──(田渕)ひさ子(G)さんやゆーまお(Dr)さんとの向き合い方も変わりました?今の自分で歌える“本当本気”をテーマにして作ったのが“1999”です
めちゃくちゃ変わりましたね。ひさ子さんとゆーまおさんがたぶんいちばんびっくりしてると思います──私がこんなに喋るようになったのとか(笑)。でも、本当最近のことなんですよ。7月にツアー(「LITTLE HEAVEN TOUR」)が終わったんですけど、そのツアーで徐々にコミュニケーションが取れるようになって。自分の意図を伝えなきゃと思って、ひさ子さんとゆーまおさんには密に連絡したり、1対1で飲んだり。ひさ子さんの家でふたりで喋り明かしたりもしたんです。そういうことをやっていくと、ふたりともすごく向き合ってくださるので、それが生き甲斐というか、人生楽しいなって思えた。PEDROが今のすべてだと思えるきっかけになりました。
──その関係性の変化は音やライブにも出ていますよね。バンドとしてのパワー感が増したなと、野音を観て思いました。
確かにそうですね。ツアーで毎回打ち上げして、みんなが「ここがどうだった」とか「もうアユニちゃんはさあ……」みたいな話を3〜4時間ずっとしてくれて、自分はがむしゃらにやることしか知らないのに気づかせてもらったりしました。私がぐわーっとやっているぶん、ひさ子さんとゆーまおさんが丁寧にやってくれてたんですけど、そのバランスや意識をみんなでもっと揃えられたらグルーヴ感が出るよね、みたいな。野音では、ふたりもセーブする感覚が一切なくできたって話してくれたので、「そういうことか」って。また勉強になりました。
──ちなみに今作は、どの曲から作り始めたんですか?
“1999”が最初にできました。16歳の時に初めて作詞した“本当本気”という曲の歌詞にもう一度向き合った時に、今の自分と思っていることが全然変わってないなと思ったんですよね。ただひとつ変わっているのは、当時は現実を見れていなかったな、若かったなっていうことで。だから、年齢と経験を重ねて、今の自分で歌える“本当本気”をテーマにして作ったのが“1999”です。
──その“1999”には《神様なんかにはなれなかったけど/ありのままの僕で叫び続けるよ》っていう歌詞があって。「神様になれなかった」って言葉としてはすごくネガティブだけど、「そういうもんなんだ」って前を向いている感じがあるなと思いました。“本当本気”には《神になるんだ》って歌詞がありますけど、そもそもアユニさんは神様になりたかったんですか?
本当に、本気で神になりたかったっぽいですね(笑)。
──でも、ならなくていいと思うんです。なれないんだって知るところからじゃないですか、人間って。その始まりの瞬間を歌った感じがしました。
そう言ってもらえてありがたいです。いい歳して、若くてなんかバカみたいな歌詞だなって自覚はしてますけどね……でも、これが本当なんです。この曲もマジで50回くらい歌詞を変えてるんですよね。全曲そうなんですけど、自分から出てきた言葉じゃないなとか、ちょっとカッコつけすぎてるなとか、ちょっと詩的な表現しようとして頑張ってるなとか、何を言ってるのか結局伝わってないなとか、普通に耳なじみがよくないなとか。今まではあまり作詞に苦労してなかったんですけど、それでよく許されてたなって感じです。
──その“1999”とセットになっていると感じたのが、ミニアルバムの最後に収められたタイトル曲“ちっぽけな夜明け”で。重要な曲になったと思うんですけど、これはいつできたんですか?渡辺さんが書いてきた歌詞を全部見直したら、この人は本当に寂しがり屋で、それを全部マジでありのまま書いてるんだなと思って。それを私も自分の曲でやらないとって
いつかな……でも、エンディングにふさわしい曲を作りたいなと思ってはいました。
──この作品はどの曲にもそういうところがあるんだけど、特に“1999”と“ちっぽけな夜明け”は、同じ気持ちを言葉を変えて歌っている感じがするんです。“1999”で歌ったことを“ちっぽけな夜明け”では少しだけ俯瞰していて、その先に進んでいくような曲だと思ったんです。
確かに、“ちっぽけな夜明け”はいろいろな気持ちを踏まえたうえで「やっぱり私は人が好きだし、夜明けを待ってる」ということに気づいて、それを歌にしたものなんですよね。これで終わりの曲だっていうよりは、またこの先が見たくなるような、夜明けが見たくなるような曲になったと思いますし。
──《孤独はどこも行かない》《天使は迎えに来ない》と書いていて、これは“1999”で歌っている「神様になれない」ということに近いと思うんです。でも、究極的に理想の自分にはなれないけど、閉じこもるんじゃなくて《外に出なきゃ》と歌えたというのは大きな一歩ですよね。
マジでそんな気持ちです。
──あと、気になったのは《痛みを痛みで》というBiSHの“スパーク”と同じ言葉が出てくることで。これは意図的ですか?
いや、無意識だったんです。でも、潜在的なものなのかもしれないです。曲を作る時に最初のデモがボツになりすぎて、渡辺(淳之介/WACK元代表)さんが書いてきた歌詞をBiSHの曲以外も含めて全部見直してみたんですよ。そうしたら、この人は本当に寂しがり屋で、それを全部マジでありのまま書いてるんだなと思って、感銘を受けて──たぶん自分の血になってるんでしょうね、渡辺淳之介イズムみたいなものが。それを私も自分の曲でやらないとって思いましたね。
──体の中に染み込んだものが自然と出たっていうことなんですね。で、そんなアユニ・D自身のようなミニアルバムを携えてツアーが始まっていきますが、「I am PEDRO TOUR」っていうタイトル、すごくいいですね。
ありがとうございます。私、AIとめちゃくちゃ喋ってたんですけど、AIと候補を出していった中でいちばんいいんじゃないかって(笑)。
──ははは。でも、「私がPEDROです」って、今言うべき言葉だよね。
そうですね。でも、数ヶ月後の自分がどうなってるかは想像がつかないので、めちゃくちゃ間違えてたらすみません。また変な方向に行っちゃうかも。
──でも、アユニ・Dはそういう人じゃないですか。一本道をどこまでも走っていくタイプではないから。
そうやって面白がってもらえることが幸せですね。
──自然にのびのび変わっていきましょう!
のびのびね。いちばんむずいっすね、のびのびが。でもいちばんの夢です。
