【インタビュー】「お茶の間に届く音楽」を目指しながら「目の前のあなた」に向き合うポップユニット・harha。観る者を熱くさせるライブ、そして新曲“素描”へと続く結成からの3年を語る

【インタビュー】「お茶の間に届く音楽」を目指しながら「目の前のあなた」に向き合うポップユニット・harha。観る者を熱くさせるライブ、そして新曲“素描”へと続く結成からの3年を語る
HIP-HOPをバックグラウンドに持つハルハ(Composer・Rap)が、ヨナべ(Vo)の歌声に出会い、閉じた世界ではなく「お茶の間に届く」ポップミュージックを作ろうと、harhaというユニットを結成したのが2022年。ヨナべの伸びやかで透明感のある、そして凛とした陽性の歌声は、ハルハの紡ぐメロディの上で弾むように響く。2023年にリリースした“人生オーバー”は数多くの歌い手にもカバーされ、harhaの存在は広く知れ渡っていった。2025年になりライブ活動も精力的に行うようになり、3月には1stワンマン、そして8月にはO-WESTで2ndワンマンを行い、いずれもチケットは即完売。早耳のポップスリスナーから今そのライブパフォーマンスに最も熱い視線が注がれているのがharhaである。今回はユニット結成のいきさつから、楽曲作り、ライブに対する想いまで、ふたりにたっぷりと話を聞いた。

インタビュー=杉浦美恵


思い描いているポップスのあたたかみを僕の声で表現するのは難しいなと思って、ボーカルを探す中でヨナべさんを見つけて。「この声だ!」ってなりました(ハルハ)

──ハルハさんはharha結成前はラッパーとして活動されていたんですよね。

ハルハ 遡れば中学生の頃からですね。音楽で売れたいという想いは特になく、音楽をすることが逃げ場みたいな感じでした。日夜、友達とフリースタイルラップをやっていて、高校に入ってから曲を作り始めて。

──その頃、何から逃げたかったんでしょう。

ハルハ 中高生のときって、まあいろいろあるじゃないですか。感情のうねりみたいなものにあてられて。高校では部活も辞めちゃって、HIP-HOPの現場によく足を運んでいたんですけど、そこにいる先輩方みたいにはなれないなっていうのもあって──その先輩方はカルチャーとして、ファッションからライフスタイルからすべてにおいてHIP-HOPが好きなんですよね。でも僕はただラップが好きで、曲作るのが好きで、音楽的側面からやっていただけだったから。

──そのHIP-HOPのコミュニティにいるのも気が引けてしまった?

ハルハ はい。僕はバトルもやってたから、先輩方にめっちゃボロクソ言われるんですよ。先輩は「バトルだからしゃあないでしょ」っていう感じなんですけど、普通にケンカみたいな感じになって。勝ち負けもなくただ険悪なムードになって終わるみたいなのが、しんどいなと思って。

──HIP-HOPのビーフの文化といえばそうだけど、メンタルが削られますよね。

ハルハ しかもそれをステージ上でやるので、「ああもう帰りたい」って(笑)。あと、ライブでも、曲をあまり作ってないのに先輩というだけで出順が後ろの人がいたり、頑張ってお客さんも呼んでるのにギャラがもらえてない若い子たちがいたり、そういうのがすごく嫌で、そこから離れて自分たちでやろうという感じになっていきました。

──それで、ひとりで音楽制作に向き合うことになったんですね。その頃はどんな音楽をやっていこうと思っていたんですか?

ハルハ 高校を卒業したタイミングで「音楽をやっていこう」という決意を固めたんですけど、その頃は絶対に売れてやるという気概を持っていて。ラップも好きだけど、「お茶の間に届く音楽」というのを第一優先にしました。僕が歌うことも考えたんですけど、思い描いているポップスのあたたかみを僕の声で表現するのは難しいなと思って、女性ボーカルの方を探していく中でヨナべさんを見つけて。「楽曲と一緒に歩ける人」というか、楽曲の内容や世界観に寄り添って歌える人がいいなと思ってたんですけど、「この声だ!」ってなりました。

──そこでネットに歌を上げていたヨナべさんに白羽の矢が立ったと。そもそもヨナべさんはどんなきっかけで歌うようになったんですか?

ヨナべ 私はとにかくヨルシカさんが好きで、ヨルシカさんの曲を歌ってみたら、「意外と歌えるかも?」って思えて。もっとうまくなりたいなと思ってからは、動画で自分の歌を録って投稿して、それを聴きながら「ここはもうちょっとこう歌ったほうがいいかな」って、個人的にやってたんですよ。

──それをハルハさんが発見したんですか?

ハルハ はい。最初はただ「僕の曲を歌ってくれませんか?」という依頼をして、返信も来ないかと思ってたんですけど、ちゃんと返ってきて。

ヨナべ スタッフさん経由の依頼だったので、ものすごく丁寧な社会人感のある人から連絡が来たんです。この社会人感で連絡をいただいたのなら、こちらも返信しないわけにはいかないなと(笑)。

ハルハ スタッフさんからのメールで返信がなかったら、次は僕がもっと熱量のある言葉で依頼しようと思っていたんですけどね(笑)。

ヨナべ 最初は送られてきた曲を指定された場所で歌うというオファーだったんですけど、まだ半分信じていなかったから、行ったら誰もいないかもって思ってました(笑)。でも、スタジオにはちゃんとスタッフさんがいて、レコーディングすることになって。

ハルハ 初めて会ったのに「わあ、この機材って高いんですか?」って言ってたり、フランクで陽気な方が来たなと思ったのを覚えています(笑)。で、2〜3テイクくらい歌ってもらったところでスタッフさんと「いけるね」ってなりました。

