ちゃんみなが最新シングル『Angel』で響かせた美しき「堕天使」の歌は、今なぜ生まれてきたのかーーその心境をリアルに語る

ちゃんみなが最新シングル『Angel』で響かせた美しき「堕天使」の歌は、今なぜ生まれてきたのかーーその心境をリアルに語る

ラテンのリズムで浮かれているように聴こえるんだけど、実際は支離滅裂で混乱してる、発狂してるみたいな

──前作の『note-book –Me.-』、『note-book -u.-』が出たのが今年2月で、その後、コロナ禍で世の中が大変なことになってしまって。ちゃんみなさんはどんな感じで過ごしてましたか?

「けっこう忙しかったですよ。『Angel』のリリースに向けて準備することも多かったですし。曲はわりとすぐ書けたんですけど、そのあとが結構大変でした。MVでもしっかり踊ったので、その練習とかもあって結構忙しくしてましたね」

──『Angel』は全4曲で、コンセプチュアルにストーリーを描き出すような作りにもなっていて、その構成も見事なんですが、表題曲の“Angel”という曲は、これまでのちゃんみなの恋愛ソングにはなかった書き方がされていると思うんですよね。これまではそれこそ、歌詞を読めばちゃんみなさんが今どんな恋愛をしていて、どんなモードだったのかっていうのがすぐにわかったんだけど、“Angel”ではちょっとわからない。曖昧で複雑で、どう受け取るかは聴き手次第なところもあって。

「言葉より大きなメッセージがあると思っていて。最初に作った時は、意味わかんなすぎてヤバイかも、これ私にしかわかんないかもって思ってたんですけど、まわりの人に聴かせたら、なんて言っていいかわかんないけど『わかる』っていう答えが多かったんですよ。だから『なんて言っていいかわかんないけどわかる』っていうのが答えなんだろうなと思って。私自身も自分の曲にそう思っていたから。『この曲はどういう歌ですか?』って訊かれたら、『なんて言っていいのかわかんないけど、こういう感じ』っていう(笑)。なので不親切な曲ではあるけど、だからこそみんなが聴いた時にいろいろな考察が生まれるだろうなと思ってました」

──実際にもうMVのコメントとかでも、いろいろな解釈や感想が挙がってますもんね。

「そうそう。ああ、そういう考え方もあるのかって、すごく面白かったです」

──トラックの雰囲気も今までにないラテンのイメージです。官能的で踊れる曲で、すごく洗練されていて、完全に新しいちゃんみなの世界。

「そうですね。自分が描きたかった感情に、いちばん近い音だと思います。ラテンのリズムで浮かれているように聴こえるんだけど、実際は支離滅裂で混乱してる、発狂してるみたいな。BPMも速いし余裕がない感じのメロディで、良い意味で荒れ狂ってるように私には聴こえます」

──それが2曲目、3曲目と進んでいくにしたがってストーリーが見えてくる。ただ順序立ててのストーリーではなく、1曲1曲にそれぞれ違った感情が描かれていて繋がっていくのが見事だなと思います。今回、ラップ要素がメインではない「歌」もので、ひとつの作品が出来上がっているのも初だと思うんですが。

「確かに初めてですね。気づいたらそんな感じでした。ラップミュージックというより、ビートの打ち方とか、トラックで感覚をヒップホップに寄せたくらいで、今回は結構滑らかに歌っている感じです」

──R&Bと言ったほうが近くて、すべてボーカルの良さが堪能できるというか。

「そう。R&Bをこれだけやったのって初ですよね」

海外の映画とかで、人をわーって殺してる時に美しいクラシックが流れたりする。ああいうイメージ

──“Angel”が、「意味わかんなすぎてヤバイかも」って思ったと言ってましたが、その分、その後の楽曲では意図が伝わるようにと書き上げていった感じなんですか?

「いえ。そんなことは全然なくて。2曲目の“Very Nice To Meet You”とその次の“Rainy Friday”は去年作った楽曲で、その2曲は先にあって、それで全部で4曲かなって思って“Angel”ができて、最後に“As Hell”を作って。それで、この『Angel』という作品には『堕天使』というテーマがあるんです。ひとつずつ人間の欲とか感情を歌っているけど、1曲目の“Angel”は言ってしまえば、欲がいちばんない曲。私はこうしたいっていう感情が一切ないんですね、あの曲って。どちらかというと諦めてシャットしている。だからもう好きにしてくださいっていうイメージなんですけど、“Very Nice To Meet You”で欲とか嫉妬が見えていて、次の“Rainy Friday”で、トーンが一気に下がって意味わかんないこといっぱい言ってるんですよね。壊れてるのか壊れてないのかもわかんないし、ちょっとどうでもよくなっちゃってる感じ。で、ラストの“As Hell”ではそんな状況に心地好ささえ覚えてしまってる。段々ひとりの女の子が堕ちていく様を描けたなと思うんですけど、段階を踏んで悪魔になっていってる感じはしますね」

──“Angel”で始まって最後が“As Hell”っていうのが興味深いし、しかもその“As Hell”は非常に美しいバラードで、ちゃんみなさんの今までの作品にはないボーカル表現で。それで、“As Hell”まで聴いて、その後また“Angel”に戻ると、すごく合点がいくんですよね。

「そうなんです」

──すごく見事な構成なんですよ、これ。こんなふうにコンセプチュアルなものになるっていうのは、どの段階で見えてきたんですか?

「“As Hell”を最後に作り始めた時くらいからですね。“Angel”を作ったあとにもう1曲作らないとって思って、自分の感情優先で作ったんですけど、《f**k me》っていう言葉を、映画の『エクソシスト』から引用しているんです。あの主人公のリーガンが最初に口にした言葉。あそこをどうしても引用したいっていうのが自分の中にあって。でも、美しくありたいっていうイメージもあったんですよ。リーガンは、まわりから見たら怖いって思われているし、地獄の果てにいると思われてたんだろうけど、でも本人はもしかしたら、ああいう(“As Hell”みたいな)美しいメロディが聴こえていたのかもしれないと思って。本人には美しい景色が見えていて、心地好さがあったかもしれない。その感じを自分と照らし合わせたっていうか。たまに海外の映画とかで、人をわーって殺してる時に美しいクラシックが流れたりするじゃないですか。ああいうイメージなんですよね。堕ちていく時に気持ちいいって思う感覚。それをボーカルでもよく出せたなと思えたし、それを段階を踏んで表現していくコンセプチュアルな作品にできそうだと思えたのは、“As Hell”ができた時ですね」

次のページ一切インプットしなかった私に残されたのは感情しかなかった。その感情だけが音を作らせた。だからすべてが自分の心の音
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