今回は、それぞれの楽曲への思いと、泉大智にとってこのソロプロジェクトはどういう意味を持つものなのか、単独ロングインタビューでじっくり語ってもらった。
インタビュー=杉浦美恵 撮影=マスダレンゾ
──まず、1stデジタルシングル“nerve impulse”がリリースされて、ここまでソリッドに振り切れたかという驚きがありつつ、一方ではまさに泉大智のやりたい方向性だとも感じました。このソロプロジェクトで、大智さんはギターボーカルを務めてますが、ソロでの活動スタートをいつ頃から考えていたんですか?ソロプロジェクトで動くなら自分で歌うのは当然だと思っていたし、自分がドラムを叩きながら歌うというのは想像できなかった
前もって考えていたわけじゃなくて、実際に動き出したのは最近です。DISH//内でも、メンバー4人のやりたいことが明確になってきて、タイミング的に自分もソロでやりたいなと思って、作品を作ろうかなと。そんな流れでした。
──大智さんはDISH//でもソングライティングを手がけているけれど、曲を作る中で、これはDISH//でやる曲ではないなという曲も生まれてきていたんですか?
そうですね。DISH//は4人でやってるバンドなので、俺のやりたいことだけをぶつけるのは違うなと思う瞬間もあるし、その「やりたいこと」をどうにか昇華できないかなとは思っていて。
──大智さんはDISH//でもライブで歌う場面がありますけど、今回、ご自身でリードボーカルをとったのは、どういう気持ちからですか?
ソロプロジェクトで動くなら自分で歌うのは当然だと思っていたし、自分がドラムを叩きながら歌うというのは想像できなかったんですよ。ドラムはドラムで叩きたいし、僕はギターも好きなので、ギターを弾いて歌いたいという気持ちがありました。
──あらためて大智さんの音楽ルーツを確認しておきたいんですけど、始めはどういうきっかけで音楽をやろうと思ったんですか?
もともと親父が音楽をやっていたのもあって、家にレコードがいっぱいあったり、日常的に音楽が流れていたり、自然に音楽と触れ合う環境にいました。そういう親父の影響で音楽をいっぱい聴いている中で、小学生の時に音楽教室にあったドラムを叩きたいなと思ったのが最初です。そこからどんどん音楽に興味が向いていきました。
──家ではどんな音楽が流れていたんですか?
ブルースとか、ブラックミュージックが多かったです。小学生なんでブルースの良さなんてわかんないし、つまんないなあって思ったりしてたんですけど(笑)。スティーヴィー・ワンダーもよく聴いていましたね。親父の年代的にも、家には80年代までの音楽しかなかったので、90年代以降の音楽は自分で掘り出していきました。高校生の頃はまわりに音楽好きな友達もいて、レッド・ホット・チリ・ペッパーズみたいなロックを聴いているやつらが増えて。どんどん音楽が好きになっていきました。
──今回のソロ作からはオルタナ、グランジ、ミクスチャーといった音楽のルーツを感じますが、自身ではどう感じていますか?
自分としては、作ってみたら意外とポップになったなと思っていて。とにかく難しいことを考えずに自分のやりたいことをやってみた結果、「やっぱりポップなものも好きなんだな」とあらためて気づきました。
──サウンド的には尖っていたり、かなり突き詰めたものになっていますが、確かに歌メロは意外なほどにキャッチーですよね。
複雑な音楽も好きなんですけど、やっぱりみんなで合唱できるようなわかりやすい音楽も好んで聴いてきたので。自ずとキャッチーになってるんだと思います。
──バンドではドラムを叩いていて、ソロプロジェクトではギター・ボーカル。そういうスタンスと、志向する音楽性から、なんとなくデイヴ・グロール(ニルヴァーナ/フー・ファイターズ)を想起したりもしました。“nerve impulse”は難しいことを考えずに思い切りやるというマインドだったので、(寺坂)尚呂己とやりたいなと思った
まさにそうですね(笑)。フー・ファイターズもめっちゃポップですし。
──“nerve impulse”のサウンドには驚いたファンも多かったんじゃないかと思います。まずMVが公開されて、ベースが寺坂尚呂己さんだったということにも驚きました。
尚呂己とはシンプルに友達なので。ソロをやるにあたって、自分と年の近い人たちと作りたいなと思ってたんです。活動の始めはどうしても手探りになるので、「まずは失敗してもいいから自分が気持ちよくできる環境でやってみたい」と思って。尚呂己はマインド的な部分が合うので呼んだんですけど、すごく喜んでましたね。ずっと「また一緒に音楽やりたいね」みたいな話をしていたので。
──“nerve impulse”はドラムのTAKEさんを含めた3ピースのスリリングなバンドサウンドを響かせていて、大智さんのソロはこの3ピースで進んでいくのかなと思っていたんですが、必ずしもそうではなく、楽曲ごとにマッチするミュージシャンを招いて制作していくという形態なんですね。
やっぱり楽曲をいちばん優先すべきだと思っていて──楽曲としてちゃんとクオリティの高いものを作って、その先にライブがあるという考え方のほうがいいなと。楽曲のクオリティにはこだわりたいので、その時々で楽曲に合うミュージシャンを呼べたらと考えていたんですけど、“nerve impulse”は難しいことを考えずに思い切りやるというマインドだったので、尚呂己とやりたいなと思ったんです。衝動的にやりたかったので、同い年のやつらと一緒にやることに意味があったのかなと。レコーディングも楽しくて──純粋に音楽を作っている感覚というか、こうしなきゃいけないみたいなのがないので。
──歌詞もすごく自由に書いていますよね。
意味はあまり重要視せず、音先行で作ってるんですけど──社会に対して自分なりにいろいろと思うことも書いています。そういうメッセージは、このソロプロジェクト自体にも含まれているんですけど。