「今日はめちゃくちゃにしに来たんや! 『京都大作戦』何回も来てるやつおると思うけど……『初期の頃はようダイヴしてんけどなあ』ってやつを、今日は引きずり出したるさかいな! ライヴはやる方も見る方も気持ちひとつや!」。このフェスの「ヘッドライナー」であり「主催者」でもある10-FEET・TAKUMAの、祝祭感と切迫感が入り混じったような言葉に、メイン・ステージ「源氏ノ舞台」満員の2万人のオーディエンスがうおおおっと雄叫びのような大歓声で応える――。今年で7回目の開催を迎えた、10-FEET主催のロック・フェス「京都大作戦」。「地元発信のロック・フェス」でもあり「熱い絆と信頼関係で結ばれた盟友アーティストたちが集う場所」でもあるこのフェスが、同時に「観客のひとりひとりがフェスを作っている」ということを揺るぎないメッセージとして打ち出し、最高の磁場を作っている空間である、ということは、一度でもこのフェスに参加したことがあればご存知のことと思う。が、7回目を数える「京都大作戦」の1日目が「円熟」とは対極の、弾けんばかりの初期衝動に満ちた空気感に満ちていたのは他でもない、「その先」を目指して荒ぶる10-FEETの、TAKUMA自身の魂そのものだった。
「1年間楽しみにしてたかー!」のコールの主はもちろん、MCを務めるMOBSTYLES・田原104洋。昨年同様、メイン・ステージ「源氏ノ舞台」1日8アクト、サブ・ステージ「牛若ノ舞台」7アクト、さらにストリートボール・リーグ「SOMECITY OSAKA」のエキシビション・マッチなどが行われるインドアの「鞍馬ノ間」の計3ステージ構成で開催される「京都大作戦2014」。曇天からポツポツと雨が落ち、やがて霧雨が降り出す……というあいにくのコンディションも吹っ飛ばすほどの熱気が、1日目開幕の時点で会場中に満ちあふれている。やがて、開演時間:11時の1分前には「源氏ノ舞台」両サイドのヴィジョンに「60」の文字が浮かび、出演アーティストの名前が次々に表示されていく。そして、10、9、8……と全員でカウントダウン、1日目いよいよ開幕!
「早朝ロック、いきますか!」のJESSE(Vo・G)のコールでいきなり満場のクラップを巻き起こしたトップバッター・RIZEは、サポート・ギター=下畑"Rio"良介を加えた4人で“Get the Mic”“Why I'm Me”連射! さらにハンドマイク・スタイルのレッチリ編成で畳み掛けた新曲での、JESSEの鬼神の如きテンション! “カミナリ”でステージに観客を上げて歌わせた後、逆にJESSEがステージを降りてモッシュピットにダイヴ! 「ロック・バンドでした!」(JESSE)、「さあ1日目、いってみよー!」(KenKen)のコールが、「京都大作戦2014」開幕の何よりの号砲として響いた。
続いては、実は今回が初出演のHAWAIIAN6! 「京都! すげえ景色だな!」とHATANO(Dr)が感慨深げに呼びかけ、「反戦の歌!」と紹介した“A CROSS OF SADNESS”ではYUTA(G・Vo)のドラマチックなメロディと爆走ビートが会場を高揚の彼方へと煽っていく。祝祭感のカタマリのような“MAGIC”が高らかなシンガロングの輪を生み出し、「東北のことを思い浮かべながら、京都でまた会えたらと思います!」とラストに披露した“Brand New Dawn”が雄大な風景を描き出していった。
そして、“The Revelation”からラウド・ロックの高純度結晶のようなサウンドと闘争心全開で会場を震撼させたのはcoldrain! Masato(Vo)の「周りはみんな味方だから、助け合って! あと、俺が言うのも何だけど、ケガをしないように。骨は折るな!」(去年「京都大作戦」会場で右足を骨折、直後のライヴをキャンセルしていた)のMCでフィールドを爆笑と歓声で沸かせつつ、最新ミニアルバム『Until The End』の“Aware And Awake”から“The War Is On”“Final Destination”までドロップ! 「いつか俺らも地元で、今日みたいなフェスをしたいと思います! その時は10-FEET絶対出てもらいますからね!」のMasatoのコールが熱く響き渡る頃には、雨はすっかり止んでいた。
さらに、「京都大作戦」第1回から毎年出演のdustbox! 最新アルバム『Care Package』収録の“Riot”からキラー・アンセム“Try My Luck”まで全開放して、広大な会場を3ピース・アンサンブルの疾走感とポジティヴィティあふれるメロディで多幸感の彼方へ導いてみせる。途中、ピンクアフロのカツラ姿の10-FEET・KOUICHIが登場、“Jupiter”をファルセットで歌い上げたところからそのまま“Jupiter”“Tomorrow”“Right Now”の圧巻のクライマックスへ!
