呼吸をするように普通の感覚でバンドをやっている(山内)
――山内さんは、バンドを続けている理由の根本にあるものって、何だと感じていますか?
山内 自分は高校の時に始めてみたら、音楽が今までやってきたことの中で一番上手くできてしまったというのが大きいのかもしれないです(笑)。でも、音楽はほかの形でもできるわけですけど、僕の場合は「音楽をするにはバンドでしかできないな」というのを思うんですよ。だから「肌に合うし、楽しいからバンドをやってる」っていうすごくシンプルな理由なんだと思います。「バンドを続けるということ」っていうのは、言い換えてみれば、「生きていくということ」っていうくらい、すごく自然なことじゃないのかなと。自分が生きているってことに対して疑問を抱く人がなかなかいないのと同じように、呼吸をするかのような普通の感覚でバンドをやっています。
ヒジカタ 俺は「呼吸をするかのように」とまではなかなか言えないですし、やりながらいろいろ考えちゃうけど。でも、やめるという選択肢はない。
――新しいミニアルバムは、いろいろ考えている姿が表れている印象がします。例えば“クソッタレセカイ”は、生まれたからには何らかの爪跡をこの世に残したいという気持ちの曲として受け止めました。
ヒジカタ 僕はステージの上では自信満々でいられますけど、ステージから降りると自信がなくなるんです(笑)。そうやっていろいろ考えながらも、一晩寝たら次の日になるし、そういう日を繰り返してたらいつか一生が終わるんですよね。でも、こういう仕事をやってるからには、ちょっとでも何かをしたいと思っています。僕が書いた曲を聴いた人が、ちょっとでも「明日の仕事を頑張ろう」って思ってくれたり、「もうちょっとだけ仕事を続けてみよう」と思ってくれたり。そういう人が少しでもいてくれたら、後悔なく生きていくことができるなと感じています。
――そういう作品につけた『WONDERFUL WORLD』というタイトルには、どういう意味をこめました?
ヒジカタ 最初は『クソッタレセカイ』っていうタイトルでもいいのかなと思ったんですよ。この世がワンダフルワールドだとは思ってないし、そういう世界であるのは誰かのせいではなくて、自分自身の責任でもあるなと思っていますので。でも、そういう世界をワンダフルワールドにしていけたらなと思って、このタイトルにしました。僕はメロディに関しては、00年代のJ-POPに影響を受けたので、そういうところも出ていると思います。ソウル・フラワー・ユニオンの奥野(真哉)さんにオルガンを弾いて頂いた“ジュリエット”は、特にそういうところが表れていますね。でも、“フィールグッド”は、オルタナティブロックの感じも出ていますし、いろんな面を表現できました。
バンドを続けてほしい。続けましょう(ヒジカタ)
――Shout it Outは、映画『ちょっとまて野球部!』の主題歌として、“アフタースクール”を書き下ろしたんですよね。
山内 はい。半年ぶりくらいに作った曲なんです。今、さらに新しい曲を作るように、めっちゃケツを叩かれています(笑)。
ヒジカタ (笑)。サポートのメンバーがいる状況で曲を作るのが大変という面もあるんやろな。俺らも大変やった時期があったから。宅録環境を整えるといいかもよ。
山内 僕、まったく機械がいじれないんです。
ヒジカタ 今、弾き語りで作るやん? 俺もずっとそうやったけど、メンバーが欠けてる状況を経て、打ち込みで曲を作れるようになった。打ち込みで作れると、いろいろスムーズになるかも。メンバーとかに意思伝達もしやすくなるし、曲を作り貯められるから。
山内 僕、携帯のボイスメモで録って送ってたこともあったんですけど、ひとつ気づいたのが「恥ずかしい」ということで(笑)。顔見てないのに歌を聴かれるのが恥ずかしくて、ボイスメモはやめました。
ヒジカタ なるほど(笑)。まあ、スタジオで反射神経で作る良さもあるから、俺らはいろいろなやり方を使い分けているけど。でも、自分で打ち込みで作るようになると、レコーディングでエンジニアさんがしている作業のこともわかるようになるから、コミュニケーションをよりとれるようになるよ。
山内 それは、すごくいいですね。
ヒジカタ もしかしたら、そういうやり方がめっちゃ合ってるかもしれんから、試しにやってみるといいと思うよ。打ち込みで作り始めるとピコピコした方向に行く人もおるから、その点は要注意やけど(笑)。
山内 はい(笑)。
ヒジカタ まあ、いろんなことに関しての答えは急がんでもええと思うけど。今までもそうであったように、これからも自分たちのやりたいことを信じて、歌の力を信じてるバンド仲間であってほしいなと思ってます。続けてほしい。続けましょう。
山内 ありがとうございます。新しい編成になったドラマチックアラスカと、今年の4月に広島で一緒にやらせて頂いたんですけど、新しい編成だと言われないとわからないくらい自然な4人だったんですよね。僕の理想の雰囲気でバンドをやってはるなと思いました。「ゆくゆくはこうなりたい」っていうお手本を示してもらった感じもあって、すごく勇気づけられたので、これからも先輩を目指します。
ヒジカタ ありがとう。追いかけられるように、背中を見せ続けられるように、俺らも走り続けます。