【インタビュー】クジラ夜の街が、疲れてしまったあなたに送る“裏終電・敵前逃亡同盟”。待望の音源化についてメンバー全員にインタビュー!

【インタビュー】クジラ夜の街が、疲れてしまったあなたに送る“裏終電・敵前逃亡同盟”。待望の音源化についてメンバー全員にインタビュー! -  Photo by Ryohey Photo by Ryohey

休符の多いこの楽曲は、少しずつ大人になっていっている自分たちが作り上げることに意味があったと思います

──駅員のアナウンスっぽい感じもあったり、細部にまでこだわって、駅という空間をバンドサウンドで表現するということに成功した楽曲だと思います。そして歌詞。命を投げ出してしまうのか、ずっとつらさを抱えたまま生きていくのかという二択ではなくて、第三の「逃げる」という選択肢を提示している楽曲ですよね。

宮崎 そうですね。悩みすぎると100か0かの二択しかないと思ってしまうから、きっと迷ってしまうんだと思うんですよ。視野が狭くなるほど、無理難題に自らはまりがちだなと思って。そういうときに、こういう力の抜けた回答を用意してあげたいという思いがありました。振り返れば自分たちの高校時代は、部活動でひどく先生に怒られたりとか、部全体で問題を起こしてしまったりとか、そういうシリアスな場面でこそ、部員全員が面白いことをして、いつもユーモアで切り抜けてきたよなっていうのがあって。僕の高校3年間ってそういう経験の宝庫だったので、ああいうユーモアややさしい気持ちで乗り切ることができるのって大事だなと。ちょっと笑い飛ばしてしまうような、悩んでいる人がいても、なんならその悩みごと笑って、やさしく包み込んであげるような曲があってもいいんじゃないかなと思い、歌詞を構築していきましたね。

──バンドが表現するものが、また一段上がった感じがしました。

宮崎 静かなものとか情報量の少ないものを表現するほうが、音楽的には圧倒的に難しいので。休符の多いこの楽曲は、少しずつ大人になっていっている自分たちが作り上げることに意味があったと思います。2年前、これを作った当時は、まだ音楽を仕事にしているという感覚ではなかったんですよ。今はミュージシャンとして、言わば仕事として向き合うようになっていたので、そもそもの向き合い方が変化しているというのもありますね。そういう意味で言うと、駅とか電車に対する愛憎みたいなものも、まったく違ったものになったのかな。大人になるにつれて「終電」というものへの理解というか、解像度がすごく上がった気がしています。

──各メンバーのプレイも、2年前と比べて表現できるものの幅が広がっている感覚がある?

 この曲に関しては、僕がこれまでやってこなかった音作りなんですよね。ドラムのフレーズを作るうえで自分が大切にしているのは、ドラムの面白さを最大限に伝えるということなんですけど、この曲に関しては引き算で、あくまで僕は主役じゃないんですよ。他の楽器を引き立たせることを意識しながら、でも僕の中ではドラムの面白さを表現しながら、また新しい形ができたと思いました。こういう自分のドラムもあるんだなって新鮮でしたね。

山本 自分の技術が上がったとか音作りの幅が広がったというのはもちろんなんですけど、自分の意識も変化していて。この2年間で隙間がある曲をどんどん好きになっていったんですよ。そういうのがレコーディングでも活かせるようになってきた。それまでは音を詰め込むのが好きだったんですけど、隙間がある曲の気持ち良さに気づいたというか。

佐伯 でも隙間を意識して作るのって難しくて。ベースは隙間を作るのも大事な楽器なので、柔らかい音でありながら印象に残るフレーズを作るというのは結構難しいんですよね。いろいろ試してできあがって、自分でもいい音になったと思います。

宮崎 作った当初は、変わり種っていうか、B面曲とかアルバム曲かなって思ってたんですよ。でもライブでやっていくと、どんどんどんどんこの曲への期待とか反応が高まっていく。この曲がこんなにも必要とされているのかっていうのがまず驚きで。ほんとに思った以上にみんな疲れてるんだな、病んでるんだなって、最初の1年くらいで気づき始めるんですけど、そのあと自分自身でも気づき始めるんですよ。というのも、単純な話、僕、2年前はそんなに終電逃してないんですよ。でもこの2年間で、そこそこ終電逃すようになったんですよね。単純に友達と飲んでてっていうのもあるけど、もっと嫌な理由も。仕事が長引いてとか、道に迷ってとか、疲れちゃってとか、なんとなく帰りたくなくて、とか。いろんな理由で終電を逃すことによって自分自身、この曲への造詣が深まっていったんですよね。一種の未来予知みたいな。だからどんどん好きになっていったっていうのがありますね。

