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クジラ夜の街は、1000年先の未来と1000年前の過去から聴こえてくる音楽に耳をすませながら、同時に、2024年の今この瞬間にどこかの誰かが風呂場のシャワーを全開にしながら叫んでいる、その叫び声にも耳をそばだてている。この5曲入りEPは、そんなバンドの現在地を示す充実の1作。冒頭を飾る“Saisei”は肉体的なファンクロックに乗せて「音楽」という遥かな時を超える祈りについて歌う。そこには過剰な消費文化への抵抗も垣間見える。チャーミングなハートブレイクソング“失恋喫茶”と、ロマンティシズムにこそ人生の信念を見出すバンドの詩情が美しく花開く幻想的なバラード“美女と野獣”の間には、“ずっとおぼえていてね (Interlude)”という、願いと信頼を刻む言葉が冠されたインスト曲がある。そして最後を飾るのは、孤独も不安も露わにしたうえで、「それでも、やる」というタフな意志をアイリッシュ調のメロディに乗せて歌う“祝祭は遠く”。誰かにとっての革命になる。そういうレベルの音楽が鳴っている。(天野史彬)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年8月号より抜粋)
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