どうやっても苦しみも楽しみも両方ある、バンドっつうのに魅了されているから。それは時代も何もなくて、これからも仲間と音楽を作るのは最高なんじゃないかなと思う(後藤)
──じゃあ、本題に行きましょうか。
佐々木 まだ本題あるんですか!?
後藤 もう終わったのかと思った(笑)
──いやいや。令和にさ、ロックバンドやるのってハードじゃない。どう向き合って、どう乗り越えていくのかっていうところを聞いてみたいんだけど。
佐々木 俺は、令和は関係なく、常にこれで生きていくことができるかできないかの瀬戸際にいるんですよね。メンバーといちばん面白いことをやりたいっていう気持ちは捨ててないんですけど──ロックバンドをやっているからハードっていうよりは、人生ってそもそもハードだと常に思っているので。それに対して、自分はロックが好きだっていう気持ちとか、音楽を好きだっていう気持ちを、どうやって捨てずにいられるかの勝負だと思っています。まあ、TikTokで流行ってるのとか、いいなあ、金いっぱい入んのかなとか思うんですけど(笑)
後藤 TikTokで踊ってくれよって思うよね(笑)。うっかりバズんねえかなって。でもね、そこが目標じゃないから。
ホリエ 僕は、今の音楽も『若えもんがわかんないことやってるわ』じゃなくて、新鮮に楽しめているんですよね。そこで『俺たちはロックバンドだから何かをやらなきゃ』みたいなこともあんまり考えていない。全部聴いて、全部自分のものにして、もっと面白いものを作ってやるっていうことしか考えていないです。ずっと同じことをやっても好きでいてくれるファンはいるかもしれないですけど、自分はそれだと収まらなくて、新しいことをやりたい、今面白いことをやりたいっていう気持ちがあって。その結果として、今までも、ファンが離れたり、新たなファンが出会ってくれたりっていうのを越えてきているから。これからも悲観的にならずに──まあ、若い人にもっと届くに越したことはないですけど。自分たちの音楽が、自分たちの歳とともにクラシックになっていく、みたいなことは考えたくないですね。
──ゴッチはどうですか?
後藤 ロックバンドをどう捉えるかによると思うんだけど、コミュニティ作りではあるから。音楽なんて、ひとりでやるより、みんなでやったほうが楽しいと思うんです。俺は、どうやっても苦しみも楽しみも両方ある、バンドっつうのに魅了されているから、仲間たちとやっちゃうみたいなところがあって。それは、時代も何もなくって、これからも仲間と音楽を作るのは最高なんじゃないかなと思う。一生の友達が見つかるし、人生観や生き方をシェアする仲間になるから。ただ俺の場合、アジカンはメジャーなところにいるけど、ひとりのエンジニアとしては、ほとんどインディーの人としか仕事をしていなくて。やっぱり、音楽でご飯を食べられる可能性は落ちてきていて、みんな働きながらやってるんだよね。だから今後は、音楽はやりたいヤツらのもので、どう聴かれるかよりも、作ることにこそ意味があるっていうふうになっていくと思う。働きながらやっている人の音楽がどうして美しいかっていったら、働きながらでもやりたいからなんだよね。自分の可処分時間を持ち寄ってやるから、やりたくもない音を1分も1秒も鳴らさない。そりゃかっこいいわけだよって思うじゃないですか。ロックなんて、それでいいんじゃないかっていう気がしていて。今までもそうだしこれからも、ロックなんて、やりたいヤツだけがやれよとしか思わないですね。
──あともうひとつ。3人ともソングライターで、作った曲がバンドっていう肉体を通して形になるじゃない? それは頼もしさと同時に窮屈さもあると思うんだけど、そのへんはどうなの?
佐々木 俺、ホリエさんの、メンバーに任せたり、信頼している器のデカさはすげえと思うんです。
──メンバー上手いから。
後藤 (机上のお菓子を見ながら)味ごのみ的にできるわけよ、ストレイテナーは。いろいろ入っている。
佐々木 テナー、味ごのみ説(笑)
後藤 えびせんも入ってりゃ、小魚も入っていて、いろいろ器用にできる。
──アジカンはカントリーマアム?
後藤 俺たちはハッピーターンでしょ(笑)。うまい粉でしょ。で、だんだんハッピーターンじゃよくないって思って、サラダせんべいぐらいまで……まあでも、せんべいの場所から動けていないの、アジカンは。結局米の味(笑)
──(笑)それも貴重でしょ、いつでも米の味がするっていう。
ホリエ 大事大事。
後藤 俺たちも不器用なバンドだから。でもそれと向き合って、最近はいろんなせんべい焼いて頑張ってる(笑)。ピザくらい焼けよと思った時期もあったけど。
佐々木 その時期は、どうやって乗り越えたんですか?
後藤 ソロやったり。でも外に出てみると、せんべい屋としての佇まいって、そんなに簡単には出ないことがわかるから。みんなせんべいが食いたいのに、俺だけがピザをやりたいって言ってたって気づいた(笑)。それで、みんなの職人性にも気づいて、まじめにせんべいを出す店にして。そしたら、いちばんいいせんべいは何かとか、変わり種せんべいのアイデアも出るっていう。
佐々木 俺はバンドにバチバチ感を求めているっていうか、ライバルでいてほしいっていうか。でも同時に、現場に来てくれただけでありがとうって思うときもあるんですけど。両立してると思うんですよね。「ありがとう」と「この野郎」が。
後藤 それ、もはや天然記念物みたいな感じじゃん。まだヒリヒリしているバンドって、そんなにいないもん。
ホリエ それに、統一感ありすぎるバンドもつまんないって思っちゃう。
──じゃあいい形で、野音でそれを見せてください。
佐々木 はい。仲がいいのを見たい人もいっぱいいるけど、そうじゃないヤツもいるっていう気持ちでいきます。
このインタビューの完全版は、3月29日(金)発売の『ROCKIN’ON JAPAN』5月号に掲載!
『ROCKIN'ON JAPAN』5月号のご購入はこちら
スタイリング=岡部みな子[後藤] 衣装協力[後藤]=STOF、bedsidedrama(ともにSTOF ☎03-6809-0464)