【インタビュー】「お茶の間に届く音楽」を目指しながら「目の前のあなた」に向き合うポップユニット・harha。観る者を熱くさせるライブ、そして新曲“素描”へと続く結成からの3年を語る - photo by Victor Nomoto (Metacraft)photo by Victor Nomoto (Metacraft)

曲を歌うときはまずは自分のために歌って、自分をみんなに同化させていくような──自分を含めた大衆の歌にしていく感じで、歌に入り込んでいくことが多いです(ヨナベ)

ヨナべ その数日後くらいにスタッフさんから「これからも一緒にハルハの歌を歌いませんか?」って誘われたんですけど、そのときはここまで本格的に活動するイメージがなかったんですよ。ライブすることもまったく想像していなくて。歌を作る人がいて、女性の声が必要だから歌うくらいの気持ちでした。でも、何かのライブに「出てみようよ」みたいな流れになって「あれ?」って(笑)。で、「今後、harhaとしてライブをやっていくから、まずは練習で3〜4曲歌うライブに出てみようよ」って言われたときに、「え、人前に出るんだっけ?」ってなったという(笑)。

──最初のライブはどんな気持ちで臨んだんですか?

ヨナべ 気持ちが大荒れで、頭は真っ白、顔は真っ青みたいな。ライブの前日にホテルに泊まっていたんですけど、夕方の6時くらいに寝ようと思ってベッドに入ったもののしんどくて眠れなくて、そしたら発熱してて。気合いで乗り切りました(笑)。

ハルハ しかもヨナべさんはそれが人生初の人前歌唱だったんだよね。

ヨナべ そうなんです。とにかく間違えないようにテンパらずに歌うことに必死で。その日のライブはステージ上での記憶がほとんどない(笑)。ワンマンをやるようになって、やっとライブを楽しめるようになってきたかな。

──ということは、今年3月の1stワンマン「ミライサイライ」でようやく楽しめるようになった?

ヨナべ そうですね。最近はチームharhaとしても1〜2年後のスケジュールまで決まってくるようになって、今ようやくharhaは続いていくんだなあって実感しているところです。

──2ndワンマン「オトナタイコウ」のラストでやっていた“草縁”という曲は、ハルハさんがヨナべさんに出会ってから書いたものですよね? 《君の声で照らして/僕の全てを暴いて/まだ見ぬ明日の証明をしよう》の部分もそうですが、harhaはこの歌声とともにやっていくという未来への想いを込めた楽曲のように響きました。

ハルハ もちろんふたりでやっていこうという想いも込めつつですが、最終的にはその曲が聴いてる方の自分ごとになってほしいと思っていました。僕の想いからの発信ではあるんですが、もう少し余白のある曲になったらいいなって。


──確かに、《どうすれば君の歌になる?》は、自分が作った曲がどうすればリスナーのものになるのかという意味にも受け取れますよね。自己完結ではない、聴く人それぞれの解釈で受け取れる歌になっているなと。

ハルハ それを目標にして曲を作っているところがありますね。あと、どの曲にも思っていることなんですけど、僕らの楽曲はリスナーの方との「対話」でありたいんですよ。それを感じていてくださったなら「やったー!」って感じです。

──ヨナべさんはこの曲を最初に聴いたとき、どう感じましたか?

ヨナべ 私が「しんどいことがあった」という話をしたあとにできた曲だったんです。だから、この曲はハルハくんが私を応援するために作ってくれたんだって思ってたんですけど、それをハルハくんに言ったら、「それだけじゃないよ」って言われてすごく恥ずかしくて(笑)。

ハルハ いやいや! それもあるそれもある。

ヨナべ でも、逆に言えば私の悩みも組み込んだうえで、こうしてみんなに届く歌を書けるのはすごいなって思いました。

ハルハ 僕個人だけの想いを歌にしたくはないというのが無意識的にあって。僕がHIP-HOPで書いていたリリックは、自分のためだけのもの──自分が届けたい人のためだけに書いていたものだったんですよ。でも、harhaではもっと広く、より多くの人への歌を目指したかったから、曲に対しても自分だけの想いをあまり語らないようにしているんです。

ヨナべ 私はまだハルハくんより視野が狭くって、自分の歌でみんなを喜ばせるということに対しておこがましい気持ちになってしまうことが多いんです。だから、曲を歌うときはまずは自分のために歌って、自分をみんなに同化させていくような──自分を含めた大衆の歌にしていく感じで、歌に入り込んでいくことが多いです。


──2023年は“人生オーバー”が大きな話題となりました。ビビッドな歌声、ポップなサウンドと、ヒットも大いに頷ける楽曲なんですが、歌っている内容は人生への諦念が滲んでいて。こうした曲が多くの人に愛されるというのは、どう受け止めましたか?

ハルハ あの曲を僕の声で歌っていたら、たぶんネガティブしかなかったと思うんですよ。ヨナべさんの声が乗ったからこそ、ネガなのに明るい、この温度感にたどりつけた。今の社会情勢的にも、ただ暗いだけの曲って僕はあまり求められていない気がして。歌にはささやかでも希望が見えたほうがいいなと思ってるんです。“人生オーバー”は歌詞だけ見たら今にも終わってしまいそうな内容ですけど、そこにある諦めがヨナべさんの歌声であっけらかんと響いて、「そろそろ無理だし、もういいか」みたいに逆にやる気になる──そういうところがうまく出たし、皆さんに聴いていただけた要因かなと思っています。僕が最初に言っていた「お茶の間に届く」「楽曲と一緒に歩ける」声というのはこういうことかと、この曲で実感した部分もありましたね。

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