ストーンズの進化がリアルに体験できる
1971年3月ラウンドハウス&リーズの未発表ライヴ音源
高見「これ、すごく良かったですね。『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』よりもちょっと時間が経ってるんで、もうかなり違っていて」
大鷹「バンドとしてなじみ方が、すごいですよね」
高見「そうなんです。ミック・テイラーありきのライヴのひとつの形ができ上がってる感じで。たとえば“Love In Vain”が『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』と違ってて、かなりミック・テイラーのテイストになってるのがすごく興味深いし。このバンドの一員になって、弾かせてもらえてるんだなっていうのがよくわかって」
大鷹「北米と、それからそのあとのヨーロッパを回って、ものすごいライヴ力が深まっていってるんだと思うんですよね。特に『ギミー・シェルター』(69年の全米ツアーの最後の10日間を記録した映画)にあったような、それこそ最後のオルタモントの悲劇的な事件も含めていろんな局面を見て、それから彼ら自身も新しいフォーマットのライヴバンドとしてやってきた時に、また違った風景が見えたってことがあったと思いますよね。それと『スティッキー・フィンガーズ』の実質的なスタートになったマッスル・ショールズ・スタジオでの3日間のレコーディングも。当時のミックやキースが求めていたディープサウス、まさにそのものがいろんな形で――このフレーズだとかいう特定じゃなく、もっといろんなところに水が浸み込むみたいな形で入り込んでいって、それをライヴで重ねていってっていうのが背景になり、この71年3月のラウンドハウスにしても、リーズにしても、すごい音になってるんだなっていうのが僕の認識ですよね。特に、“Wild Horses (Acoustic Version)”とか“Dead Flowers (Alternate Version)”とか、あのへんも僕、すごい良かったんですけれども」
高見「そうですね! “Dead Flowers”の結構凶暴なギターなんかは(笑)、最高に良かったですね」
大鷹「あのへんのストーンズ流のカントリーの解釈、やっぱりブルースベースのカントリーを飲み込むっていうか――それはグラム・パーソンズというフィルターがあったにしても、そういうのがいろんな形でバンドのなかで、複合的な派生をしてるんだなっていうのがよくわかりますよね。だから、オルタネイトとライヴとかいろんなものを聴き合わせていくと、ますますそのへんがふくらんでいって、どんどん妄想が広がるというか」
高見「ただやっぱり、でき上がったものはかなり洗練されているというか、要するにストーンズなりの洗練なんですけど、それもすごくよくわかります。ちなみに、ラウンドハウスのライヴ、“Live With Me”が、死ぬほど良かったんですけど」
大鷹「“Live With Me”はいいですよねえ。ストーンズ流ファンクというかね。その原型みたいな」
高見「スーパー・デラックス・エディションのボーナス・トラックとして収録されているリーズ公演は、基本的にラウンドハウスと同じツアーだし、流れも同じなんですが、ほぼ全曲収録されているんですよね。だいたいこの13曲と、あともう1曲、14曲くらいが入ってるツアーセットだったと思うんですけれども」
大鷹「リーズは“(I Can’t Get No) Satisfaction”が聴きものですよね。あの有名な頭のリフがないヴァージョンで。キースがあのリフがうんざりだっていうんで、もう弾きたくないみたいな(笑)。でもすっごく新鮮だし」
高見「そう。オーティス・レディングのカヴァーヴァージョンに似てる感じなんですよね(笑)。“Satisfaction”を逆輸入しましたみたいな。そういうソウル系の人たちがやる“Satisfaction”のひとつのコピーパターンを」
大鷹「本家がやってるという。このアレンジのヴァージョンが正式に出たっていうのは大きいですよね。ブートはあっても、この頭の2曲は入ってないパターンなんで。あと全般的にキースがとっても一所懸命頑張ってる(笑)。ヴォーカルのハーモニーがすごいんですよ。魅力的だし。この時期しかない感じですよね。こんなに一所懸命やってるのは」
高見「そうですよね。もう次のツアー行くと結構薬の影響が出てきてるから(笑)。だから、たぶんいちばん全員が元気だった」
大鷹「あの頃、ミック・テイラー、21~22才ですもんね。でもバンドとして不安もあったと思いますね。イギリスを出て行こうっていうのは、もちろん不安じゃないわけはないし。ただそれを絶対的に後押ししたのは、やっぱりライヴの自分たちでの確信だったろうし、自信みたいなものがそれをすべて進めさせたんだなっていうのが、今回のいろんなものを聴くとよくわかるんじゃないですかね。生々しさやリアリティみたいなものが、さらに身近になったというか」
ジップ・コード・ツアーで、このアウトテイク・ヴァージョンは聴けるのか?
