ちゃんみな、新作アルバム『ハレンチ』完成! J-POPに踏み込んだ新境地について語るインタビュー

ちゃんみな、新作アルバム『ハレンチ』完成! J-POPに踏み込んだ新境地について語るインタビュー

これをリリースする次の日には23歳になるんですけど、そのあたりから、みんなちょっと考え始めるんじゃないかなって思うんです、女性は

――その解説を踏まえて聴くと、さらに“ホワイトキック”のかわいさが増すような気がしますね(笑)。あと、“想像力”のラップというかスポークンワード、独白。これもかなりの新機軸。不思議な浮遊感がある曲に仕上がっていて。

「こういう語り調のラップをずっとやってみたかったんです。デビュー当時は、これを私がやっちゃったら寒いんだろうなって思っていたんですよね。でもこういう曲調も好きなので、今だったら面白くなるかなって。歌詞のテーマとしては、私が長年悩んでいること――よく変な夢を見ることとか――で、自分が想像力豊かだって言えば聞こえはいいけど、やっぱり妄想がすごいっていうのはずっと小さい頃からあって。私が見てる世界は人と違うって自覚していて、誰に聞いてもその理由がわかんないし、医者に聞いてもわかんなかった。でもそのせいで悩んでるし寝られないしっていうのは続いてたから、歌にしたら誰か詳しい人が『その症状はこういうことですよ』って教えてくれるんじゃないかなって思って(笑)」

――音楽性の広がりという意味では、“ディスタンス”も重要な曲だと思います。3拍子の美しいメロディが印象的な楽曲で。“ディスタンス”というワード自体も、この時代を象徴する重要なキーワードでもあるし。

「そうですね。これは3拍子をやってみたいというのもあって。ただの3拍子ではつまらないから、いろんな要素を混ぜています。私のルーツでもあるクラシックを感じさせるサウンドになったのかなと。歌詞については、これは私もまだちょっとわかんなくて。なんでこういうことを書いたんだろうっていう感じですね」

――ふっと出てきた言葉で書き上げた?

「私、基本的にそうなんですよ。歌詞書く時は放心状態なので。なんか、わかんないんです。覚えてないんですよ、なんでこれを書いたのかとか。あとから、ああ、あの時のこういうことかって、時間が経って初めてわかる曲がよくあるんです。でもなんか嫌だったんでしょうね」

――うん。それは伝わってきます。悲しさとか、苛立ちとか。《美しいメロディーに/嫌気がさすじゃない》っていうところとか。

「私って変な人だっていう自覚があるから、それを嫌がらないでほしいっていう、その思いだったりとか、そういうことなのかな。どんな私でも愛してほしいっていう」

――そして、“花火”はすごくピュアなラブソングなんですが、これも新しいなと感じたのは、年齢を重ねていくことや時が過ぎていくことに対して、ちゃんみなさんとしては初めてストレートに言葉にした曲だなというのがあって。

「はい、そうですね。若さを花火に喩えて歌っています。私ももう22歳になって、これをリリースする次の日には23歳になるんですけど、そのあたりから、みんなちょっと考え始めるんじゃないかなって思うんです、女性は。この前も新しいシミを見つけて、うわ、シミできてるとか(笑)。10代の時はまだ現実として捉えられないんですよ、自分が歳をとるということを。ただ、このくらいの年齢になってくると、ああ、私はほんとに歳をとるのかもしれないなって思うようになって。だからこれくらいのラフ感でいけるようになるんですよね。もうちょっと、私が28とか29とか、歳をとることを強く自覚するようになってきたら、こんなラフにはいけないんだろうなって思いますけど、まだ今は《私、花火》って言える。この前、友人が結婚したのもあって、結婚ってこういうことなんだろうなって思いながら作ったので、実はちょっとウエディングソングになりつつあるというか」

――確かに。すごく普遍的なラブソングです。どんなに変化していっても、ずっと傍にいたい気持ちというか。

「私はまだ、一生愛し合うってどんなことかわかんないんですけど。ただ、私も歳をとるかもしれないけど、出会った頃の少女の私はずっと変わらないっていう、そんなメッセージがある曲ですね」

J-POPを開拓しようっていう気持ちはないですね。ひとつのルーツとしてやってみたかった。好きだし

――そうしたテーマも含めて、“花火”はとてもJ-POP的なアプローチですよね。最初にも話していたように、このアルバムはやはりJ-POPを強く感じる作品です。ちゃんみなさんの中でJ-POPというのは、どういうものだという認識ですか?

「クラシックのルールを守っている唯一のポップだと思います。やっぱり決まりごとみたいなのがあるんですよね、J-POPって。そういうものをしっかり守って、それで正座してしっかり楽しみましょう、みたいな。だから堅いとも言えるけど、伝統として、なんかいいなと思えるものというか」

――ちゃんみなさんがJ-POPをやるとしたら、そのセオリー通りというよりも自分なりのJ-POPを展開したいと考えた?

「そう……かな。いや、そこをやる能力は自分にはあんまりないかもしれないです。J-POPを開拓しようっていう気持ちはないですね。ひとつのルーツとしてやってみたかった。好きだし。っていう感覚。そもそもJ-POPだけをやるっていうのは想像ができないです、まだ」

――今回のアルバムでJ-POP的に新たな歌世界を表現してみて、その中でいろいろなアプローチがあると気づいた作品でもあると思いますが。

「そうですね。J-POPって色っぽいと思うんですよ、すごく。『ハレンチ』っていう言葉ともよく合うと思いますけど」

――色っぽいと思うのは、どんなところ?

「うーん。ちょっと説明するのは難しいですけど、なんて言うんだろう。なんか、着物着ている人が脱いだみたいな。そういうルールの中にあるエロさみたいなものを感じますね。日本的なものです」

――それで、今作のラストには“Never Grow Up”のアコースティックバージョンが収録されていて。前作アルバムの表題曲として聴いた時には、とても切実で深い悲しみを感じる曲だと思いましたが、このアルバムでは、どこかポジティブな曲として響きます。まるで2年前の答え合わせみたいで、あの頃の自分を肯定的に捉え直すものに変化したというか。

「まさにそういうことだと思います。気持ちや捉え方は変わりつつあるけど、思っていることは変わっていないし、間違っていなかったっていう。で、このアルバムは、最後笑って終わりたかったんですよ。だから、最後に笑い声が入っているっていうのもあって」

――これだけ多彩なポップミュージックが集まったアルバムになって、ちゃんみなさんの歌声を様々に堪能できる作品だと思います。歌唱において、いちばん自分的にトライだったなと思うのはどの曲ですか?

「やっぱり“太陽”と“想像力”はトライでしたね。“太陽”は喉を一切使わずに、自分の持っているピュアな声、何も作らない声みたいなものを追求したくて。その透明感がある声っていうのはすっごい新鮮で、すっごいよかった(笑)。あと“想像力”については、歌入れのことを『コメント録り』って言ってたくらい。それくらい何回も噛むし大変でした。でもほんと楽しかったです」

――また濃密な一枚ができあがりましたね。

「いや満足しました。ほんとに大変だったんですけど、納得いくまでできた作品です。もうスランプの時とか、無理だって思ったし。でもそれを諦めずに頑張ってよかったなって思います」

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