【インタビュー】3人が踏み出す新たな一歩──揺るぎない覚悟のEP『アブノーマルライフハック』

【インタビュー】3人が踏み出す新たな一歩──揺るぎない覚悟のEP『アブノーマルライフハック』

なんて強い意志に貫かれた作品だろう。最新EP『アブノーマルライフハック』はレトロリロンが新たなフェーズに突入したことを明確に感じさせる作品だ。7月にベースの飯沼一暁が脱退し、現体制での新たなスタート。まるでこの先に向けての狼煙のような、決意と覚悟を込めたEPである。ソングライターである涼音(Vo・AG)の言葉は音楽への衝動を取り戻すかのように尖っていて、それがレトロリロン特有のグルーヴとなっていく。音の一つひとつ、言葉の一文字にまで、意味と意志とが滲むこの濃密な作品を、彼らは一体どんな思いで完成させたのか。インタビュー=杉浦美恵 撮影=アミタ・マリ

自分の人生とバンドの人生がすごく一体化したと感じていて、一心同体じゃないですけど、自分の選択や決断がバンドに関わるようになってきた(miri)

──『アブノーマルライフハック』、涼音さんの覚悟と決意が詰まった作品になったと感じました。涼音 もともと、このEPの構想自体は1月にアルバム『コレクションアローン』を出した頃にはすでにありまして。というのも、今年の抱負みたいなものをどこかで話した際に、「今年は我儘に生きる」と──言葉そのままの「わがまま」ではなくて、自分がやりたいこととか叶えたいと思っていることに対して、責任を持って、よりちゃんと踏み出していきたいと思ったんですよね。であればそれを形にすべきかなと。それでまず『アブノーマルライフハック』というタイトルから決めて。──このタイトルにはどんな思いが込められていますか?涼音 僕のこの仕事においての考え方とか決断のスピードとかは、周りの人から見たらちょっと異常だと思われているのかなと思う瞬間が多々あって。僕から見たら普通のことが、他者から見たら普通ではないみたいなことがよくあるんですよね。ちょっと傲慢かもしれませんが、そんな自分の生き方が誰かにとってヒントになる可能性があるかもしれないなと。それで、異常な生活、異常な人生においての知恵みたいな意味を込めてこのタイトルにしました。──涼音さんは自身の異常性をどんな場面で感じるんですか?涼音 それはふたりに聞いたほうがいいかも(笑)。miri(Key) (笑)。涼音はバンドとして大きな決断をするときとかも、直感で決断しているように見えるけど、「これしかない」という結論が見えているからこそ、いろんなリスクを考えつつ、その場で瞬時に「これ」って指差せるんですよね。そういう瞬発力みたいなものがもしかしたら異常に見えるのかも。永山タイキ(Dr) たとえば、1000人に違う意見を言われようが、自分の意見を突き通すみたいなところが涼音には昔からある。その意志の強さが異常だと思われたりするんじゃないかな(笑)。──生き方として貫き通す、その揺るがない思いが今回のEPに詰まっている気がします。バンドとしてのターニングポイントに、この作品を出しておきたいという気持ちもあった?涼音 そうですね。メンバーの脱退もあり、そんな中応援してくださってる方の不安みたいなものは当然感じていたし、このバンドについては僕が「辞める」と言った時点で終わってしまうので、そういう責任というのはすごくあって。バンドを一度解散させるかみたいなことも頭をよぎったんですけど、そもそもそういうことじゃないよなと。であれば、このバンドで僕がどういうことを考えて曲を書いているのかということを、コンポーザーとして、作詞家として、ちゃんと書いておきたいなというのはありました。──改めて自分自身と向き合うような。涼音 誰といても、ひとりでいても、食事をしていても、寝ていても、バンドのことを考えない時間は一切ないんです。僕にはプライベートな時間はないし、なくていい。ずっと音楽のことを考えています。そういう意味では、今回のこの5曲は自分の現在地。振り返ったときに「このときこんなことを考えてたな」っていう、日記みたいなものですね。永山 今回のEPを何度も聴いて思うのは、涼音の色がすごく濃い作品になったなということ。制作での自分の仕事は、涼音が考えていることを受け取って、それをより濃くするためのアレンジだったりするんですけど、それが、自分自身の問題とか、このままでいいのかみたいな悩みにも重なるところがあって、僕もすごく吸収できるものがあった。だからみんながこれを聴いてどう感じるのか、今すごく楽しみです。miri これができあがって、今、自分の人生とバンドの人生がすごく一体化したと感じていて。一心同体じゃないですけど、自分の選択や決断がバンドに関わるようになってきたというか、そういう場面が増えてきたんですよね。