リアクション ザ ブッタ 王道メロディを貫いて10年――この先にある「熱き理想」とは(2)

「落ちてこうぜ!」「いぇーい!」みたいになってるから、ちょっと意味がわからないことになってるんですけど(佐々木)

――去年リリースした『Wonder Rule』でミニアルバム二部作が完結したわけですけど、ブッタが表現したいことは到底1枚に収めることができないという感じ?

佐々木 ああ、前作の『Fantastic Chaos』は、音とか、歌詞とか、アレンジとか全てにおいて、ロックに振り切った作品だったんですよ。それこそ、その前のCOUNTDOWN JAPAN 14/15に出させてもらったときはもっとポップスだったので、自分たちなりのロックに挑戦をしはじめたのが『Fantastic Chaos』っていうミニアルバムだったんですね。でも、この6曲では自分たちをちゃんと理解できないだろうっていうことで、『Fantastic Chaos』では、「自分たちはここにいくんだぜ」っていう姿勢を見せたかった。だから多面的に見せるというよりも、より深い部分を見せるために、連続で作品を作ることが大事だったんです。

――作品では“無論ディスコード”(『Fantastic Chaos』)みたいに生きる意味に「?」を投げるようなネガティブな曲もあれば、“ハチミツと君”(『Wonder Rule』)みたいな「君となら今日を生きていける」っていうような優しい曲もある。描く心のコントラストがくっきりと表れてますよね。

佐々木 昔はネガポジを1曲のなかで詰め込まないといけないんじゃないかな、みたいなことを思ったんですけど、そんなことはないなって気づいたんです。暗いことを歌っていても、その代わりにほかの曲に光があればいいのかなって。それで、“無論ディスコード”っていうマイナス思考の塊みたいな曲を初めて書いて、そこからすぐに“fall fall fall”(『Wonder Rule』)っていう曲を書いたんですけど、これがターニングポイントでしたね。

――“fall fall fall”は本当に良い曲だと思う。

佐々木 自分のなかで「もうダメだなあ」と思ったときに、「大丈夫だよ」って言ってくれる人も大事なんですけど、「いや、俺も同じなんだよ」って言ってくれる人の存在も大事だなと思ったんですよね。無理くり連れ出さなくても良いんじゃないかなって。まずは落ち続けられる、落ちていくことに身を預けられる曲があることで、そこから何か見えてくるものがあるはずだから、そういう部分をちゃんと曲として表したかったんです。

――落ちる・落ちる・落ちるって歌なんだけど、そこに救われるものがあるんですよね。

佐々木 ライブでは「落ちてこうぜ!」「いぇーい!」みたいになってるから、ちょっと意味がわからないことになってるんですけど(笑)。でも、人間の感情って複雑じゃないですか。僕もなんか面倒くさい人間だなって思いますけど、でも、僕が表現したいのはこういう部分なんじゃないですかね。

瓶のふたが開かない曲をさいたまスーパーアリーナでやる。俺はそれを自信を持って歌えると思う(佐々木)

――うん。複雑な人間の感情から逃げないのがブッタの音楽なんだと思います。これからもそういうことを歌い続けたいと思いますか?

佐々木 今はすごく狭い空間での出来事を歌にしたいっていう気持ちがあるんです。それは物理的に狭いというより、感情として小さいこと。たとえば、好きな人がいて、その子が開けられない瓶があるとしますよね。で、「開けてあげるよ」って言うんだけど、僕も開けられなかったら、「その子に情けないと思われてるんだろうな」とか、「それをほかの男に開けられたら最悪だな」とか思うじゃないですか。

――佐々木くんが開けられない瓶を、木田くんが簡単に開けちゃう、とか。

佐々木 そうそう。

木田 よくあるよね(笑)。

佐々木 だったら、どんな手段を使ってもいいから、俺が開けたい。そういう狭いことをいっぱい歌にできたらいいなと思うんです。そこに、その子への想いが詰まってるから。つい見落とすんですけどね。曲を作ろうとすると、世の中に広く使われてる言葉が出てきがち。でも日常のなかで感情は動いているわけだから、そういう出来事を見逃さないように生きていたいんです。そんな小さい出来事が歌になると、急に広がるんですよね。

――ブッタはバンドの目標として「さいたまスーパーアリーナでやりたい」って言ってて。その小さな歌をたまアリまで広げられたら、最高じゃないかっていうことですよね。

佐々木 そう、瓶のふたが開かない曲をさいたまスーパーアリーナでやる。俺はそれを自信を持って歌えると思うんです。

木田 うちのバンドがすごくバランスが良いと思うのは、(佐々木は)曲を書きたい人じゃないですか。でも、僕は曲を書きたくない人なんですよ。佐々木が持ってきた曲から見えた自分の世界を、ギターで表現できたら楽しいなと思ってて。自分の世界と、佐々木が持ってくる曲。これが張り合うことで曲を作るというか。やっぱり個人戦では負けたくないんですよね。それが佐々木のために、自分ができることだと思ってるんです。

大野 ふたり(佐々木と木田)はいろいろ考えるタイプなんですけど、僕はあんまりそういうことを考えずに身を委ねたいです(笑)。一時期、演奏のことで悩んでて、あれをやっちゃダメだ、これをやっちゃダメだとか考えすぎて、正直、楽しめてないときがあったんですよ。縛られたくないからバンドをやってるはずなのに。バンドは売れなきゃいけないけど、それ以外やっちゃいけないことはない。俺はそのぐらい能天気にいこうと思ってます。

佐々木 良いんじゃない?

木田:うん、良いよね(笑)。ここ最近、バンドの目標として考えてるのは、日本一たくさん聴かれるスリーピースバンドになるっていうこと。そこに行くためだったら、何でもできる、何でもしたいっていう想いが強いんです。そこで主軸となるのは、やっぱり曲なので。ちゃんと世の中に受け入れられる音楽を作りたい。声が変わってるとか、歌詞が凄いヘンテコでとかじゃないけれど、絶対的に求められる安定的な良い曲を作り続けていきたいんです。それがバンドのいちばんの命題になってますね。

提供:AVI

企画・制作:RO69編集部

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