木村カエラ@横浜アリーナ

木村カエラ@横浜アリーナ
「今日はお祭りです! 10周年を祝うライヴ、そしてみんなに感謝の気持ちを伝えるライヴ。一回しかないライヴだから、大切にしたいと思っています。みんなが楽しめるように、たくさんの準備をしてきたので。みなさん最後まで楽しんでいってください!」と晴れやかな声で呼びかける木村カエラに応えて、満場の横浜アリーナに熱い拍手と歓喜が湧き起こる……木村カエラのメジャー・デビュー10周年記念ライヴとして、10月25日・26日の2日間にわたってここ神奈川・横浜アリーナにて開催された、「KAELA presents GO!GO! KAELAND 2014 -10years anniversary-」。それぞれ「Rockin' ZOO」「Poppin' PARK」とサブタイトルを冠した通り、両日とも大きく選曲を変えながら(2日間ともに演奏されたのは“Butterfly”と最新シングル曲“TODAY IS A NEW DAY”のみ)、木村カエラがこの10年間で描き出してきたロック・サイドとポップ・サイドを2日間のステージに結晶させた意欲的なアニバーサリー・ライヴ。その2日目となるこの日の「Poppin' PARK」は、いきなり“Butterfly”“リルラ リルハ”“Ring a Ding Dong”とカラフルな楽曲群を織り重ねた序盤からWアンコールの“happiness!!!”まで約2時間半、横浜アリーナが圧倒的な祝祭感に包まれた、至上のステージだった。

木村カエラ@横浜アリーナ
横浜アリーナを横長に使って設置した巨大なステージの両サイドには、カエラの髪型をかたどったオブジェが。そのオブジェの顔の部分と、その2つのオブジェの間を虹をかけるように結ぶアーチ、さらにステージ後方にはLEDスクリーンが設けられているほか、遊園地を模した電飾、舞台袖のヴィジョンなど、オーディエンスを1秒たりとも飽きさせない!という想いがステージ・セッティングだけでも伝わってきたこの日のアクト。「ベース:よーちゃん(4106xxx)、キーボード:テリー(中村圭作)、ドラム:キャシー(柏倉隆史)、ギター:しのっぴ(渡邊忍)、ギター:アイゴンさん(會田茂一)」と後のMCで親しみをこめて紹介していた鉄壁のバンド・メンバーとともに、1曲1曲カエラ・マスターピースを目映く力強く、巨大な空間へと解き放っていくカエラ。日本の音楽シーンに唯一無二の色彩感と多幸感を注ぎ込んできたその歌が、カエラ自身の万感の想いとともに広がって、オーディエンスをクラップとシンガロングの嵐へと導いていく。

「今日はポップの日だからね、いつもみたいな毒っ気はないですよ(笑)。でも、やさしい曲ばっかりじゃ、ちょっとつまらないので……激しい曲もやりたいと思います!」と“L.drunk”から“Ground Control”“Twinkle”とパワフルなロック・ナンバーを畳み掛け、会場を刻一刻と高揚の極みへと導いていく。「今日は知らない曲があっても楽しめるように全部準備してるから、任せてちょ!」と観客に語りかけたところに続けて「ちょ・ちょ・ちょ、ちょ・ちょ・ちょ……」とカエラが軽快に三三七拍子を口ずさむと、それに合わせてアイゴン&しのっぴのギター隊がリズムを刻んで「こんな感じでやってまーす」とカエラが笑顔を見せたり、ライヴ後半にはしのっぴ作曲の“チョコレート”をリクエストする声が観客から飛んだのに応えて、カエラがしのっぴに“チョコレート”を歌うように振って、♪もやもや〜と歌いかけたしのっぴの「すっごいもやもや」ぶりにカエラが膝から崩れるくらいにウケまくったり……といった場面の数々からも、長い時間をともに歩みその音楽世界を作り上げてきたメンバーだからこそのパートナーシップが窺えるし、それがこの日のカエラの開放感と躍動感あふれる歌とパフォーマンスをしっかりと支えていることが確かに伝わってきた。

木村カエラ@横浜アリーナ
「じゃあ次は、みんなで踊れる曲を……この曲は知ってると思う。“OLE!OH!”っていうの。振り、知ってる? こうやるの!」とカエラ自ら「振付指導」して満場のダンス空間を生み出した“OLE!OH!”。「今回の映像すごくない? 10周年ということで、今まで10年間で私のミュージック・ビデオに関わってくれた監督さんたちが、ほぼ全員参加してくれたんだよ。しのっぴ流に言うと『夢しかない』っていう感じ(笑)」とカエラ自身が語っていた華やかな映像効果、そして“Jasper”や“A winter fairy is melting a snowman”など随所でダンサーが登場するなど丹念に練り上げられたステージングなど、カエラの溌剌とした歌のポップ感を無限増幅してみせていた演出の数々。そんな中、「次は、私がこの10年間の中で、『この曲は自分の中でいちばん胸キュンなんじゃないか』っていう曲をチョイスしたんだけど……」という言葉とともに流れ込んだ「胸アツゾーン」での“sweetie”“Snowdome”“キミニアイタイ”“What ever are you looking for?”でひときわ伸びやかに響くカエラの歌声が、会場を心地好く震わせていく。

