【インタビュー】Mega Shinnosuke、“愛とU”が大ヒット中。ミュージシャンとしていちばん大事な信念を今こそ語り尽くす!

【インタビュー】Mega Shinnosuke、“愛とU”が大ヒット中。ミュージシャンとしていちばん大事な信念を今こそ語り尽くす!

バンドサウンドなんですけど、打ち込み音楽に近い発想のポップスを作ってます。“桃源郷とタクシー”の時からそれがいちばん向いてたんだなって気づきました

──普通に生きてる感じをそのまま作品にしてこうなるのは、時代を汲み取るソングライターやクリエイターとして最高のあり方じゃないですか。アルバムとしてはどういうものができたと実感していますか?

歌ってて楽しくなる、疲れないで聴けるアルバムだなって。ハウスミュージックにずっとハマっていたんですけど、ハウスミュージックみたいな、海外のミックスエンジニアやプロデューサーが作って、音圧があって、削ぎ落とされていてノれるだけっていう音楽が好きな自分にとって、ポップスにはなんの価値や意味があるんだろう?って考えたんですよね。その結果、ポップスはみんなが歌えるっていうのがデカいなと思って。当たり前の答えなんですけど。ポップスのよさと、ハウスミュージックみたいに聴き流せるけどずっと音にノれるような安心感が両立しているといいなと思って。「派手でしょ」「盛り上がりそうでしょ」みたいな感じよりも、ずっと聴けることを大事にしてました。だからロックミュージックなんですけど、ポップミュージックであり、俺的にはハウスミュージックでもあるんですよね。バンドサウンドなんですけど、打ち込み音楽に近い発想のポップスを作ってます。“愛とU”にも、その感じがあるというか。いろいろな音楽をやったけど、“桃源郷とタクシー”の時からそれがいちばん向いてたんだなって気づきました。

──いろんなサウンドを貪欲にやったからこそ、一周まわって強くなって戻ってきた感じがあるなと思いました。アルバムには、以前の取材でも仲のいい友達として話にあがった崎山蒼志さんと、chelmicoが参加しています。そういえば、今年の「SONICMANIA」で崎山さんとMegaさんのふたりが一緒にいるところを見かけましたよ(笑)。

あ、マジっすか(笑)。

──なぜこのタイミングで崎山さんを迎えて曲をやりたいと思ったんですか?

ずっと一緒にいるし、1曲くらいあったほうがいいかなと思って。

──ずっと一緒にいる感じなんですか?

週に2、3回くらい一緒にいます。「最近聴いたこれがめっちゃいい」とか、今自分がやってることとか、いろいろ話すんですけど……同じ音楽が好きで、酒飲んでるだけですね。彼は聴いたことのある音楽を作りたがらないんですよ。その感じ、いいなと思って。

──そんな仲で、いざ一緒にやろうってなって、どういう曲を作ろうって話しました?

もともとは違う曲を作ろうとしていて。もうちょっとトラックっぽいフォーキーな曲を作ろうとしていたんですけど、その曲を一緒にやってみたら、ちょっとダメだってなって。その時、俺と崎山が出会ったばかりの頃に朝方ベロベロになりながら「曲作ろう〜」みたいなことを言ってて、俺が《海をみにいこう》って繰り返し歌っていたことを思い出して、それを曲にしようって言って。崎山が歌詞を書くって言ってたから、「(これを元に)書いてもらっていいですか?」って一旦投げたら、「これでいいと思います」とか言ってきて、結局、俺が作詞作曲になっちゃいました。

──(笑)。1回曲を捨てて、ベロベロな時に作った曲を採用したというのも、初期衝動的なものがいい音楽になると信じていることの証ですよね。chelmicoに関しては、どういう想いからオファーしたんですか?

僕は2015年くらいのシティポップブームのヘッズなので、そういう人たちとやってみたいという気持ちがあって。もともとRachelさんとは仲よくて、年越しもRachelさん家で崎山と過ごしたりしてて──という時にこの曲ができて。楽曲的に“今夜はブギー・バック”っぽいというか、シティポップ、渋谷系の雰囲気があるからchelmicoが合うなと思ってお願いしました。


ちゃんといい曲を書いていいクリエイティブをやれば、ちゃんと届くっていうことを自分にも証明できたから、またいい曲を作ろうと思います

──『君にモテたいっ!!』は出会いから別れまでのストーリーとも捉えられる8曲が並んでいると思うんですけど、最後の“ao”、“ふたりの映画”の2曲がまた、Megaさんのメロディと詞のよさが際立ついい曲で。

僕の過去作でいうと『2100年』の感じですよね。“甲州街道をとばして”っぽい感じでもある。日本のロックっぽくもあり、ちょっとドリーミーポップでもあるというか。“ao”を作り始めた時は自分っぽくないなと思って、最初は「サンクラRADWIMPS」って呼んでたんですよ。RADWIMPSがSoundCloudアーティストだったからこういう感じかな、みたいな。最後はちゃんと自分の楽曲に仕上げていくことができるから、そういうことも言っちゃえるようになったんですよね。邪念がなくなって、普通に「いい曲ですね」っていう曲を作れるようになりました。


──これまで以上に周りのことも気にせず、自分の作家性と向き合って、いい曲を作ることに専念できるようになったということですよね。Megaさん自身、より生きやすく、楽しいなって思えるようになってる感じですか?

