6月にスタートする『UVERworld LIVE TOUR 2014』の序盤戦と日程を織り交ぜるように、そして、あたかも7/5の京セラドーム公演目がけて邁進するかのようにスケジュールされた、小バコ規模の『UVERworld LIVE TOUR 2014 Warm-UP Gig』。初日は、そのシリーズの中でも比較的サイズの大きなSHIBUYA-AXだが、ライヴ終盤にTAKUYA∞(Vocal & Programming)は「AXは最後だけど、ツアーはこれから始まるんだよね。始まるって言っても、この後、アルバムを作る作業が残っていて、月末に隣のeggman。そこから本当にツアーが始まる気がしていて。AXでやりたい、っていうだけのライヴでした」と語っていた。この5月末にクローズ予定となっているSHIBUYA-AXでの、思い出の中にも熱い反骨精神が脈打ち、「今、ここ」に生きる事を刻み付けるような圧巻ライヴだ。以下本文では、少々の演奏曲表記などネタバレを含むので、今後の日程に参加予定の方は閲覧にご注意を。
今春、遂に正式メンバーとしてUVERworldに加入した誠果(Manipulator & Sax.)がオープニング・トラックをキックするなり、激しく沸き返るフロアである。初っ端から汗が吹き出すような熱気だ。TAKUYA∞の「ウオオオオーッ!!」というハイトーンのシャウトに導かれ、6人の爆走が、そしてシンガロングとOIコールが入り乱れての熱狂が始まる。どこがウォームアップなんだと感じてしまうほどの全力疾走であり、TAKUYA∞はライヴ途中に「スポーツみたいだな、最っ高だ!」と汗まみれの笑顔で告げていたが、そうなのだ。ウォームアップとは本来、手加減して臨むべきものではなく、身体の全細胞と意識を叩き起こし、いつでもフルスロットルの状態に持ち込むことが出来るコンディションを整えるためのものである。今回も、まるで一流のアスリートのように、プロフェッショナルな佇まいで一期一会の戦いに挑む、そんなUVERworldの姿があった。
今回のステージでハイライトを担っていたナンバーは、昨年からライヴで披露されてはいるが未だ音源化されていない“7日目の決意”だった。限りある命を見据えた上で、ひたすらにポジティヴなメッセージが形を成してゆく名曲である。彼らはその曲を、まるでSHIBUYA-AXへの置き土産とするかのように披露した。最新にして最強形態のUVERworldが、AXでの最後のステージという物語と見事にシンクロしていて、美しい光景を描き出していたのだ。ライヴ中は必ずしもシリアスな場面だけではなくて、真太郎(Dr.)が「そんなことより気になるのが、隣の代々木体育館で卓球大会が……。どんなピンポンをピンポンしてるのか……」と語ってTAKUYA∞に「最後のAX、そのMCでいいですか? 取りあえず脱げ、おまえ……靴下じゃねえよ」とツッコまれていたり、「いきなり2番歌っちまった〜っ!!」と爆笑の中で仕切り直す一幕があったりもしたのだが、それでもなぜ、UVERworldのパフォーマンスには激しいエモーションが渦巻き続けて胸を揺さぶるのか、その理由を考えていた。
UVERworldの魅力が、ロックもソウルもジャズもトロピカル・グルーヴもダンサブルなエレクトロも混ぜ込んだ音楽そのものにあるのは、間違いない。ときに、彰(G./Programming)、信人(Ba.)、TAKUYA∞、誠果、克哉(G.)と横一線に並んでめくるめくサウンドをぶっ放し煽り立てる姿は、ライヴの熱狂を象徴するシーンでもあるだろう。ただ、自由に解釈し自由に楽しむことが出来る音楽の素晴らしさを提供する一方で、TAKUYA∞は楽曲に落とし込んだ感情、その下地となった経験を、丁寧に言語化して届けて来る。今回も、先輩に作って貰ったという衣装を指して「自分の大切な日には、そういう気持ちが籠った服しか着ないって決めたんだ」「みんなだってそうだろ? 顔がかっこいいだけのやつに満足できないから、ここにいるんだろ? 歌が上手いだけのやつに頑張れって言われても頑張れそうにないから、ここにいるんだろ?」と告げて互いを高め合う友愛のナンバー“23ワード”に繋げたり、今年に入って頻繁に他アーティストのライヴに足を運んでいるという話題(既に48アーティストを観ており、年内に100アーティスト以上を目標にしているそうだ)では、「もっと音楽を好きになりたいし、いろんな人に憧れていたいし」「みんなも、憧れている人っている? でも、その背中は、追い抜くためにあるんだよ。いつか抜いてやる、そういう気持ちで、今日のライヴを観てください」と語って、かつてそういう思いを抱かせてくれたというバンド=tickの“志 -kokorozashi-”をカヴァーしたりした。
「誰だよ! 8年前のAXが売り切れなかったからって、UVERworldもうダメだな、って言った馬鹿なオッサンはよ!!」とまくしたて、鬼気迫るヴォルテージで楽曲へと向かうTAKUYA∞。最後のAX公演という舞台ですら、湿っぽいどころか燃え滾る反骨精神の拠り所にしてしまうのである。「音楽を広げる、っていう行為が好きなんだよ。喜びも、悔しさも、絆もくれるから」と語るように、思いを言語化する作業はバンド活動のモチベーションそのものでもあるのだ。メジャー・デビューから間もなく9年に至ろうというUVERworldが、今日も強い衝動を抱え込んだ名曲を連発しているのは、音楽と併せて、その衝動の形を物語として言語化する技術も磨き続けているからではないだろうか。近年の楽曲ほどライヴのレパートリーを担って来たはずなのに、「たぶん、6、7枚目(『LIFE 6 SENSE』)、『THE ONE』」の曲とかやらなくなる。カッコ良すぎるアルバム」と語られる新作も着々と制作が進んでいるようなので、完成が楽しみだ。今後の展開にたっぷりと期待させつつ、完全燃焼する見事なステージだった。小バコもホールもドームも、あらゆる会場で、最新モードのツアーを楽しみ尽くして欲しい。(小池宏和)
UVERworld@SHIBUAY-AX
2014.05.01