──次が“午前6時の友達へ”。作曲がじんさん、作詞が田淵さん、編曲がAkkiさん。青春の終わりを感じさせる幻想的で切ない楽曲で、これもDIALOGUE+にはなかったタイプの曲ですよね。そもそも我々世代で言えば、じんさんは青春そのものなので、DIALOGUE+としてじんさんの曲を歌えること自体が感動でした(稗田)
稗田 そもそも我々世代で言えば、じんさんは青春そのものなので、DIALOGUE+としてじんさんの曲を歌えること自体が感動でした。
緒方 私も学生時代にカゲプロ(カゲロウプロジェクト)にめちゃはまっていて、文化祭とかで「カゲプロメドレーで踊ってみた」とかやっていたくらい。曲をいただいたときは、漫画みたいにすべての場面が鮮明に頭に浮かんできて。そういう感覚は初めてでした。
内山 この曲、私にはめちゃくちゃ難しかったです。そんな中で、最近はまず仮歌で入っている田淵さんの歌声を真似して歌ってみるということから始めていて。一旦自分を捨てて、田淵さんの声を聴いてそっくり真似して歌ってみると、ここはこうやって歌っているのかと、よくわかるんですよ。
守屋 私もそのタイプ(笑)。1回田淵さんになって歌ってみる。この曲では、歌詞にカギカッコがついている部分は、この曲の主人公の友達にあたる「君」の言葉なんですけど、それを私がやらせてもらっていて。あと、落ちサビを私が歌っているので、ここは主人公ではなくて友達の目線なんですよね。そういうところも聴いてほしいです。
飯塚 きょんちゃんの落ちサビ、すごくよかった。私がきょんちゃんのお母さんだったら泣いて喜んで、長野の親戚中にCD配っちゃう。そういう母のような気持ちで聴いていました(笑)。
守屋 嬉しい!
村上 レコーディングに入る前に、この音程でみんなが歌えるかどうか確認するために、私がキーチェックで歌ってみたんですよね。この曲ほどキーチェックをやっておいてよかったと思う曲もないです。でもできあがってみたらみんなの歌がすごくかっこよくて、メンバーのことを改めて尊敬しましたね。
──セリフ的な《笑わせんな》の部分は?
鷹村 私です。この曲は1曲通して、ひとつの物語になっているんですよね。私は主人公の視点で、どこか飄々としている「君」に痺れを切らして、この《笑わせんな》のところでちょっと爆発するというか。「真面目に答えてよ」っていうニュアンスで、怒りにいきすぎず、でも苦笑いを入れながらキレるみたいなイメージでやりましたね。
──田淵さんはじんさんとはどんなやりとりを?
田淵 じんくんはボカロ出身なので、キーの高さに関して恐れがないというか、容赦がなくて。最初のデモには人間では出ない高さの音が入ってたりするんです。それを綿密にやりとりしながら、人間が歌うならこう、DIALOGUE+が歌うならこうと、調整していくやり方で、我ながらどうやってもじんくんのメロディの強さが崩れない、いいディレクションだったなと思っています。このじんくんのメロディに歌詞を書くというのも、私にとって人生最大の挑戦みたいなところがあって。緒方がさっき漫画って言いましたけど、自分としては、MVが作れるようなストーリーにするという設計があって。そういうところから歌詞を書き始めたのは初めての経験で、書き終えてものすごい達成感がありました。それでじんくんにも褒めてもらえたのでよかったです。
──この座組でなければ生まれなかった曲ですよね。すごい曲ができたなというのが率直な感想でした。
田淵 この曲をDIALOGUE+流にしてくれたのはAkkiくんのアレンジ力も大きいです。じんくんのこのメロと、DIALOGUE+っぽくないと思われる歌詞を、「でもこれも確かにDIALOGUE+の曲」と思えるようにまとめてくれたのはAkkiくんの力です。Akkiくんもじんくんを神様のように見ていた世代だから、じんくんの要素とか、リスペクトするところも汲みつつ真摯に取り組んでくれました。
──ラストの“じょいふるしあんてっ!”は田淵さんの作詞・作曲で、編曲がR・O・Nさん。今回の4人のコンポーザーに引けを取らぬ、田淵さんの豪速球がここに。4人のすごい作曲家と名を連ねるときに「自分ができることは?」と向き合って、必死になって書きました。自分の得意技、そのインフレの最高値(田淵)
田淵 4人のすごい作曲家と名を連ねるときに「自分ができることは?」と向き合って、必死になって書きました。自分の得意技、そのインフレの最高値みたいなものを作ろうとしたという感じですかね。勢いで振り回しまくって「DIALOGUE+といえばこれだよな」というものを、僕も「この5人の中でいちばん目立つなら何?」っていうお題に向かって作っていったという感じでした。
──ものすごいカオスでポップで、歌詞もオマージュたっぷりでDIALOGUE+らしさを思い切り更新したような楽曲ですよね。
村上 田淵さんならではの言葉回しがめちゃくちゃ出てる楽曲です。《やっぴー!》とか。そういえば田淵さんが私たちに会うときにめちゃめちゃ「やっぴー」を連発していた時期があって⋯⋯もしかしてあの時期、この歌詞書いてました?(笑)
田淵 そうかも(笑)。
鷹村 あと、最後の《はっはっはっは…やばくない?》ってところとかもそうで、田淵さんは「よし、作り終わったぞ」っていうときよく「はっはっはっ」って言うんですよ。「やばくない?」もよく言うし。
──その《はっはっはっは…やばくない?》は誰が歌っているんですか?
