3ヶ月連続デジタルリリースの第1弾として、10月29日に配信がスタートしたMAN WITH A MISSIONの新曲“Telescope”。どこまでもストレートなロックサウンドに、熱いエモーションがたっぷり注ぎ込まれた、聴いているだけでこみ上げるものがある一曲だ。
まずは、改めてこの楽曲に込めたものを綴った、メインで作詞作曲をしたカミカゼ・ボーイ(B・Cho)のコメントを読み返してみよう。
新型コロナウイルスノ影響デ、人ト人トノ間ニ距離ヲ置ク事ヲ余儀ナクサレテシマッタ「ニューノーマル」ナ日々ヲ生キル僕ラニトッテ、本当ニ大切ナモノトハ何デアルカ・・・ヲテーマニシタ楽曲デス。
家族デアッタリ、恋人、友達ナド大切ナ人トノ距離、想イ出、ナドハコトゴトク犠牲トナッテイマス。
ソコデ失ワレタ人々ノ生活ヤ生キル日々ニトッテ、本当ニ大切ナモノ、大切ニシナケレバナラナイ物ヲ見ツメ直シ、「光ガ再ビ射ス日」マデ前ヲ向イテ歩イテ行コウ。
ソンナ希望ヤ願イヲ込メテコノ“Telescope”トイウ楽曲ヲ制作シマシタ。
モシコノ楽曲ニヨッテ皆様ノ心ニ、未来ヘノ明カリヲ灯ス事ガ出来タラトテモ嬉シイデス。是非聴イテヤッテ下サイ!
このコメントにもある通り、“Telescope”は、コロナ禍で一変してしまった世界にあって、本当に大事なものを守り抜くという決意を、望遠鏡を通して見た星空に託して歌った一曲だ。《僕らの生きる世界は/悲しく色褪せて》と現状を受け止めながら、それでも《光が再び射す日まで/歩き続けよう/探し続けよう》と確かな「希望ヤ願イ」の灯をともす、そんな歌だ。“1997”にしろ“FLY AGAIN”にしろ“distance”にしろ、カミカゼ曲には力強く前に歩を進めるような肯定的なメッセージをもったものが多いが、この“Telescope”こそまさにその面目躍如と言っていい、今伝えるべき希望のメッセージなのである。
美しいギターのフレーズからサビのメロディが聴こえ始め、それが終わるとパワフルなドラムにのせて一気にバンドサウンドが加速していく――そんな冒頭から、シンプルなコード進行と明快なメロディラインで一直線に突っ走っていくこの曲の構成を貫いているのは、ロックというアートフォーム、ロックバンドというスタイルへの絶対的な信頼だ。そしてそれこそが、今年結成10周年を迎えたMAN WITH A MISSIONを、ここまで走らせてきた原動力なのだと、これを聴くと改めて思う。
7月にシングルリリースされた“Change the World”もそう、さらにさかのぼれば“Dark Crow”や“Remember Me”もそうだが、ここのところ彼らから届けられる曲からは、どれも今まで以上に「直球」な印象を受ける。もちろん、ここで言う「直球」とは特定のジャンルに限定して表現しているというような意味ではない。シンプルに聴こえる“Telescope”もよく聴けば、メロディックパンクやミクスチャーロックなどさまざまエッセンスが組み合わされていることがわかるだろう。
天才生物学者ジミー・ヘンドリックス博士が生み出した究極の生命体が、時を経て南極の氷のなかから復活した……というヒストリーはさておき、MAN WITH A MISSIONははじめから連綿たるロックの歴史に対するリスペクトから出発しているバンドだ。Hi-STANDARDはじめAIR JAM勢はもとより、古今のロックバンドに対する憧れと夢が、彼らの楽曲のそこかしこには潜んでいた。それが彼らを、ロックバンドとしてタフに進化させ、どんどんスケールアップさせてきた。
顔はオオカミ、身体は人間という一風変わった見た目とは裏腹に、彼らがスタジアムやアリーナ、フェスなどで大きなステージに立った時に威風堂々とした佇まいを見せるのは、オオカミたる彼らこそが、ど真ん中で「ロックバンド」をやり続けてきたからだろう。始動から10年を経て、今MAN WITH A MISSIONは自分たちで切り開いてきた新たな王道を、確かな足取りで歩んでいるように思えるのだ。
“Telescope”には、そんな10年の彼らの歩み、そしてここから先も揺らぐことなく突き進んでいくという思いも重なっているようだ。《僕らが生きる証を/探し続けていく》という決意は、他ならぬロックバンドのそれだ、と思う。このコロナ禍のなかで、改めて強くなった「芯」の部分を見せつけて、大きなメッセージを届けるこの曲は、MAN WITH A MISSIONの「次の10年」への確かな第一歩だと思う。
『ROCKIN'ON JAPAN』2020年12月号にMAN WITH A MISSIONの記事掲載中