「ここからは元気いっぱい、暴れますか。暴れたい?」と“STARs”から雪崩れ込んだ終盤も“マミレル”“Make my day!”“BANZAI”と10年間の道程を彩ってきたポップ・ナンバーを連射、最後は♪みんなの笑顔が見たい!と歌詞をアレンジしての“Magic Music”で一面のクラップとジャンプを巻き起こして本編終了。アンコール冒頭で最新シングル“TODAY IS A NEW DAY”を披露したところで「ここで、みんなにお知らせがあります。12月17日、ニューアルバムが出ます! タイトルは、『MIETA』!」――今回の横アリ2Days前にアナウンスされた「5年ぶりライヴハウス・ツアー開催」に続いての重大発表に、場内は割れんばかりの拍手と歓声に包まれていく。「答えがわかった瞬間の、パッと開けた瞬間をアルバムにしたくて、作ってます」とアルバムについて語っていたカエラ。昨年には自身のプライベートレーベル『ELA』を設立、シンガーとして/表現者としてさらなる前進への決意を胸に刻んだ「今」の開放的かつアグレッシヴなモードが、その言葉からも、続けて披露した新曲“sonic manic”のハイパーなエレクトロ感からもリアルに滲んでくる。

木村カエラ@横浜アリーナ
さらに“Super girl”で横アリをでっかく揺らしたところでアンコール終了――かと思いきや、鳴り止まないアンコールの手拍子に応えて、バンド・メンバーとともに再び舞台に登場したカエラ。「10周年記念のライヴを開催するにあたって、本当にたくさんの人が関わってくれました」と、今回のステージ実現のために奔走してくれたスタッフへの感謝を伝えていく。「私は小さい時から歌が本当に大好きで、本当に歌を歌ってステージに立つのが夢だった」という自らの原点から「私は歌がないと生きていけない。歌がないと、気持ちを全部吐き出せない、そういう人間です。だから、応援してくれてるみんながいないと、私はここにはいられないし。本当に感謝しています」という「今」の気持ちまで、ひと言ひと言大切に語る言葉に、満場のオーディエンスが静かに聞き入っている。そして、10年間ずっと一緒に音楽を奏でてきたメンバー(中村は6年なので、カエラいわく「四捨五入して10年」)について語る。「やっぱりライヴって、発表会と一緒だから、緊張するんだよね。リハーサルで練習をしてる時に、不安になってきて――独りぼっちになった気持ちになったんですよ。でも、日々の中で嫌なことがあったりとか、辛いことがあったりした時に、みんなの音を聴くと、自分がすごく幸せになれるの……あ、『泣かない』って思っていたけど、泣いちゃうかもしれない」と思わず声を震わせるカエラ。「私の10年でもあるけど、私の大切なバンド・メンバーの10年でもあるので。みんなにも拍手を贈ってもらっていいですか?」という言葉に、高らかな拍手が湧き起こっていく。

「10年を迎えたら、いい意味で吹っ切れて。もう、何でもやれる感じがするの。最強説?(笑)」と「これから」へのあふれる期待感を覗かせ、「だから、“TODAY IS A NEW DAY”のような素敵な曲ができて、本当に幸せです。これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!」と語った彼女が最後に歌い上げたのは“happiness!!!”。「みんなに、たくさんの、小さな小さな幸せが訪れますように」という彼女の真っ直ぐな祈りそのもののような歌声が、どこまでも温かなヴァイブとともに響き渡って……「KAELA presents GO!GO! KAELAND 2014 -10years anniversary-」の2日間は終了。すべての音が止んだ後、舞台前面に一列に並んで手を取り合う6人。オーディエンスに向け一礼する前、オフマイクで「みんな、本当にどうもありがとうございました!!」と声の限りに叫び上げた瞬間、感激を抑えきれないカエラの瞳から大粒の涙がこぼれていく。日本屈指のポップ・アイコンとして巨大なスケールの名演を展開してみせた彼女の、あふれる感謝の想いに身を任せて号泣する無防備な姿に、アリーナからも客席からも惜しみない拍手喝采が降り注いでいった。アルバム『MIETA』は12月17日リリース、計17都市21公演に及ぶライヴハウス・ツアーは来年3月スタート。デビュー10年を迎えたカエラのさらなる「進化形」への期待に胸躍らされる、最高の一夜だった。(高橋智樹)

■セットリスト

01.Butterfly
02.リルラ リルハ
03.Ring a Ding Dong
04.L.drunk
05.Ground Control
06.Twinkle
07.OLE!OH!
08.Jasper
09.リリアン
10.You
11.ワニと小鳥
12.A winter fairy is melting a snowman
13.sweetie
14.Snowdome
15.キミニアイタイ
16.What ever are you looking for?
17.STARs
18.マミレル
19.Make my day!
20.BANZAI
21.Magic Music

(encore)
22.TODAY IS A NEW DAY
23.sonic manic(新曲)
24.Super girl

(encore2)
25.happiness!!!
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