(“Blue Jay”は)恩人に捧げている曲です。その人のこと“Blue Jay”って呼んでいたんですよ。
――“Star light, Star bright”の歌詞に関して個人的に興味深かったのは、イメージされる星空が東京とかのものではなかったという点です。英語の歌詞が喚起したものももちろんあるんでしょうけど、アメリカの中西部辺りの豊かな自然の中で見る星空が思い浮かぶんですよ。
「歌詞を書いて表れる風景って、小さい頃に見ていたものなんだと思います。見たことがないものは描けないですからね。アメリカを車で横断して、1ヶ月間キャンプをし続けた体験もあるんですけど、内陸は本当に何もないんですよ。でも、その何もなさが『アメリカだな』という感じなんです。ひたすらジャガイモ畑が続いたりしますから」
――この歌詞、そういう中で見た風景が反映されていますよね?
「はい。草原に寝っ転がってキャンプしながら眺めた綺麗な星空のことが思い浮かんじゃいますね。星に向かって願い事もしていましたけど、『叶ったらいいな』という感じではなくて、『本気でお願いします!』という感じでした(笑)」
――(笑)。どんなお願いをしていました?
「『音楽をやっていきたい』ということでしたね」
――その夢、叶ったじゃないですか。
「はい。振り返ってみると、本気で願ったことは、結構叶っています。だから、『祈る』っていうことは、ものすごい力があるのかなとも思います。『祈る』っていうのは、自分の想いを認識できる行動なんですよ。そのことによって、『叶えたい』という気持ちもさらに増すし、勇気も湧くんです。だから『願い』って奇跡を待つということじゃなくて、意外と自分自身のためになるんです」
――いろんな物事の捉え方ができるから、ナノさんの曲には多彩なイメージやメッセージが凝縮されているのかもしれないですね。例えば、今回のシングルのカップリングの“Blue Jay”(ナノ盤に収録)も、今はこの世にいない大切な人への呼びかけている姿を、まざまざと思い浮かべることができる曲です。
「“Blue Jay”って、日本にはいない『アオカケス』という鳥なんですけど、恩人に捧げている曲です。その人のこと“Blue Jay”って呼んでいたんですよ。ここまでパーソナルな曲を世に送り出したことは、あまりないです。そういう曲の作詞作曲をできたというのがすごく嬉しいですし、どこか自分自身のために書いたところもありますね」
――Blue Jayって、どんな人だったんですか?
「小さい頃の私にいろんなストーリーを教えてくれて、夢のある人でした。その人のおかげで自分の想像力が育てられた気がしていて、今の自分に繋がる恩人なんです。この“Blue Jay”、ライブで歌いながら涙腺が崩壊するかもしれません(笑)。普段はそういうことはないんですけど、やはり、これはパーソナルな曲ですから」
――どこかから見守っているのかもしれないBlue Jayのことを思い浮かべながら歌うことになるでしょうね。
「はい。ライブでやる機会があったら、会場に降りてきてほしいです」
――宗教的な意味ではなく、亡くなった人の想いが身近にいてくれる感覚って、やっぱりありますよね?
「そうですよね。魂がどうこうということじゃなくて、『その人の想い』っていうのは永遠ですし、この世を去ったとしても『死』ではないところがある気がします。自分は無駄な命はなくて、必ず何かをこの世に遺して去っていくんだと思っています。そして、遺されたものを大事にしていくのは、この世にいる者の使命なんですよね」
――ナノさんにとって、ある意味、Blue Jayは今も生きているということですね。
「はい。亡くなった気がしないんですよ。この曲によって生き返ったような気もしています」
『ナノは人間を信じています』って、字面で見ると変かもしれないですけど(笑)。人間はとてつもない力を秘めていて、何のツールを持っていなかったとしてもパワフルなんです
――カップリングからもナノさんの人生観が様々な形で感じられるのが、今回のシングルということかもしれないですね。“ Artificial Hero”(アニメ盤に収録)も、そういう部分がありますから。
「“Artificial Hero”は、今までのナノのイメージに近い曲だと思いますけど、アコースティックギターのサウンドが入っているところが新しいと思います」
――“Artificial Hero=人工的ヒーロー”というタイトルが印象的です。
「思い描く正義とかヒーローというものは人それぞれで、時には周りが見えなくなったり、求められた自分に一生懸命なろうとしたり、自分が本当にやりたいことを見失ってしまう場合もあるんです。そういうことを常に思い出さないと、後悔することになるんじゃないでしょうか。『自分が生きたいように生きるのはとても大事である』というのを再認識できる歌詞だと思います」
――《The artificial hero is there in you》が、終盤で《Be the human hero in you》になるというコントラストは、この曲を解釈する上で注目すべきポイントのひとつでしょうね。
「そこをピックアップしていただけて嬉しいです。この曲は『DArk Rebellion』というアプリゲームの主題歌なんですけど、登場するキャラクターのひとりひとりが、いろんな葛藤を抱えながら戦っていくんですよ。だからその葛藤をこの曲で表現したいと思っていました」
――このシングルにも表れていますが、ナノさんの世界はどんどん広がり続けていますね。先程もお話した通り、海外ライブの機会も増えていますし。生まれた街のNY公演も実現したじゃないですか。
「デビュー前からNYでやりたいと言っていましたからね。まだイベントでの出演ですけど、NYでのワンマンライブへの第一歩として夢が叶いました。ワンマンライブであるかのような期待感を持って来てくれるお客さんもいると思いますので、ワンマンをやるくらいの気持ちで臨みたいです」
――ナノさんの活動は、一貫して力強さに満ちていますね。表現している音楽からも、道を切り拓くことができる人間の力をすごく信じている姿が伝わってきます。
「『ナノは人間を信じています』って、字面で見ると変かもしれないですけど(笑)。でも、本当にそう思っているんですよ。人間はとてつもない力を秘めていて、何のツールを持っていなかったとしてもパワフルなんです。そういうことを忘れないで生きていきたいです」