2010年の結成から今年で10年を迎えたindigo la End。7月に配信リリースされたインストベストアルバム『藍楽無声』ではバンドの音楽的な本質を、そして8月の屋外無観客ライブ「indigo la End 10th Anniversary Visionary Open-air Live『ナツヨノマジック』」では「言葉」という彼らが大事にし続けてきたテーマを新鮮な形で届けてくれたが、そのライブのタイトルともなった楽曲“夏夜のマジック”のTikTokでのヒット、そして今年に入ってリリースされた“チューリップ”、“夜漁り”、“夜風とハヤブサ”という楽曲には、新たな「攻め時」の到来を感じずにはいられない。10年の歴史を経て今彼らはどんな現在地にいるのか、メンバー全員で語ってもらった。
インタビュー=小川智宏
今年に入ってギアが入った感じはありますね(川谷)
――無観客ライブ「ナツヨノマジック」、楽しませてもらいました。実際やってみてどうでしたか?川谷絵音(Vo・G) なんか、あんまり――。
長田カーティス(G) よく分かんなかったね。
川谷 うん、よく分かんなかった(笑)。
――ははは、正直な感想(笑)。
後鳥亮介(B) 観てるのかどうか分からないもんね。
川谷 うん、盛り上がっていかないんですよね、お客さんの反応がないのでずっと一定のテンションで。
――観ている側からすると、映像とのコラボも新鮮でしたけどね。で、そのライブで新曲“夜風とハヤブサ”も初披露しましたが、この曲にかぎらず、今年に入って発表される曲がどれも素晴らしいですね。
川谷 今年に入ってギアが入った感じはありますね。エンジニアさんを変えて、いろいろな人とやったりして、それで変わった部分もあったり。第5のメンバーを毎回選ぶみたいな感じのやり方にしたので、それが自分たちの刺激にもなって。っていうのでこうなっていったっていうのもあるかもしれないですね。
――あのAOR感というか、シティポップ感というか、ああいうムードはどこから出てきたものなんですか?
川谷 去年からちょっと80's感みたいなのは出そうとしていて。去年も『濡れゆく私小説』っていうアルバムを作る時にみんなでやったりしてたんですけど、今回はもうちょっとそっちの色出していいのかな、思い切ってやってみようって。あのカッティングのリズムとかシンセの音とか、「これ」っていうド直球のやつをやりたくなったんです。長田くんがカッティングだけに集中して、リードフレーズでなぜかメンバーじゃないシンセが鳴っているとか。
長田 自分でギターのフレーズを作ってて「本当にこれでいいのかな」って何回も考え直したりもしましたからね。あまりにも自分がやってこなかったものだったんで。これ聴いてみんなどう思うんだろうって。
川谷 だからそのぶん歌詞をちゃんとインディゴっぽくしようとか。なんかいい塩梅だなっていう。
――このまま行くと、予告されているアルバムも相当期待できるなあと。
川谷 でも全然できてないんですよね。結構時間かけて作ってるんで。「涼しくなる頃」って言ってるけど、たぶん寒くなっちゃうかも(笑)。
長田 寒い通り越して、暖かいが涼しい、みたいな。
川谷 寒さが落ち着いて涼しくなってくるっていうね(笑)。
(初期は)すごく視野が狭かったけど、今もちゃんとその時のドープな部分は残ってる。それも無駄じゃなかったなと思います(川谷)
――まあ、楽しみにしてます(笑)。10周年記念ということで、配信でインストゥルメンタルベストアルバム『藍楽無声』もリリースしましたが、あれは?川谷 まあ、普通のベストアルバムなんてもうプレイリスト作ればいいだけの話になっちゃうんで、なんかちょっと違うかなっていう。インディゴって歌ものって認識されてますけど、歌がなくても聴けるっていうところを聴いてほしかったというか。
佐藤栄太郎(Dr) 音、演奏が人間味を残してるっていうか、それがめちゃくちゃ他のバンドよりも入ってるなと再確認しました。弦の上を指が滑る音だったり、ドラムのゴーストノートだったりが、完全に止まれよっていう時もちょっと入ってたりするみたいな、そういう部分が残ってる。そういうバンドなんだなって。
後鳥 俺と栄太郎は10年間も(indigo la Endを)やってないので、別の方が弾いている曲があったりして。でもそれも全部繋がってるなっていうか。僕らは10周年って感じじゃないんですけど、なんか……10年やってきたんだなって感じを、聴いて改めて思いましたね(笑)。
長田 ははははは。
――いや、5年でも相当なものですけどね。ではその10年のことを振り返ってほしいんですが、10年前結成した時の気持ちって覚えてます?
川谷 俺は大学の先輩に誘われてバンドやってて、でもメンバーがどんどんいなくなっちゃって。「まあやるか」みたいな感じでしたね。ちゃんと自分が作った曲をやってたから、これは終わるのもったいないなっていう。
長田 初期はひどかったんですよ。ふたりともディレイかけて大きい音出してるみたいな(笑)。
川谷 あとはあんまり、J-POPが何なのかがよく分かってなかったし。すごく視野が狭かったですね。でもインディゴってそういうバランスがよくて。インストアルバム聴いて思ったけど、ちゃんとその時のドープな部分を残してあるので。だから初期の俺らのああいうこともなんかあんまり無駄じゃなかったなと思いますね。
――やってくるなかでこれは行けるだろうって手応えを感じることはありました?
川谷 いや、行きそうなことなんて一瞬もなかったですからね。RO69JACK(現RO JACK)も2回ぐらい入賞してるけど俺ら1回も優勝できなかったんで(笑)。ああ、なんかこういう感じなんだなって思いながらやってましたね。“瞳に映らない”の時になんとなく反応があったような気がしますけど、でもその時はもうゲス(の極み乙女。)が凄いことになってたから、相対的に上がり幅が低くて。比較対象があったので、なんか上がってはいるな、みたいな(笑)。なんとなくやってたら特に売れてないのに東京国際フォーラムとかソールドアウトしたりしてたんですよ。だからなんかこのままでもいいかなみたいな感じだった(笑)。
――それ、世間的には売れてるって言うんですよ。
川谷 いや、ちょろいなと思いましたね。
長田 ははははは!
――ゲスが先に跳ねたのは想定外だったんですか?
川谷 いや、想定外ではなかったですよね。こういうことをやればちゃんと評価されることが分かってたので。予想外だったのは、インディゴの“夏夜のマジック”が急に聴かれるようになったこと(笑)。それだけが予想外でした。
――はははは。
川谷 でもちゃんと聴いてもらえる……いい曲書いても聴いてもらえるタイミングがないとやっぱり埋もれていくだけなので。だからちゃんとこういうタイミングがあったのはよかった。でも俺は5年ぐらい前からずっとスタッフの人に「たぶんインディゴは長く聴かれて、どこかにブレイクポイントがあると思いますよ」って言ってたんですよ。