あ、そうです。やっぱりちょっとバカにならないと楽しめないですよね。あと、前より酒に弱くなったから、酔っ払ってるかもしれないです(笑)。考え性なので、酒を飲んで脳を萎縮させて、感覚を磨いていくことで、社会人からちょっとずつ離脱して、芸術家として生きていくことに専念するっていうタームです、このアルバムは。

──酒で脳を萎縮させるのは気をつけてほしいけど(笑)。社会の縛りや邪念から離れて芸術家としての感覚を磨きたいというマインドは前作の時もあったと思いますが、それがより進んでいる感じ?

そうかもしれないです。自分で言うのはアレですけど、子どもの頃から器用でいろいろ考えるタイプで、「考え方がお兄さんだね」って言われることにコンプレックスを持っていて、ちゃんと周りの人間とセッションしたいと思っていたんですよ。ただ、音楽をやっていくと、音楽が楽しいし、音楽を作ることに集中したほうがいいなと思って。音楽に本気になっていくと、ガチで人に興味がなくなっていくんですよ。(『ドラゴンボール』の)フリーザでいう「第四形態」になって、削ぎ落とされたんです。「周りとは違うぞ」っていう裏をかいた自信みたいなものがあったんですけど、今は自信とも違う確固たるものができあがって、人に突っかかったりもしなくなって。でも別に「いいやつ」ではないんですよね。基本、存在として、人間として、ギャグでもあるんです。ギャグだからこそ何やってもいいという感じになってきたというか。映画の『デッドプール』みたいな人生観になってきました。

──(笑)。その表現者としての佇まいを感じますよ。“愛とU”のテーマと同じように、社会の通例に縛られずに感覚を大事にしよう、もっと楽しめばいいじゃん、っていうメッセージを今の「理性時代」に発してくれているなと。

社会に対して影響を与えるとか、全然何も思ってないし、そういうことを背負いたくはないんですけどね。

──そうですよね。そういうことから距離を置きたいと思ってるのはわかってる(笑)。

できるだけ距離置きたい(笑)。

──今作のツアーでは12月に自身最大キャパのZepp Shinjukuでのワンマンが控えています。ライブに関しても「動員を増やすために何かをやる」とかからは距離を置いて、同志を巻き込んで熱狂を作ることを大事にされていると感じますが、今どんなことを思いますか?

ステージに立たないとわかんないですね。DJ的な発想ですけど、盛り上がる箇所を用意した構成を作ったうえで、自分のやりたい音楽を自由にのびのびやりたいなって思います。ヒットソングもその要因のひとつになるから、(“愛とU”があることで)セトリが組みやすくなりました。しかも変にアゲる曲でもないし、どの間に挟んでもいけるので。

──確かに、バラードのあとにも、エンディングにも使えそうな曲ですよね。そういう意味でも、“愛とU”がここまで大きくなったことはMegaさんの活動にいい影響を与えてくれそうですね。

面白いですね。だってギリギリですよ。“桃源郷とタクシー”がもう5年前ですよね。そこからよくヒット曲が出たなと自分でも思います。ヒット曲って、そうそう出ないじゃないですか。タイアップもない中で。あと、“桃源郷とタクシー”のMVはプロの映像ディレクターに任せたんですけど、自分でディレクターをやったMVをたくさん観てもらえる曲を作りたくて、“愛とU”でそれが実現できたことが嬉しいですね。作詞、作曲、編曲、監督、全部やってるから。

──映像まで自分でディレクションできると伝えたい内容の強度が強まるし、しかも今はみんな映像を作れちゃう時代だから、そこまでできるクリエイターがリスペクトされるのだろうなと思います。

アー写も証明写真に変えたし。17万円かけてちゃんとしたアー写を撮ったんですけど、アー写はやっぱり証明写真がいいかもなと思って、その日に撮りに行って、これでいいやって。1100円。アー写って、難しいんですよ。草むらに入って撮ってる写真とか見ても、どんな音楽なのかがわからないじゃないですか。

【インタビュー】Mega Shinnosuke、“愛とU”が大ヒット中。ミュージシャンとしていちばん大事な信念を今こそ語り尽くす!
──ちゃんと撮ったあとに「やっぱり証明写真でいいじゃん」っていう感覚を持てて、行動までできるのがすごいです。

ものづくりにルールが多いとダメなんですよ。柔軟性を持ってないといいものはできない。「シーンの中に入らないといけない」「1回流行ったら落ちるばかり」「アニメタイアップやらなきゃ」「アイドル的な人しか集客できない」とかいろいろあると思うんですけど、ちゃんといい曲を書いていいクリエイティブをやれば、ちゃんと届くっていうことを自分にも証明できたから、またいい曲を作ろうと思います。

アルバム『ロックはか゛わ゛い゛い゛』のインタビューはこちら
【インタビュー】Mega Shinnosukeが問いかける、今の時代にアーティストをやる意義。衝動まみれの新作『ロックはか゛わ゛い゛い゛』完成[PR]
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