MAN WITH A MISSIONの新曲“All You Need”に刻まれたオオカミたちの自信とプライドとロマンとは?

MAN WITH A MISSIONの新曲“All You Need”に刻まれたオオカミたちの自信とプライドとロマンとは?
文=小川智宏

「ヨークカンガエヨーオ金ハ大事ダヨー」と、懐かしいCMソングを引用したジャン・ケン・ジョニー(G・Vo・Raps)のコメントの後にリリースの発表がなされ、11月29日に配信がスタートしたMAN WITH A MISSIONの新曲“All You Need”。すでに聴いている人も多いだろうが、最高である。何が最高って、久しぶりにオオカミたちのパンク魂が炸裂しているところだ。

プレイヤーがギャングとなり現金を奪い合うスマホゲーム『A.I.M.$ -All you need Is Money-』の主題歌として書き下ろされたこの曲。イントロからほとばしるハイパーなシンセサイザーのサウンドとボイスサンプリングにブレイクビーツ、そこに突入してくる歪んだギター……超攻撃型のミクスチャーサウンドが両耳に襲いかかってくる。このスキのないサウンドデザインは……と思ったら、ジャン・ケン・ジョニーによる作詞作曲のクレジットに並んで、アレンジの欄にはバンドと並んで「Masayuki Nakano (BOOM BOOM SATELLITES)」という名前が。そう、この“All You Need”は、シングル『Dead End in Tokyo』にも収録された“Hey Now”、そして当初ヨーロッパ向けに制作され、のちに日本でもリリースされた“Dog Days”など同様に、BOOM BOOM SATELLITES・中野雅之とのタッグが実現した楽曲なのだ。

“Hey Now”はMAN WITH A MISSIONにとって大きなターニングポイントとなった楽曲である。『ROCKIN'ON JAPAN』2020年8月号に掲載したインタビューでも、10年のキャリアを振り返るなかでジャン・ケンは「自分たちの10年間の活動のなかでいろいろな区切りをつけるとすると、やっぱりすごく大きなターニングポイントになったなっていう自負はありますね。絶対的に、音楽を作る者として確実に通るべき道、通りたかった道だったんだなって間違いなく言える出来事だった(以上日本語訳)」と述懐していたが、まさにその通りで、音に対して徹底的にストイックな中野によるプロデュースのもとタフで洋楽的なデジタルサウンドにがっつり向き合ったこの曲は、MWAMが最初から追求してきたミクスチャーサウンドの可能性を一気に押し広げる結果となった。これ以降、彼らの音楽はより自由に、そしてより本質的になっていった印象がある。

だからこそ、そんな中野とのコラボレーションが、今このタイミングで再び実現したのにも、きっと大きな意味がある。その意味は“All You Need”の楽曲そのもののなかに隠されているはずだ。

聴いてまず印象的だったのは、構造的にこれまでにないかたちの楽曲になっているということだ。もちろんデジタルミュージックの要素はふんだんに取り込まれているものの、ここでのMWAMは決して「その手の音」をやりたがっているわけではない、というか、刻まれたビートやシンセのレイヤーに対して生のバンドサウンドがガチンコで勝負を挑んでいるような緊張感が全編にわたってみなぎっているのだ。“Hey Now”が中野ワールドにどっぷり入り込んでいくことでMWAMにとって新鮮で刺激的なサウンドフォーム、新しい武器を獲得した曲だったとするなら、この“All You Need”はより進化したオオカミたちが自身の力で獲得してきた武器を駆使して高得点コンボを叩き出しているような楽曲、言い換えれば、この数年自分たちに確信を深めてきた果てで“Hey Now”に「これがMAN WITH A MISSIONだ」とアンサーを返している、あるいは落とし前をつけているような楽曲なのである。

そしてもうひとつ、この曲のポイントだと思うのは、言葉数自体は多いものの、メッセージとしては極めてシンプルに研ぎ澄まされたジャン・ケンによる歌詞だ。「この世はカネだ」というゲームの主題にとことん寄り添う素振りを見せながら、サビでジャン・ケンは《All I need yes all I need I’m here for the honey》(俺が欲しいのは 手に入れるのは そいつより上の甘い蜜だ)と書く。カネに執着し奪い合う連中を尻目に「お前らはカネがいちばん大事だろうけど、俺にはもっと大事なものがあるんだ」と叫んでいるのである。ジャン・ケンなりの、そしてMAN WITH A MISSIONなりの反骨心と情熱とプライドが、この歌詞には滲んでいる気がする。

先達へのロマンと憧れを起爆剤に、MAN WITH A MISSIONは貪欲に突き進んできた。その過程で重要な役割を果たした“Hey Now”での音楽的挑戦をよりタフに進化した今のバンドでアップデートし、いまだその情熱の火が燃え上がっていることを言葉でも突きつける。“All You Need”はそんな曲だ。聴くたびに興奮するし、このオオカミたちが頼もしくなる。

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