昨年の『MEMORIES2』から約1年2ヶ月ぶりとなるネクライトーキーの新作は、バンドにとって初めてのEP。4曲それぞれに違ったベクトルで自由奔放に生み出された、とても濃厚な1作となっている。リード曲の“ランバダ・ワンダラン”でのいきなり別の宇宙に連れて行かれるような不思議体験も、“優しくなれたなら”でのネクライトーキーらしさ炸裂の安心感も、“今日はカレーの日”での日常への眼差しとクラシックなロックへのリスペクトも、そして“あべこべ”での朝日(G)のこれまでとは違う自己投影も、どれもが新鮮で、かつ力強い。これまで3作のオリジナルアルバムを通して創り上げてきたネクライトーキーというバンドの形が、今さらに進化を遂げようとしていることを、今作は雄弁に物語る。ライブもどんどんよくなっている感じがするし、このバンドからはやはり目を離せない。
インタビュー=小川智宏
初見で笑える曲ってめちゃくちゃいいんじゃない?って(もっさ)
――今作『踊れ!ランバダ』、またバンドとして新しいフェーズに突入している感じがあります。そもそもEPという形自体初めてじゃないですか。こういう形式になったのには何か理由があるんですか?朝日 まあ、自分の納得のいく楽曲を作りたいってなったときに、そういうものができるタイミングって自分でもわからなくて。できるときはできるんですけど、できないときに無理やり作ると「曲をでっち上げてしまった」っていう感覚になってしまうんですよね。そういう気持ちになりたくないからこそ、まだフルアルバムができるほどの曲が揃ってないなってなって。でも、会社と話をするうえで「CD出さないのはどうなの?」みたいな(笑)、「曲を作ってくれ」という話になるので、その中で曲をひたすら作っていて、そのひとつで“ランバダ・ワンダラン”ができて。聴いてもらうとわかるんですけど1曲のカロリーがすごく大きい曲だから、「この曲ならEPで出してみよう」って話になったんですよね。これならEPでもいけるだろうって……要するに俺の曲作りが間に合わなかったって話なんですけど(笑)、この曲なら、こいつを主役にCDを出しても全然いいだろうって。
――その“ランバダ〜”は本当に自由というか、何回聴いてもまだちょっと理解しきれない感じがしたんですけど。
中村郁香(Key) あはは。スルメみたいな曲だと思ってください。
――そうですね。スルメだと思うんですけど、スルメもだいたい「こんな味かな」ってわかるじゃないですか。これは得体のしれない味がする(笑)。
朝日 この曲は、まず1コーラスくらいのデモを作ったんですよね。「こういう感じの曲をやりたい」って言って。それをメンバーに聴いてもらって、やいのやいの言い合って……1回やいのやいの言い合いすぎて船が沈みかけて(笑)。「じゃあ1回持って帰る」って、みんなに話したことを反芻しながら俺がフルコーラス作り上げて「これでいこう」っていう。すごいいろいろ経由したな。
中村 1回持って帰ってから出てきた曲が最初の曲とめちゃくちゃ変わってて、「なんか新しいの増えた」と思った(笑)。
――もっささんはこの曲、どんなふうに受け止めて取り組んでいきましたか?
もっさ(Vo・G) 最初に持ってきたときはBメロのドラムが印象的で、それで笑ってた気がする。朝日さんがどう思ったかわからないけど、なんかすごい面白かったんですよ。だいたい今まで、そうやって面白がれる曲っていいんですよ。“オシャレ大作戦”もそうだったし、“北上のススメ”がきたときもめっちゃ笑ってたし、初見で笑える曲ってめちゃくちゃいいんじゃない?っていう感じだった。
中村 うん、そんな感じだった。
もっさ だから「これをもっと詰めたいね」って。その1回目に聴いたときの気持ちがいちばん大事というか。だから、リード曲にしたいねみたいな気持ちはありました、私は!
――たぶん最初から、キャッチーなポテンシャルみたいなのがこの曲にはすごくあったんですよね。だからこそ好きに遊べる部分も大きかったっていうか。
朝日 そうですね。今の自分の中での裏テーマは「歌ってて気持ちいい」なんですよ。やっぱり歌が気持ちいい音楽って受け入れられやすいと思うので。そのメロディの気持ちよさに助けられてどうにか完成したっていう感じがあります。
ランバダでどんなダンスを踊ってんだって思ったら、男女が腰をくねくねさせてて、「全然ちげえな」って(朝日)
――それにしても、この“ランバダ〜”ってどういうことなんですか?朝日 すみません、これ仮歌詞なんです(笑)。
もっさ 最初の仮歌詞がアルファベットで「Lambada」ってなってたんですよ。
朝日 仮タイトルも“Lambada”だったんです。適当に歌った仮歌でも《ランバダ踊りあかす》みたいな。それよりハマりのいい言葉が思い浮かばなかったんですよね。全然これランバダじゃないけどって思いながらも――。
もっさ 1回スタジオで調べたよね。
――昔すごく流行った曲がありますよね。
朝日 それでどんなダンスを踊ってんだって思ったら、男女が腰をくねくねさせてて、「全然ちげえな」って思った(笑)。でも《でたらめなランバダ》って言ってるし、BLANKEY JET CITYも《ライラックってどんな花 時々耳にするけど どんな花なのか知らない》(“ライラック”)って書いてるから、歌詞ってやっぱり自由なんだなと思って突っ切らせていただきました。
――でも、それが出発点だとしても歌詞としては辻褄を合わせていかないといけないところもあるじゃないですか。その辺はどういうふうに書いていったんですか?
朝日 この曲は本当に難しくて。歌詞の辻褄っていうのを普段はもうちょっと意識するんですけど、“ランバダ・ワンダラン”はリズムと言葉の気持ちよさにだいぶ寄せた感じの歌詞になっていて。すごくかっこよく言うなら自動筆記みたいな。
藤田(B) ははははは。
朝日 悪く言うなら何も考えてない、っていう。音楽って原始の部分はやっぱりリズムだと思ってるんで。それを大事にしたいって思ったメロディとか曲は、あんまり難しいこと考えなくリズムを優先したほうが音楽として成立しやすいっていう考えはあるんです。でもなんとなくストーリーはありそうな気配はあるな、ぐらいの想像の余地は残しつつ頑張って書きました。
――自動筆記で書いたからこそだと思うんですけど、1番と2番で全然違う人っていう感じですよね。
朝日 しかも1コーラス先に作っちゃったんで。だいたい制作って、後半に行けば行くほどダウナーになってくるんですよね(笑)。
中村 あはははは。
――《僕はマジで最低だ》っていうのはそれが出てるんだ(笑)。どっちが自分に近いって感じします?
朝日 やっぱり後半……。
もっさ 《キラッと光るのは君の笑顔さ》とか――。
中村 想像つかない(笑)。
朝日 《星を待ってるんだ》ってどういうこと?って思いながら、勝手に手が動いて。考える間もなく次の行にいってたんで。
――そのキャラを最後までまっとうすればいいものを、やっぱり《僕はマジで最低だ》っていう人が出てきちゃうのが朝日だなって思うんですけどね。
中村 でも、みんなもちょっと「なんだこれ」って思ってるって今知ってホッとしました(笑)。