──その中で、みきまりあさんが楽曲に関わる比重も高まっていますよね。8曲目の“焦熱”は作詞作曲を手がけられていますが、不穏なメロディの立ち上がりや冷たいトーンのサウンドがアルバムに奥行きを生んでいるなと。“焦熱”はラーメンをテーマにしたんですよ(笑)。味わって食べたいけど、並んでる人がいるから早く食べなきゃという焦りを曲にできないかなって
みきまりあ この曲はラーメンをテーマにしたんですよ(笑)。私、ラーメンがめちゃめちゃ好きで、ひとりで並んで食べに行ったりするんです。『EYE』というタイトルだから、視線に注目した時に、ラーメン屋さんでラーメンを食べてる時って後ろにお客さんが並んでることも多いじゃないですか。自分はこのラーメン1杯の重みを感じたいから味わって食べたいけど、並んでる人がいるから早く食べなきゃという焦りを上手いこと曲にできないかなと思って(笑)。でも、いろんな解釈をしてほしかったので、ラーメンを歌詞の中には入れたくなくて、あえて回りくどい書き方で書きました。
──そして、終盤は純度の高いバラードが続きます。“きえない”、“シーグラス”からは、過去を振り返りながら、その時々の「今」にあったものは消えない、という意思を感じました。
ツミキ 過去があっての今だと思うんですよね。僕は、今やるべきこととか今作るもの、体温を感じる今この瞬間を大事にする性格なんですけど、そんな僕にも残っている記憶は宝物だし、そこにも寄り添って描きたいなって。
みきまりあ そういう大切にしたい過去の記憶って、誰しもあると思っていて。最後はすごくあたたかい感情で終わらせてくれるというか──“シーグラス”の《また出会うまで/失くさない》とか、エモーショナルでありつつも、前向きな気持ちにさせてくれるところがすごく好きですね。
──続く“きみの惑星”も、“きえない”、“シーグラス”と似たテーマを持ちながら、みきまりあさんが詞を書かれていることで、人間としての考え方の差が出てると思いました。おふたりは自分たちの違いを感じたりしますか?
ツミキ 結構何もかも違うような──。
みきまりあ そう、真反対。私はめちゃめちゃ感情で動くタイプですけど──。
ツミキ 僕はどっちかと言うと理屈派(笑)。理屈っぽくはないんですけど、人に届けたい時の考え方がちょっと違うかもしれないですね。自分はわりと答えを出すというか──「AはAである」みたいなことを、歌詞でどーんと提示することが多いんですけど、まりあの歌詞はもうちょっと柔らかいというか。たとえば“きみの惑星”でも、《これでよかったとなんとなく想う》の「なんとなく」って、僕はあんまり使わないんですよね。
みきまりあ 私はツミキさんの歌詞の難しい言葉をいっぱい使うところにすごく憧れてて。私は逆に、輪郭がないような感情をそのまま書いちゃったりするから──それが自分だとも思ってるんですけど。
──そして、ふたりの価値観が1曲に融合したのがラストの“I THINK”です。自分ができることは、音楽で世界を少しだけよくすること。ひとりの自分が生み出したMP3が、誰かひとりのちょっとした世界を変える、その美しさを大事にしたい(ツミキ)
ツミキ この曲は1番まで書き終えて、“I THINK”というタイトルをつけたんですけど、1文目で《僕らは考えた》って言っちゃったので、「僕ら」と言ったからにはまりあに書いてもらおうと思って2番の歌詞を書いてもらいました。
──2番の《“わからない”が愛おしくなる》って、さっき仰った話に──。
みきまりあ ははは。通じてますね。
──この曲では、《ひらめきがきっと世界を変える》というポジティブなメッセージが歌われていますけど、それをストレートに届けるには覚悟がいる時代だと思うんですよね。みんなが相互監視的で、冷笑的な現代においては。
ツミキ 僕はそういうところから抜けて、「自分は自分である」ということを自覚しながら音楽をやってきた身ではあって。みんなにもそれを理解してもらう──それは“カイカ”の話にも繋がるんですけど、「手放す」ということでもあって。自分のアイデアとかひらめきはたくさんあって──明日出かけようとか、それだけでもいいんですけど、鬱屈した世界だからこそ、そういう一縷の光を大事にして生きていってほしいなと思っているんです。
みきまりあ このアルバムでいちばん自分と向き合った曲でした。自分と向き合うことには苦しさもあって、歌詞も結構悩んだんですよ。でも、悩んだりわからないって思ってることを全部ストレートに書いちゃおうと思って。この曲はそっちのほうがいいかなって思ったんですよね。《不器用な僕だから ここに立って歌っている》って、恥ずかしくてこの曲じゃなかったら絶対書いてないです(笑)。
──さっきツミキさんは歌詞で「答えを出す」と仰ってましたが、このアルバムの曲では、みきまりあさんが仰ったような考えていることをそのまま書く、みたいな要素が増えた気がします。
ツミキ 人に寄り添った楽曲を書くというテーマにも通じていて──人は基本的には悩むものだし、僕も考えごとが好きで、ずっと考えてるんですけど、その考えの過程を見せることって、まりあも言ってたようにちょっとこっ恥ずかしいじゃないですか。そういう弱い部分、柔らかい部分を自分なりに提示することを無意識的にやってたかもしれないです。そこを見せることで、自分も人間であることを聴き手にわかってもらえるかもしれないって。
曲を自分ごとにしてほしいというのはずっと念頭にあって、それはサウンドデザインも含めてそうなんですよね。ノーメロのサウンドって、みんなでスピーカーでパーティーしながら聴くようなものではないかもしれないですけど、ひとりでヘッドホンで聴いて、いろんなことを思うのには向いてるのかなって。基本的にはそういう人たちに聴いてほしい楽曲を作ろうと思ってます。
──そういった音楽のパワーを感じたアルバムでした。今、おふたりにとって音楽とはどういうものでしょうか?
ツミキ このアルバムを制作する中で、自分ができることはなんなんだろうって考えたんですけど、音楽で世界を少しだけよくすることをテーマにしたいというところがありまして。たったひとりの自分が生み出したMP3が、誰かひとりのちょっとした世界を変えるみたいな、そのドラマというか、美しさを大事にしたいと思ってます。
みきまりあ 自分にとって音楽は──世界に唯一貢献できる術というか(笑)。自分が貢献できることって音楽くらいしかない、歌うことくらいしかないって思ってるので、そのためだったら多少の痛みくらい全然犠牲にできるものだという感覚ですね。
ヘア&メイク=HARUNA KAWABATA (PARiS)
スタイリング=Taiji Goto
NOMELON NOLEMONのインタビューは、発売中の『ROCKIN'ON JAPAN』4月号にも掲載!