大鷹「でもこういう構成というか、最終的にはミックだと思うんですけれども、すごくよくできてるなと思いますよね。やっぱりこの時期のストーンズを捉える時にいちばん肝になるのは、僕はライヴっていうことだと思うし、それが今回の作品は、無駄なアウトテイクとかやたら山盛りにするんじゃなくて、肝になるアウトテイクはアウトテイクで出して、やっぱり中心がライヴ。いろんな重要なライヴを収めてるんで、その構成力がすごいなっていう感じがしてますけどね。特に今回は。最初に僕、ラインナップだけ見た時はアウトテイクものがずいぶん少ないなって、ちょっとがっかりしたんだけれども。聴いたらやっぱり説得力がありましたね。ああ、こういうことか!っていう。今回のジップ・コード・ツアーの本編でもやるんですかね? 肩慣らしギグ(5月20日、ロサンゼルスのフォンダ・シアターでのサプライズ公演)では『スティッキー・フィンガーズ』全曲演奏したそうだけど。ただ、ミック・テイラーは呼ばれてないっていうし(笑)」
高見「ミック・テイラーもうお払い箱になっちゃったのかな、かわいそうに(笑)。でも、きっとツアーでも出してくるんじゃないですかね。ツアーが終わったらレコーディングがあるかもとか言ってますけれども。ツアーがいつ終わるのかもわかんないですからね。一度始まると結構続くから」
大鷹「そうですよね。ポール(・マッカートニー)と競争じゃないですか? どっちが先にやめるか、みたいな(笑)」
ディスク情報
『スティッキー・フィンガーズ <スーパー・デラックス・エディション>』
STICKY FINGERS <SUPER DELUXE EDITION>
2015年6月10日(水)発売
UICY-77211 | 3CD+DVD+EP | \19,980(税込)
[輸入国内仕様/初回生産限定盤]
- ◆1CD: オリジナル・アルバム 2009年リマスター音源
- ◆ボーナス・ディスク1:10曲入り*全曲未発表
- ◆ボーナス・ディスク2:『ゲット・ヤ―・リーズ・ラングス・アウト』*“Let It Rock”を除き未発表
- ◆DVD:ライヴ・アット・ザ・マーキー*初商品化
- ◆7インチ・シングル盤:『Brown Sugar / Wild Horses』
- ◆実物ジッパー付120ページ・ハードバック・ブック
- ◆ポスト・カード・セット(5枚)
- ◆ポスター
- ◆Band Member cut out(切り抜き)のミニ・レプリカ
- ◆プリント
『スティッキー・フィンガーズ <デラックス・エディション>』
STICKY FINGERS <DELUXE EDITION>
2015年6月10日(水)発売
UICY-15382/3 | 2CD | \3,950(税込)
- ◆1CD: オリジナル・アルバム 2009年リマスター
- ◆ボーナス・ディスク:10曲入り*全曲未発表
- ◆デジパック/24ページ・ブックレット
- *日本盤のみSHM-CD仕様
DISC1 - Original Album
- ブラウン・シュガー / Brown Sugar
- スウェイ / Sway
- ワイルド・ホース / Wild Horses
- キャント・ユー・ヒア・ミー・ノッキング / Can't You Hear Me Knocking
- ユー・ガッタ・ムーヴ / You Gotta Move
- ビッチ / Bitch
- アイ・ガット・ザ・ブルース / I Got The Blues
- シスター・モーフィン / Sister Morphine
- デッド・フラワーズ / Dead Flowers
- ムーンライト・マイル / Moonlight Mile
DISC2 - Bonus Tracks
- ブラウン・シュガー(ウィズ・エリック・クラプトン) / Brown Sugar (Alternate Version with Eric Clapton)
- ワイルド・ホース (アコースティック) / Wild Horses (Acoustic Version)
- キャント・ユー・ヒア・ミー・ノッキング(オルタネイト・ヴァージョン) / Can't You Hear Me Knocking (Alternate Version)
- ビッチ(エクステンデッド・ヴァージョン) / Bitch (Extended Version)
- デッド・フラワーズ(オルタネイト・ヴァージョン) / Dead Flowers (Alternate Version)
- リヴ・ウィズ・ミー(ライヴ・アット・ザ・ラウンドハウス 1971) / Live With Me (Live At The Roundhouse, 1971)
