モーモールルギャバン@Zepp Tokyo

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これぞモーモールルギャバン! 「モーモーのライヴをしばらく観られない」「あの3人の雄姿もしばらく見納め」という哀しみと寂しさを、一瞬で吹き飛ばすような痛快なアクト。それでいて、いつか必ずや訪れる「復活の時」への期待感を最大限に煽るようなアクトだった。モーモールルギャバンの“ライヴ活動休止前”ラスト・ワンマンツアー 2014「“乱れ打ち。”からの“打止め!”」の24本目となる、Zepp Tokyo公演である。まだ大阪・石巻の2公演を残しているのでセットリストや演出の詳細については割愛させていただくが、喜びも哀しみもエロも極彩色の音に詰め込んで解き放つモーモールルギャバンの美学がステージから透けて見えた、最高の一夜だった。
モーモールルギャバン@Zepp Tokyo
暗転と同時にステージに現れたのはユコ・カティ(Key・Vo・銅鑼)。その鮮烈なクラヴィネットの音色に、ド派手な衣装で決めたT-マルガリータ(B)の極太なベース音が重なり、最後に現れたゲイリー・ビッチェ(Dr・Vo)の爆裂ビートが合体! 濁流のごときアンサンブルでフロアを圧倒すると、いきなり「セックス!」「パンティー!」のコール&レスポンスを導き血気盛んなオーディエンスと堅い共闘関係を結んでいく3人である。その後も、1stアルバム収録曲から最新シングル曲までキャリア総括のセットリストをまさにノンストップで「乱れ打」ち、場内のテンションを青天井に上昇させていく凄まじさ。まるでギターリフのごとき殺傷力抜群の音を鍵盤で弾き鳴らすユコ・カティ、ブリブリゴリゴリという形容がぴったりのグラマラスなベース音を操るT-マルガリータ、鬼気迫るドラミングで地面を震わせていくゲイリー・ビッチェ……と、まるで楽器と一体化したような3人の壮絶かつしなやかなプレイ・スタイルは相当なものだが、それに一糸乱れぬコールとダンスで応えるオーディエンスの熱気もハンパない。3人の鳴らす音に聴き手の快楽を無尽蔵に引き上げる破格のパワーが備わっているのは最早言うまでもないけれど、そこにライヴ活動休止前の「騒ぎ納め」感がプラスされ、もう序盤から会場全体がすごいことになっていた。
モーモールルギャバン@Zepp Tokyo
モーモールルギャバン@Zepp Tokyo
バックドロップが掲げられたステージ上には、メンバー3人が立つミニ・ステージの他、背後と両脇にお立ち台を設置。曲によって女性ダンサーが登場し、煌びやかで卑猥でアングラ・ムード漂うモーモールルギャバンの音世界を視覚的にも表現していく趣向である。“パンティー泥棒の唄”では、ドラムセットの脇に設けられたお立ち台にゲイリー・ビッチェが立ち、その眩しい裸体を見せつけながら歌い踊るシーンも。他にも様々な演出が随所に施されていたが、ひたすら人力に頼ったパフォーマンスが展開されていた。で、それがとても良かった。ジャズもファンクもパンクも歌謡曲も一緒くたに呑み込んで、未知なるカオスの只中へとまっしぐらに突き進むモーモールルギャバンの音楽。その生き物のようにうねるサウンドを最大限に盛り立てるのは、生身の人間のパフォーマンスに他ならないと思うからだ。この日のアクトでは、そんな彼らの本質を突いた演出が全編にわたって貫かれていて、とにかく嬉しかった。
モーモールルギャバン@Zepp Tokyo
「“乱れ打ち。”ツアーも全国23か所回ってきたわけですよ。野口くんも同じ数だけ爆死させられてきたわけですよ。なので今日は野口くんの近況報告でもしようかなと思います」と、お馴染みT-マルガリータの口上が行われたのは“野口、久津川で爆死”。以前の口上では離婚したことをバラされていた野口くん、実はこの度晴れて再婚したということで、「野口、東京で再婚してたー! そして只今プラハに新婚旅行中ー!」(T-マルガリータ)、「プラハ行ってる野口のバカー!」(ゲイリー・ビッチェ)の絶叫とともにユコ・カティの銅鑼が高らかに鳴り響き、フロアの熱気は最高潮へと到達する。その後も繊細なアンサンブルが紡がれるスロー・チューンを交えながら、泣き笑いのグラデーションをクッキリと浮かび上がらせていく3人。6月25日にリリース予定のミニ・アルバム『モーモールル・℃・ギャバーノ』に収録される新曲“最後の青春パンク”では、テンポ・チェンジを繰り返す複雑なメロディ展開の上で、甘酸っぱさとリビドー全開のモーモー流・青春パンクを爽やかにブチかましてくれた。そして、目くるめくパフォーマンスとともにアッパー・チューンを連打したところで、必殺曲“ユキちゃん”へ。この日一番の激震がフロアを襲い、Zepp Tokyoの天井を突き破らんばかりの巨大な祝祭感が渦巻く圧巻のフィナーレへと雪崩れ込んでいった。勿論、その後に場内を「パンティー」コールで満たした「あの曲」の馬鹿馬鹿しいほどの狂騒感も最高だった。
モーモールルギャバン@Zepp Tokyo
最後はオーディエンスとの記念撮影を行い大団円となった2時間半のアクト。その間、最後までライヴ活動休止に深く言及するようなMCは一切なかった。でも、それでこそモーモールルギャバンなんだと思う。正直、この日のライヴを観るまで「敢えてライヴ活動休止する必要はないのでは?」と筆者は思っていた。音を鳴らすことの楽しさをあらゆる方面にわたって解き放つ彼らの音楽はライヴという場でこそ映えるし、ライヴで得たエネルギーこそが新たな曲を生み出す最大の原動力になっていると思っていたから。でも、それは少し違うということが、この日のライヴを観て分かった。3人それぞれの強烈なキャラクター性によって見えづらくなっている部分があるが、モーモーのライヴの血沸き肉躍るような高揚感を支えているのは、何より無軌道な展開を見せながらポップかつラジカルに突き抜けていく曲の力、メロディの力なのだ。その力を再び追求するために、一度ライヴという場を離れて曲作りに専念する時間が、3人には絶対的に必要なんだと思う。余計なMCは一切なし(「こんなに沢山の人が集まってくれて僕とマルガリータは胸いっぱい、ユコ・カティはおっぱいいっぱい!」とか下らない発言は多々あったけど……笑)、とにかく曲という曲を「乱れ打ち」したこの日のライヴが何よりそれを雄弁に物語っていたし、そんな彼らなら、また最強の新曲を携えて私たちの元に帰ってきてくれるはずだ。そんな手応えを胸に、熱狂に彩られたZepp Tokyoを後にした筆者であった。(齋藤美穂)
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