「あれ、晴れちゃったんじゃないの? みんな,青春してますか? 忘れちゃったやつも、踊ろうぜ!」という言葉の主は、続いて登場したNAMBA69・難波章浩! 最新シングル『MELODIC PUNKS NOT DEAD!!!』の“TRUE ROMANCE”や“PUNK ROCK THROUGH THE NIGHT”などを立て続けに放射! 3ピース・パンクの極致のような強靭なヴァイタリティに満ちたサウンドと歌が、熱いクラップを巻き起こしていく。「戦争は政治の失敗だと思う。そうならないように、俺たちがマジで働きかけていかないと」「音楽が理想を歌って何が悪いんだって思う」と熱く呼びかけたアクトの最後、「京都の3人組が、ハイスタのカバーしてたよね?」の言葉とともに会場のテンションが一気に沸騰、TAKUMAが加わってHi-STANDARDの名曲“STAY GOLD”炸裂! 割れんばかりのシンガロングが大地を揺らしていった。一方、サブ・ステージ「牛若ノ舞台」も熱い! GOOD4NOTHINGがあっさり入場規制の大盛況へと叩き込んでいたのをはじめ、Dizzy Sunfist/SCOTLAND GIRL/SKA FREAKS/T.C.L/PAN……と新鋭から強豪まで入り乱れての熱狂空間! ラストを飾ったアルカラは“踊れやフリーダ”“チクショー”“おうさまと機関車”などカオスの限りを凝縮、晴れやかな暴動の如き狂騒感を描き出していた。
「源氏ノ舞台」には2008年・2011年に続き3年ぶり3回目の出演・マキシマム ザ ホルモンが! 満場の観客に向けて、前回出演時のフィナーレを飾った“恋のメガラバ”をいきなり最初にぶっ放し、お楽しみはこれからだ!とばかりに“便所サンダルダンス”から最新アルバム『予襲復讐』モードへ突入! “ビューティー殺シアム”に続いて“my girl”では「あり得へん夢を見してくれ! お前たち、膣になってくれ!」のダイスケはん(Vo)の声に応えて、2万人が一斉に「膣ジャンプ」を繰り広げる壮観な光景が出現。“メス豚のケツにビンタ(キックも)”のファスト&ラウドな熱狂でフィールドの温度をがんがん上げた後、ラストは“恋のスペルマ”! 圧倒的なエネルギーと底知れぬ獰猛さに満ちたホルモンの「今」が露になった名演だった。
1日目のトリ前には湘南乃風が登場! “純恋歌”のピアノのイントロが響き、♪目を閉じ……と歌い始めたHAN-KUNの声が「……てたら終わっちゃうよ!」と言ったところで4人が登場、“Earthquake”であたり一面タオルがぶん回る! ♪揺らせ〜揺らせ〜京都〜と歌詞をアレンジしてさらに会場の温度を上げたところに、“Born to be WILD”のハードなレゲエのビートが轟き、“黄金魂”に熱いシンガロングが沸き上がる! 「世の中どんなに難しいことが起こっていようが、俺たちの気持ちはひとつ! 大切なやつのこと、大切だと思って、ストレートに心を伝えて、見えねえ何かにつながって、一歩一歩前に進むだけ! 俺は『京都大作戦』にそれを教えてもらってる」という若旦那の言葉から“Joker”、さらに“曖歌”“睡蓮花”で「源氏ノ舞台」一丸の大合唱!
そしてヘッドライナー=10-FEET! 2万人が高々とタオルを掲げて待ち受ける中、TAKUMA/NAOKI/KOUICHIの3人が円陣を組み、“JUNGLES”からさらに“VIBES BY VIBES”“focus”へ……メロコア/スカ/レゲエ/ミクスチャー/ダンス・ロックなど多彩な要素が乱反射し合いながら無上の爆発力を生み出していく10-FEETの音楽世界が、目の前でスリリングに、かつダイナミックに展開されていく。“hammer ska”のフレーズを ♪この一瞬だけ、京都大作戦で奇跡を起こす勇気を与えておくれ〜とアレンジしてみせた後、「ライヴ、やんのも観んのも、どんどん慣れていくな」とオーディエンスに挑むように真っ向から語りかけるTAKUMA。「ライヴ観る機会も増えていって、ライヴハウスも増えて、CDも簡単に作れるようになって。免疫がどんどんおかしなことになってきよる。俺はもっと感動したい! 俺はもっと生きたい! 『京都大作戦』7回目や! 慣れなくないねん! 1日目も2日目も、めっちゃめちゃにしたいんや! でもやっぱり、一生懸命やるしかない。最後まで一生懸命やります。よろしく!」。そんな切実なTAKUMAの言葉に、満場のオーディエンスから惜しみない拍手喝采が巻き起こっていく。
6月まで行われていたワンマン・ツアーでも、「音楽も、ありがとうも、ごめんなさいも、人間はアホやから慣れていきよる」「初めてライヴやった時は上手いも下手もなくぶっ飛んだのに、今はペース配分とかも覚えてしまった」と煩悶する胸中を打ち明けていたTAKUMA。「『今しかない』と思わないと、『京都大作戦』もでけへんねん!」……盟友アーティストが一堂に会し、参加するお客さんが自らゴミを拾う『京都大作戦』の「全員参加型」の空気感を生み出している原動力が、「音楽を表現すること」「音楽とともに生き続けていくこと」に対するTAKUMAはじめ10-FEETの切実な想いであることが、この日のステージからもリアルに伝わってきた。大阪籠球会のパフォーマンスとEXILEダンスをフィーチャーしての“Freedom”。湘南乃風が乱入してフィールドをタオル風力発電所状態に変えた“2%”。ドクター長谷川のトランペットとともに“4REST”で力強いクラップとシンガロングを噴き上がらせて……本編終了。鳴り止まないアンコールの手拍子に応えて再び登場した10-FEET。「束になってかかってこーい!」というTAKUMAの絶叫から“その向こうへ”へ! さらに♪僕らは来年も会えますか〜 と歌詞を変えて歌ってみせた“風”、そして“RIVER”で大団円! 全編クライマックス級の熱気に満ちた1日目が終了、2日目はどんな名場面が飛び出すのか? 「京都大作戦2014~束になってかかってきな祭!~」、2日目も京都からレポートします。(高橋智樹)