- ストレイ・キャット・ブルース(ライヴ・アット・ザ・ラウンドハウス 1971) / Stray Cat Blues (Live At The Roundhouse, 1971)
- むなしき愛(ライヴ・アット・ザ・ラウンドハウス 1971) / Love In Vain (Live At The Roundhouse, 1971)
- ミッドナイト・ランブラー(ライヴ・アット・ザ・ラウンドハウス 1971) / Midnight Rambler (Live At The Roundhouse, 1971)
- ホンキー・トンク・ウィメン(ライヴ・アット・ザ・ラウンドハウス 1971) / Honky Tonk Women (Live The Roundhouse, 1971)
DISC3 - 『ゲット・ヤ―・リーズ・ラングス・アウト』 / Get Yer Leeds Lungs Out
(スーパー・デラックス・エディションのみ収録)
- ジャンピン・ジャック・フラッシュ / Jumpin Jack Flash (Live At Leeds University, 1971)
- リヴ・ウィズ・ミー / Live With Me (Live At Leeds University, 1971)
- デッド・フラワーズ / Dead Flowers (Live At Leeds University, 1971)
- ストレイ・キャット・ブルース / Stray Cat Blues (Live At Leeds University, 1971)
- むなしき愛 / Love In Vain (Live At Leeds University, 1971)
- ミッドナイト・ランブラー / Midnight Rambler (Live At Leeds University, 1971)
- ビッチ / Bitch (Live At Leeds University, 1971)
- ホンキー・トンク・ウィメン / Honky Tonk Women (Live At Leeds University, 1971)
- サティスファクション / (I Can't Get No) Satisfaction (Live At Leeds University, 1971)
- リトル・クイニー / Little Queenie (Live At Leeds University, 1971)
- ブラウン・シュガー / Brown Sugar (Live At Leeds University, 1971)
- ストリート・ファイティング・マン / Street Fighting Man (Live At Leeds University, 1971)
- レット・イット・ロック / Let It Rock (Live At Leeds University, 1971)
DVD - 『ライヴ・アット・ザ・マーキー』 / Live At the Marquee, 1971
(スーパー・デラックス・エディションのみ収録)
- ミッドナイト・ランブラー / Midnight Rambler
- ビッチ / Bitch
7インチ・シングル(スーパー・デラックス・エディションのみ収録)
- A. ブラウン・シュガー / Brown Sugar
- B. ワイルド・ホース / Wild Horses
アーティスト情報
1962年、ロンドンにて結成。現在のメンバーはミック・ジャガー(vo)、キース・リチャーズ(g)、ロニー・ウッド(g)、チャーリー・ワッツ(ds)の4名。63年にデッカ・レコードからシングル“Come On”でデビューを果たし、翌年ファースト・アルバム『ザ・ローリング・ストーンズ』(US盤『イングランズ・ニューエスト・ヒット・メイカーズ』)をリリース。以後、2005年の最新作『ア・ビガー・バン』まで22枚(アメリカでは24枚)のオリジナル・アルバムをはじめ多数の作品を発表している。50年以上におよぶ活動を通して行われたライヴは2,000公演超を数え、100万人を超える動員を記録した14年のワールド・ツアー「14 オン・ファイアー・ツアー」に続き、15年5月24日からは北米ツアー「The Rolling Stones ZIP CODE tour」を敢行中。6月10日にデラックス盤としてリリースされる71年作『スティッキー・フィンガーズ』はバンドが1970年に設立したローリング・ストーンズ・レーベルからの第1弾アルバムであり、当時2代目ギタリストとして加入したミック・テイラーが全編に参加した初のスタジオ録音アルバムとなる。
提供:ユニバーサル ミュージック
企画・制作:RO69編集部