時代を振り返ってみてどうですか?

    「う〜ん……すごい……私の青春時代だったなあって思いますね」

    ――今は青春時代じゃないんですか?

    「えっ、青春って10代で終わるんじゃないですか?(笑)。わかんないですけど」

    ――いや、現役の大学生ならまだ青春を終わらせなくてもいいでしょう。

    「でも、メジャーデビューしたら音楽がお仕事になるわけじゃないですか。お仕事をしながら青春してる方もたくさんいらっしゃるとは思うんですけど。なので、今までのラブリーサマーちゃんは青春だったなあと思うし、これからも青春できるようにがんばりたいです。でも、遅刻とかすごいしちゃうんですよねえ。締め切りも守らないですし。なので、メジャーデビューを機にちょっとしっかりしたいなと思ってます」

    ――大学生活は楽しいですか?

    「楽しいですね! でも、今年大学を変えたんですよ。ちょっと私には合わないなと思って、2年間通っていた大学を退学して、新しい大学に入学したんです。なので、ホントは大学3年生だったはずなんですけど、今は大学1年生なんです(笑)」

    ――大学ではラブリーサマーちゃんであることを周りの同級生は知ってるんですか?

    「じつは……新入生歓迎会みたいな場に行ったんですけど、そこで軽音学部のコピバンみたいな人たちが出てきて。そしたらいきなり《辻利の抹茶 いつでもどこでも飲みたい抹茶》(“私の好きなもの”)って歌いだして」

    ――「うわっ、自分の曲だ」っていう(笑)。

    「そうなんですよー! ビックリして。ラブリーサマーちゃんのコピバンがいたんですよ(笑)。でも、正体を明かしていろいろめんどくさいことがあったらヤだなと思って。そういう活動をしてることは言わずにいようと決めてたんですよ。でも、私のコピバンしてくれてる人たちがいるのはうれしかったし、お礼を言おうと思って、その後に軽音部のコンパに行ったんですよ。コソコソ『私、じつはラブリーサマーちゃんなんですけど』って言ったら『えー!』ってなって、そこで一気に広まっちゃって」

    ――今、大学で学んでいることは音楽制作にフィードバックできるところもありそうですか?

    「あると思います! 今の大学に入ってから受ける刺激が増えたので。去年まで全然人としゃべらなかったんですけど、今の大学では人としゃべるようになったし。授業もおもしろいので」

    中3くらいのときにラジオでたまたま聴いた相対性理論に『えっ、すごい!』と思った

    ――このアルバムの多彩なサウンドからも思うんですけど、ラブリーサマーちゃんはいろんな音楽が好きなんだろうなって。

    「やったー! ありがとうございます」

    ――嫌いな音楽より好きな音楽のほうが多い人なんだろうなって。

    「ああ、そうかもしれない。好きな音楽のほうが多いと思いますね」

    ――小さいころからピアノを弾いていたんですよね?

    「ピアノは小さいころに習ってました。ギターは中3の夏に家にあったアコースティックギターを見つけて弾くようになって」

    ――ピアノは習わされていたという感じ?

    「そうですね。うちの親がけっこう教育熱心で、いろいろ習い事をやらせてくれたんですよ。べつに私が『やりたい』って言っていないことまで」

    ――たとえば?

    「剣道とか(笑)」

    ――おおっ。身になりました?

    「忍耐力しかつきませんでした。いや、ついてないかもしれないです」

    ――どっち(笑)。

    「あとは新体操と、新体操とは別に跳び箱とかやる体操教室、ピアノ、水泳、体験程度ですけどお習字、それとテニスもやってました」

    ――あの、お祖父様の話をしていいですか?

    「もちろんです」

    ――お祖父様はいずみたくさん(数々の昭和の名曲を手がけた作曲家)なんですよね。

    「はい。すごいですよね。曲が教科書に載ってますからね」

    ――どこか他人事のような感じなんですか?

    「そうですね。私が生まれたときには亡くなっていたし。でも、曲は聴いてました。いずみたくさんの妹さんが、いずみたくさんの音楽を使ったミュージカル劇団を主宰しているんですけど。親戚とはけっこう仲がいいので、そのミュージカルを何度か観に行ったことがあって、『おじいちゃんの曲、キャッチーだな』と思って聴いてました」

    ――直接コミュニケーションとってみたかったでしょう?

    「とりたかったですね。そんなことがあればこういう場で話すネタも増えるんですけどね(笑)。でも、案外ウザかったかもしれないですよ? 『おまえの作る曲はああだこうだ』って言われたくないですもん」

    ――ラブリーサマーちゃんのリスナーとしての原体験はどういう音楽だったんですか? 最初に能動的に自分から聴いた音楽は。

    「最初に音楽が好きだなあって思ったのは、中学1年生のときに聴いたBENNIE Kさんといきものがかりさんですかね。でも、それは人並みにちょっと好きって感じで。中3くらいのときにラジオでたまたま聴いた相対性理論の曲に『えっ、すごい!』と思って。同時期にthe brilliant greenさんも聴くようになって」

    ――あとはやっぱりいろんな時代の海外のインディシーンからの影響も強く感じます。

    「そうですよね。高1くらいからネット環境を手に入れて自分でいろんな音楽を掘っていくことが可能になったんですね。そこから自分でいろんなジャンルの音楽を好きになっていったんですけど。それで、USインディとかシューゲイザーも大好きになっていって。今でも好きですけど、ワイルド・ナッシングとか。ウルリッヒ・シュナウスやゴールド・パンダとかも大好きでした。高1くらいのときは日本のロックがすごく好きだったんですけど、高2くらいから海外のインディロックやシューゲイザー、高3から前に通っていた大学1年くらいになってからパワーポップとかギターロックが好きになったんです」

    ――高校時代はバンドを組んでいたんですよね?

    「やってました。軽音部の女子たちとやっていたバンドはすぐになくなっちゃったんですけど、学校外で相対性理論のコピバンをやっていて」

    ――よく比較されると思うけど、やっぱり相対性理論は大きなキーワードなんですね。

    「最近は自分の声色が変わってきたなと思ってるんです。SoundCloudを遡って前に作った音源を聴くと、完全にやくしまるえつこさんのマネが抜けてないんですよね。相対性理論のコピバンをやっていたときにどんだけ似せられるかめちゃくちゃ研究してたので」

    ――声色もピッチも完全に寄せて。

    「そうです。ちょっとここでピッチを上げるとか、ここで息を吸うとかすごい似せられます。それを1年くらいずっとやり続けてたからなかなか抜けないんですよね。で、そのコピバンを解散した直後にラブリーサマーちゃんとしての活動が始まったので。そりゃあ最初は似ますよね」

    ――でも、それを包み隠さず言及するところがいいなと思う。今年4月にリリースしたシングル『LOVE♡でしょ?(Pro. by 無敵DEAD SNAKE)』のジャケは完全に『シフォン主義』のオマージュでしたよね。

    「そうですね(笑)」

    ――一番影響を受けた存在を隠す人も多いんだけど、こうやって直接的に影響を表明する軽やかさもラブリーサマーちゃんの魅力だと思います。

    「ありがとうございます」

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