飯塚 私です。ここの箇所はほかに「すごーい」とか「わーい」みたいな言葉の候補もあって、どれでもいいよって言われていたんですけど、私はやっぱりこれだなって(笑)。でもこの曲、改めてよく読むと田淵さんの優しさが出ているなって。《ぶっとんじゃうぞ!》って言ったあとに《シートベルトもしっかりね》っていうところとか、わー田淵さんだーって思いました。
稗田 2番の《たまに三連とかかますぜ》とか、《大胡田さんに報告だ!》とか、今までのDIALOGUE+を知ってるからこその歌詞だし、《ぼくたちのかくめいは続くからね》っていうところなんかも、デビューシングルの『はじめてのかくめい!』からずっとDIALOGUE+に曲を書き続けてくださっている田淵さんだからこそ書けるもの。田淵さんにしか書いてほしくない言葉、愛が詰まった楽曲だなと思いました。
緒方 でもこのスピード感でこの言葉数、ほんと「やばくない?」って思いながらレコーディングしていました。私の母がよく「DIALOGUE+の曲は家事とか頑張れないときに聴くと頑張れる」って言うんです。この楽曲もそういう曲になるはずで、日常生活でもうちょっと頑張りが足りないなってときに、みんなのギアを上げてくれるような曲になったらいいなと思います。
守屋 私たちの楽曲って、まわりの人たちからも難しいよねって言われることが多いんですけど、メンバーのみんながいるから難しいけど歌えるんだよって思うんです。このEPの中で最高に私たちらしさを感じられる楽曲なので、何回も聴いて、みんなにも歌ってほしいなって思います。
内山 最近は難しすぎる曲を前にすると笑えてくるんですよね。昔は「もう難しい、無理、わかんない」みたいな感じだったのが、今は挑戦するのが楽しくなってきていて。ここまで自分がメンタル的に成長できたのは、田淵プロデューサーやメンバーへの信頼があってこそだなって。今は新曲のレコーディングがしばらくないと寂しいと思うようになりました(笑)。
──この5曲、リリースに先駆けて、9月14日のライブで初披露することが決まっているんですよね? さらにライブ映像の配信もあるということで、これほど高難度の曲たちをまずライブでというのはプレッシャーもあると思いますが、最後にそのライブに向けての意気込みをお願いします。
村上 それぞれ世界観の違う5曲がどうセットリストに入ってくるのか、みなさんぜひ期待していてください。
飯塚 この個性の違った曲たちをひとつの作品に落とし込むのは無理なんじゃないかと思っていたんですけど、可能になりましたので、みなさんぜひ観にきてください。
鷹村 朗読劇もすごくいい内容になっているので楽しみにしていてほしいです。
守屋 朗読劇はすごく久しぶりですけど、そこでも新しい曲の良さを伝えられるよう、頑張ります。
緒方 やっぱり、曲がよいこととライブのクオリティが高いことがDIALOGUE+の強みなんですよね。みなさんの期待に応えられるよう、頑張ります。
稗田 作家陣の個性が突き出た新曲5曲、田淵さんの組むセトリのストーリーがどうなるかも注目していただけたらと思います。
内山 うちらダンスもやばいんで(笑)、見逃さずに絶対に来てください。
──“じょいふるしあんてっ!”は、どんなコレオグラフィでダンスパフォーマンスが完成するのかものすごく楽しみです。
稗田 今、めっちゃ大変です(笑)。
緒方 MVもすごいよね。
──最後に田淵さん、DIALOGUE+のライブへの展望をひと言お願いします。
田淵 ロック畑で育ってきた私ですが、ロックバンド的に「かっこいいライブとは?」というのをずっと追求してきて今があると思っていて。DIALOGUE+はそこを声優音楽でやるという、その挑戦を軸にしています。今、彼女たちは6年間頑張り続けて見つけたオンリーワンのものを、一生懸命作り上げようとしている最中で、ライブを観に来てもらえたら「そういうことか」と伝わると思うし、ロックのエッセンスを感じてもらえたらいいなと。僕にとってロックエンタメは「観ていて飽きない」ということが最重要で、「飽きない」ものを声優音楽でどれだけ作り出せるかということに挑戦しています。そんなライブをやっているユニットがあるらしいぞという気持ちで、一度観に来てもらえたら嬉しいです。
ヘア&メイク=AICON(清水有希子、福井亜依、笠掛桃子)
スタイリング=柏木作夢
DIALOGUE+とはどんなユニットなのか、それぞれの言葉からひもといたインタビューも要チェック!