メンバー全員がボーカルを担当する4人組バンド、Hi Cheers!(ハイチーズ)。バンド名といい、「Show me your smile」というバンドのテーマといい、今の陰鬱な空気に風穴を開けるようなポジティビティに溢れている。1stデジタルEP『ソーダ水はたいへん気持ちのよいものでした。』は、空間すべてをカラフルに埋め尽くそうとするようなキャッチーなサウンド・プロダクション、そして、楽天性と享楽性を感じるほどの「今を楽しもう」というメッセージが爆発している。4人バラバラの趣味嗜好が入り乱れながら、不特定多数に開かれたポップであろうという強い意志を感じる。
インタビュー=小松香里
世の中にはバラードや暗い歌詞のものが多いので、自分たちは明るくて楽しいものをやったほうがいいんじゃないかと思ってます(高村)
――1stデジタルEP『ソーダ水はたいへん気持ちのよいものでした。』はとにかくキャッチーな楽しさが爆発してますよね。高村風太(Vo・Key) 世の中にはバラードや暗い歌詞のものが多いので、自分たちがやるなら明るくて楽しいものをやったほうがいいんじゃないかって思ってるんです。あえて狙っている部分と、自然とそうなっているところがある。あと、バンドメンバー4人が集まると、必然的にめっちゃうるさいんですよ。そういうありのままの自分たちの背伸びをしない感じが出ているんだと思います。昨日も朝6時入りで夜の11時まで撮影してたんですけど、11時までうるさかったです(笑)。
Chie(Vo・G) (笑)。4人ともうるさいんですよ。
高村 ずっと誰かがうるさいんです。
上野正明(Vo・G) 現場は楽しいほうがいいじゃないですか。スタッフさん含めて明るく楽しいほうがいいので。だからそうなっている気がします。
月川玲(Vo・B) 私はちょっとうるさすぎる気がしてます。たまにうるさすぎて嫌だなって(笑)。
――なるほど(笑)。1曲目のソカの陽気なリズムが響く“ABCがワカラナイ”では、《喜びは飽きるまで/楽しいことをたくさんしよう/やりたいことをして/悪あがきの僕らは未完成さ》と歌っていて、圧倒的な楽天性があります。これはどこから生まれているんでしょう?
高村 今思ってることに近くて。「楽しいことをしたいよね」って気持ちと、自分たちが楽しいことをしている姿で他の人も楽しんでもらえればいいかなって。
――意識的に躁状態を作り出そうというか。
高村 上野くんがよく「空いている席に座ろう」って言ってて。
上野 マーケティング的な話なんですけど。やってることが似ているところで勝負しようとしてる人がいっぱいいるなって思ってて。でも、自分たちだけの良さみたいなのは誰にも真似できない。そこをブラッシュアップしていくことで、取り柄になっていくんじゃないかって前々から思ってます。やりようによっては、その人の個性が蜘蛛の巣みたいに広がっていって、戦略的にいろんなパターンが作れると思う。そのうちのひとつを今やってるって感じはあります。
Chie そもそも4人の聴く音楽も、持っているボキャブラリーも全然違うんです。だから4人で曲を作ると、最初に想定していたものとは全然違うものになったり、おもしろいスパイスが入ったりする。そういう4人の化学反応で、おもしろい音楽ができていっているかなと思います。
月川 さっき風太くんが言ってた「バラードは自分たちが作らなくても」っていうのも、この4人ってわちゃわちゃしかできないんです。ボーカルを立てて、その人がスターみたいな見え方で、あとはバンドメンバー、みたいに見せるバンドも多いと思うんですけど。それとHi Cheers!は全然違うのかなって思ってます。
上野 4人それぞれが持ってる武器が全然違うから、それが足し算ではなく掛け算になるように意識してやってますね。
元々僕たちは時代の真逆にいってる(笑)。自分たちらしさは失わない方向で、たくさん勉強していきたい(高村)
――そもそもバンドはどうやって結成されたんですか?Chie それぞれ別の活動をしてて。風太くんは作家志望でDTMをやってて、上野くんはひとりでシンガーソングライター。私と玲ちゃんは2ピースバンドをやってて、それぞれ音楽の繋がりで知り合いました。上野くんは私と玲ちゃんの2ピースバンドのファンで、どのお客さんよりライブに通ってて。それで、仲間に入りたそうな目をしていたんですよ(笑)。
上野 あははは。
Chie それで、上野くんがひとりでシンガーソングライターをやるのが寂しくなって私たちに声をかけて。そこで偶然風太くんとも知り合ったので、声をかけて、1年半くらい前に結成しました。
上野 やっぱり、ひとりでシンガーシングライターをやってる時と全然違う楽しみがあって。人といるからこそ、色々と対立することは当たり前にあるんですけど、ちょっと揉め合うことも楽しさの一部になってますね。
――高村さんは?
高村 僕は歌ってたし、ボカロとかもやってましたね。
――編曲はバンド名義中心ですが、どういう風に曲ができていくことが多い?
上野 元ネタみたいなのがあって、それを膨らませていくんです。編曲は、風太くんがDTMが得意なので、家でドラムを打ち込んだりして、膨らませていって。今回は、(コロナ禍という)状況もあって自宅でそれぞれが録ったデータをやりとりして作っていって。そこからブラッシュアップをしつつ、風太くんを中心に編曲をしていった感じです。
――世界的には、内にこもった手触りの作品が増えましたが、Hi Cheers!の音の手触りとしては真逆ですよね。
高村 元々僕たちは時代の真逆にいってるんで(笑)。迎合するところはしたいって気持ちはあるんですけど、魂を売りたくはないので、自分たちらしさは失わない方向で、たくさん勉強していきたいなって気持ちでいますね。それに、ドラマーがいないので、どうしても曲を作る時はリモートになるんですよね。データを送って、それをパソコンで並べてっていう。なので、やり方自体は全く変わってないですね。スタジオに入る回数が減っただけで。