オーケー・ゴー @ 赤坂BLITZ

今年デビュー15周年を迎えたオーケー・ゴーが、いかにして彼らだけの「ユートピア」を築き上げてきたのか、その成果が露になった、最高に楽しく、そして感動的なステージだった。4年ぶりのニュー・アルバム『ハングリー・ゴースツ』を引っさげての今回の来日は、恐らく彼らの15年のキャリアにおいて日本での人気が最も高まっている時期のそれで、この日の公演も2月17日のTSUTAYA O-EASTのソールドアウトを受けての追加公演だ。“I Won't Let You Down”をはじめユニークなミュージック・ビデオの数々で注目を集めてきた彼らだが、その現在の勢いをいかにライヴに反映できるか、その点を確認したいと思った。

様々な映画から「OK」と「GO」の台詞のシーンを集めてコラージュした映像で幕を開けたこの日のショウ、1曲目は“Upside Down & Inside Out”なのだが、なんと1曲目から早くも紙吹雪がバサバサ舞い散りまくる。先に書いてしまうが、この日のライヴ中アンコールまで含めて計8回(いや、9回だったかも)もの紙吹雪特効ポイントがあった。やりすぎである。しかしそのやりすぎ感が、楽器を演奏して歌うだけではなく、ライヴの空間それ自体を手作りで特別なものにしたいという気持ちが、彼らのPV作りの理念にも通じるオーケー・ゴーらしい演出なのだ。「コンバンワートキオ!オーケーゴーデス。ボクノニホンゴ、ヘタクソ、バカアメリカジン!」とダミアン、そこから“You're So Damn Hot”、“The Writing's On the Wal”と彼ららしい掴みOKなパワポ・ナンバーが連打され、会場の空気を瞬時に温めたところで、いきなり通訳を介した質疑応答コーナーが始まる。「高校生の女の子は好き?」「日本のトイレを経験してどうだった?」とファンからの質問に、ダミアンは「高校生の女の子……えーっと適切な状況下であれば大好きです。あとダンスが上手い子たち、PVでも踊ってくれてありがとう」、ティムも「日本のトイレは(気持ち良さげな顔で)……ハァ~!って感じ」と応じる。会場の空気はますます和み、ステージとフロアの意識がどんどん近づいていく。DIYというかDIO(Do It Ourself)なのがオーケー・ゴーのライヴで、ここまでアーティストとオーディエンスが一体となって「場」を作り上げていくライヴも稀だし、このあたりにSNS時代と絶妙にリンクしたオーケー・ゴーの本質を垣間見ることができる。

メロウな“I Want You So Bad I Can't Breathe”、カウベルも使用してのパーカッシヴでファンキーな“Obsession”でモード・チェンジした後、オーディエンスの声を即興サンプリングしての恒例の“There's a Fire”へ。ダミアンいわく「70年代のディスコ・サンプリング・マシーン」でオーディエンスの足踏み、手拍子、ため息等の音を次々にその場で収録し、ループさせていく。「僕らはいろんな国でこうやってオーディエンスから音をもらってるんだけど、他の国では皆ウォオオ!って叫んじゃうんだよね。ありがとう、日本のみんなの協力は素晴らしいよ」とダミアンも言っていたが、本当に見事な一体感で完璧なサンプリングが出来上がっていた。続く“Last Leaf”はダミアンが客席に降り、フロア中央のスタンドマイクでオーディエンスに囲まれながらのアコギ弾き語り。2コーラス目では歌う向きを変え、上手、下手の両方のオーディエンスにちゃんと自分の顔が見えるようにしていたのが、これまた凄くオーケー・ゴーらしい気遣いだった。

そんな“Last Leaf”終わりで再び質疑応答コーナーへ。

Q「フジ・ロックはどう?」ティム「世界一のフェスティヴァル!」

Q「もしバンドをやっていなかったら何をしていた?」ティム「多分泣いてた」ダミアン「ブレイクダンスのチャンピオン」アンディ「フルタイムでオタクやってたと思うよ」

アンディのオタク発言で上手い具合にオチがついたところでラウド・ギターで再び空気を一新させる“Get Over It”へ。続く“I'm Not Through”はミニマムなエレクトロが徐々にゴージャスなソウルと錯綜していくコラージュ感覚が楽しい。後半はよりロック色の強いナンバーが並ぶ。フォーキーなサイケがたゆたう“Needing/Getting”、分厚いハードリフがうなりを上げる“Do What You Want ”、そしてブルージーでインプロっぽい展開にぞくぞくさせられる“Skyscrapers”と、パワー・ポップなオーケー・ゴーの軽やかなイメージの裏にしっかり根付いたオルタナ魂があらぶる展開だ。本編ラストは“I Won't Let You Down”。「この曲を日本でやるのは凄く特別な気分なんだ。日本のみんなに協力してもらってあの素晴らしいミュージック・ビデオを作ることができたからね。本当にありがとう」とダミアン。オーケー・ゴーの「DIO精神」を象徴するこのナンバーに、オーディエンスが見事にリズムパターンをなぞった手拍子で次々と参加していく様が最高だった。

アンコールになっても紙吹雪は止まるところを知らない。もう最後のほうなんて紙吹雪マシーンが壊れてしまったものだから、スタッフ総出で手掴みでバンバン紙吹雪をフロアに投げつけまくっていて、そこまでするかと大笑いだったが、もう一度繰り返すがそこまでするのがオーケー・ゴーなのだ。ラストは再びパワポの楽しさが溢れ返る“Here It Goes Again”で万感のフィニッシュ!他のライヴとは少し違う、ライヴの作り手として参加した充足感が味わえる幕切れだった。(粉川しの)

1. Upside Down & Inside Out
2. You're So Damn Hot
3. The Writing's On the Wall
4. Turn Up the Radio
5. I Want You So Bad I Can't Breathe
6. Obsession
7. This Too Shall Pass
8. There's a Fire
9. Last Leaf
10. Get Over It
11. I'm Not Through
12. Needing/Getting
13. Do What You Want
14. Skyscrapers
15. I Won't Let You Down

En1. Fake It
En2. White Knuckles
En3. The One Moment
En4. Here It Goes Again
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