だからこそ、自分のバンドへの姿勢もすごく大事だと思えるようになってきて。──演奏にそれが出ている気がします。miri そうですね。演奏にも自身の成長がそのまま出るような、その瞬間をすごく感じるEPだと思います。──まずリード曲となる“AMANO-JAKU?”から、言葉の強さ、歌声の強さに引き込まれました。涼音 ありがとうございます。4月にバンドがZepp ツアーを発表して、そのあと飯沼の脱退があって。バンドにもチームにもファンの皆さんにも「どうなっちゃうんだろう」という雰囲気が漂って、ああ、自分の作るものに圧倒的安心感みたいなものは担保できてなかったんだなあと思ったんですよね。この先どうなってしまうんだろうと思わせてしまった自分たちにがっかりしたし、一度仕切り直したいという気持ちがありました。なので、どういうことが起ころうとも、今バンドはこういう気持ちで進んでいるというのを書いておきたかったんですよね。永山 バンドとしてすごく変化する時期でもあったし、涼音の突き通そうとする意志の大切さを感じたんです。それを曲からも感じ取って。なのでビートも勢いのあるドラムンベースみたいなものになったのかなって思います。すごく疾走感がありながら、しっかりとメロディや歌詞を支えられるビート感になりました。miri メロディが強くて言葉も強くて、それが合わさってもっと攻撃力が高まっているのを私も感じました。だからこそ、それを後押しできるような、その強さに負けないような演奏を私もしないとなって。──特にラストの《もし全てを捧げることになっても/否、それすら己の宿命とする》という歌詞なんて、今まっすぐにこれを歌えるバンドっていないんじゃないかと思います。涼音 確かに。今振り返ると、すごいこと書いてますね(笑)。──でもそれをポップソングとして成立させられるのがレトロリロンで。涼音 確かに日常会話ではなかなか出てこない言葉だと思うんですけど、でもこの職業だからこそ言える、形にできるというのはありますね。自分は内側にどんどん溜め込んでしまう性格ではあるので、こういうところでバランスを取ってるんだろうなあ(笑)。──タイトルには、“AMANO-JAKU?”と、「?」がつきますよね。これ、インディーズ時代の“Restart?”を思い出したりもしました。涼音 ああ、そうですね。あの曲を書いたときも仕切り直すタイミングで、バンドの新しいスタートを切ろうという意味で書いたものでした。そのときは「リスタート」と言っても、過去がゼロになるわけではないという意味も込めて「?」をつけたんですけど、今回も同じような心情ですね。僕は「天邪鬼」とか「逆張り」とか言われることが多いんですけど、みんなと逆に行きたいとか、そういうことではなくて。「みんな」っていうとすごい抽象的ですけど、マジョリティでいることに理由と意味を持ってない人のほうが多いと感じるんです。僕は少数派でも、なぜそうなのかという理由がちゃんと自分の中にあって、意志を持って生きていきたいと思うんですよね。天邪鬼とか少数派って言われるのはちょっとバカにされているような感じもする。だから、それって本当にそう?みたいな。そういう意味も込めてこのタイトルにしました。──その次に続く“エゴ”は既発曲ですが、この曲からも強い決意を感じました。《心の動くままに生きて》とか《成し遂げるまで/辞めなけりゃいい》という歌詞が耳に刺さります。心地よいグルーヴに、こうした思いをしっかり乗せられているのもレトロリロンならではで。涼音 アニメのタイアップの話をいただいて、主人公のキャラクターと自分の中にあるものの共通点を感じて、それを同居させたというか。先に書いたのは“エゴ”ではあるものの、意外と“AMANO-JAKU?”へのアンサーにもなっている。なんか兄弟っぽい曲になったなと思いました。──途中の《傷つけずに生きてみたい/裏切らずに生きてみたい》とループする、非常にカオスな展開にも引き込まれました。涼音 エレキギターがない環境でいかにロックサウンドにできるかということに挑戦したかったんです。主人公が抱える、他者には言えない生きづらさみたいな、内側のぐちゃぐちゃしてるところを表現したくて。miri そのぐちゃぐちゃ感みたいなものをシンセの音で表現しています。その音が歌詞と合わさってより楽曲を大きくできたし、そういう精神性みたいな部分を楽器で表現できたのもよかったです。永山 その部分、実はレトロリロンでもいちばん激しいかもしれないですね。シンプルではあるんですけど、キックは2足で踏むくらいのビートを片足で踏んでて。もう集中するしかないっていう感じで、すごくカオスで、好きなパートです。
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