「始まりましたね、ストレイテナーの大忘年会！」――そう最初のMCで告げたホリエアツシ（Vo・G・Piano）の表情には、早くも充実感が滲んでいた。最新シングル『DAY TO DAY』を携えた全国ツアーのファイナルにして、年内最後のワンマンとなる新木場スタジオコースト公演。今年は約3年ぶりのフルアルバム『Behind The Scene』の全国ツアー、初のライヴベスト盤リリース、「2015年エモーション三部作」と位置付けたシングル3枚のリリースと、精力的な活動をこなしてきたストレイテナーだが、そんな1年間の勢いのままに、大きな進化＆深化を遂げたサウンドがダイナミックに爆発した一夜だった。

壮大なSEが鳴り響く中、盛大なクラップに迎えられて現れた4人。まずは“覚星”の柔らかなアンサンブルをゆっくり届け、会場を眩い光の世界へと誘っていく。日向秀和（B）のダビーなベースラインで幕を開けた“The World Record”以降は、じわじわテンションを上げていく展開に。とは言え、単にアグレッシヴな演奏が続くわけではないのがニクいところ。“Super Magical Illusion”“DISCOGRAPHY”で満場のジャンプとクラップを導いたと思いきや、“The Place Has No Name”で切ないエモーションを爆発させ、“SAD AND BEAUTIFUL WORLD”でソリッドなアンサンブルを走らせる――という、「押し」と「引き」の絶妙なバランスによって、熱気と冷気が共存する至高の音世界へとごく自然に上り詰めていくのであった。

その後も「2015年エモーション三部作」の楽曲を軸に、最新AL『Behind The Scene』の楽曲や往年の人気曲を配したセットリストを展開していく。1曲ごとに濃密な空気を生み出していくのだが、やはり特筆すべきは三部作の楽曲群である。終わりなき人生の旅路を謳う3拍子のバラード“FREE ROAD”、平和への祈りをアコースティックの音像で届ける“NO ～命の跡に咲いた花～”。明るく軽やかなサウンドが弾む“Curtain Falls”も含め、どの楽曲も眩い輝きを放っていることに驚かされる。それを色にたとえるなら、「黄金」というべきか。清冽で硬質なサウンドスタイルから、かつては「青」のイメージが強かったストレイテナーの音楽。その色は、グッと芳醇さを増した最新ALによって「マーブル模様」に変化したと筆者なりに捉えていたのだが、そこに更なる高純度の輝きが加わった印象である。祈りであり、希望であり、風格とも取れる色。長いキャリアの末に、ここまで多彩な色を操るバンドに成長したことを窺わせる名演の数々だったし、聴き手を一人残らず包み込むような、開放的で温もり溢れるムードが印象的だった。

この日はトークも絶好調。今回のツアーの思い出話だけでなく、親交のあるDragon AshのKjやレキシに関する話も飛び出して、話が脱線するたびに「もうこの話は止めよう」とOJこと大山純（G）が締めるお決まりの展開が随所で繰り広げられていく。ちなみに序盤には、「街はクリスマスモードですね」というナカヤマシンペイ（Dr）の言葉にオーディエンスが無反応だったことから、「（お客さんにとっては）ハッピークリスマスじゃないみたいですね」（日向）→「じゃあ今日だけはクリスマスのことを忘れさせてやるよ！」（ナカヤマ）→「いや、ちょいちょい思い出させることになると思うよ」（ホリエ）→「あ、そっか。クリスマスの話で墓穴掘った！」（ナカヤマ）という流れで、次のあの曲の演奏をフライング気味に予告してしまう場面も。そんな奔放なトークすらも彼らの現在の充実度を物語っているように思えたし、その後にプレイされた“GHOST OF CHRISTMAS PAST”のスペシャルな響きが最高だったことは言うまでもない。

「また来年も会いましょう！」というホリエの最後の挨拶からアンコールの“Melodic Storm”で大団円を迎えるまで、全26曲2時間半に及んだアクト。その成功を証明するように、メンバーがステージを去った後も何分間にもわたって盛大な拍手が鳴り止むことはなかった。（齋藤美穂）

●セットリスト
01. 覚星
02. The World Record
03. Super Magical Illusion
04. DISCOGRAPHY
05. The Place Has No Name
06. SAD AND BEAUTIFUL WORLD
07. FREE ROAD
08. Yeti
09. GHOST OF CHRISTMAS PAST
10. シンクロ
11. Curtain Falls
12. Sunny Suicide
13. 泳ぐ鳥
14. Man-like Creatures
15. 78-0
16. VANISH
17. 瞬きをしない猫
18. From Noon Till Dawn
19. TENDER
20. NO ～命の跡に咲いた花～
21. 彩雲
22. DAY TO DAY
23. 冬の太陽
24. TRAIN
（encore）
25. ROCKSTEADY
26. Melodic Storm