(次のアルバムは)クジラ夜の街の大冒険といいますか、酸いも甘いも苦いも全部まとめてファンタジーっていう、完全なる集大成になる

──そして今、次なるアルバムの制作をしているということですが。8月に合宿してたんですね。

宮崎 合宿してきました。高校生のとき、軽音部で夏に合宿してたんですよね。合宿によるイマジネーションの活性化ってバカにならないものがありまして。東京でいつものスタジオで作っているものとはまったく違うものが出てくる。だから僕は絶対に合宿したいって言い続けてたんです(笑)。ライブで地方に行ったときなんかも、その土地のスタジオに入らないかとか、素っ頓狂な提案をしたりして、まあ、却下されるんですけど(笑)。そのご当地でしか出会えない音があると思っているので、合宿は絶対したかったんですよね。それで今回、群馬県高崎市のTAGO STUDIOに行って。2泊3日だったんですけど、2日目で予定していた曲のプリプロとRecはほぼすべて終わってしまったんですよね。それで3日目に「もうやることない」ってなったときに、完全に0から曲を作り始めてみようということになって。レコーディングブースで曲作りを始めたんです。そこで2時間で1曲できて、録音まですることができました。

──すごい集中力。

宮崎 それがアルバムに入る予定のとあるインスト曲です。でも3日目で睡眠不足でみんな限界を迎えていて、ちょっとトランス状態だったからこそ、通常だったら考えつかないようなフレーズとかも出て。合宿の意義は特にその3日目に感じましたね。すごかったです。そういうエネルギッシュなものが乗っているので、これまでのアルバムの中でいちばんライブ感が伝わるものになりそうです。

──ちょっとだけ聴かせてもらったんですけど、期待値がとても高まりました。

宮崎 まだ4割くらいの完成度なんで、これからまたブラッシュアップしていくんですけど、早く完成させたい気持ちと、ずっとこの制作をやっていたいという気持ちの両方ですね。制作している最中がすごく楽しいので。

 でも合宿は、ほんと朝から晩までドラム叩いてて、3日目なんてもう死ぬんじゃないかって思ってた(笑)。マジで腕が上がんないし、もう無理無理って思って。2日目の夜は10時にやっと終わった!と思いきや、そのあとみんなで肉焼いてバーベキューだったし(笑)。

宮崎 それは合宿の醍醐味なので(笑)。みんな適当に寝るだけじゃもったいないっていうところで、遊びも全力でやりましたね。

 ワイン買って。みんなで腕組んで飲んだりしてね(笑)。気づいたら朝4時でした。からの3日目だったから。

宮崎 3日目はもうやることがないと思っていたから、2日目の夜はそうだったんですけど、3日目に突然ひらめいてしまったんですよね(笑)。

佐伯 疲れ果てた状態でレコーディングまで終わらせたっていう。だけどやっぱあの場だったから出たものだし、よいものができたと思います。

山本 でももうやりたくない(笑)。睡眠はちゃんととりたい。

──アルバム曲はシューゲイズっぽい曲もあったり、また新たなファンタジーの世界を見せる曲もいくつかあったり。現段階でどんなアルバムになると感じていますか?

宮崎 ここからどんどん七変化していくと思うので、まだ自分でもどうなるのかわからないんですけど、クジラ夜の街の大冒険といいますか、酸いも甘いも苦いも全部まとめてファンタジーっていう、完全なる集大成になるんじゃないですかね。僕はこのアルバムを作り終えたら、次は完全に真新しいことをやろうと決めているんです。そういった意味でも、今までのクジラ夜の街の総決算だなと。ここから先はバンドという枠も飛び越えて、新しいものに挑戦していくっていうふうにもう完全に自分の中で決心がついているので。そういう意味で、バンドサウンドとしての最高打点を叩き出したいなと思っていますね。バンドでやってきた6、7年間の結晶みたいなものを、いろんな顔を見せてやって、これをきっかけに新天地に羽ばたいていく、その最後の場所だなと思っています。

 アルバム曲は“裏終電”に通ずる、この現代社会に向けてのものになりそうな気がしています。一晴の本音が初めて出た曲もあるし、恋愛ソングもあったりして、今までのアルバムとちょっと違うものになるんじゃないかなと。すごい可能性を感じています。音源としてもそうだし、共感性としての広がりもこれまで以上に感じていますね。

山本 一晴が言っている、「常に更新していく」っていうのが有言実行できているアルバムになると思います。今まででいちばんすごい音源集ができてしまうっていう予感があります。

佐伯 まだ全部録り終えたわけじゃないですけど、これはすごく売れるんだろうなって思います(笑)。

──全員が変化を恐れないからこそ、クジラ夜の街はどんどん進化していくんですね。

宮崎 そうですね。僕たちは出自的に、バンドを結成した高1の頃からずっと、常に面白いこと、今までにないことをやりたいという思いで音楽をやっているので。それはこれからも変わらないと思います。

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