イヤーズ&イヤーズ @ 赤坂BLITZ

イヤーズ&イヤーズ @ 赤坂BLITZ - pic by Kazumichi Kokeipic by Kazumichi Kokei
約1年前に、ジェイムス・ベイやウルフ・アリス、ロウリーにシャミールといった新進気鋭の才能たちを抑え、英BBCの「Sound of 2015」に選出されたロンドン出身バンド=イヤーズ&イヤーズ。グラストンベリーやレディングといった大型フェスのステージを踏み、7月にリリースしたデビュー・アルバム『コミュニオン』(日本盤は12月にリリース)は見事全英トップに輝いた。昨年末にかけて本国や北米、EU諸国をツアーしてきた後、今回の初来日ツアーは東京・赤坂BLITZ(2/8)と大阪・梅田CLUB QUATTRO(2/9)というスケジュールだ。その初日の模様をレポートしたい。

ディスクロージャーのSEが鳴り止んだところに、マイキー(Syn、Ba、etc.)とエムリ(Syn、Perc、etc.)、そしてサポート・ドラマーのディランが登場し、エレクトロニックなシーケンスが沸々と立ち上がって最後に姿を見せるのはオリー(Vo)。彼のナイーヴで美しい、揺らめくような歌声で届けられるのは、アルバム同様のオープニング曲“Foundation”である。続く“Take Shelter”で、オリーは股を開きウネウネと上体を揺らすダンスを披露。一方でエムリは、手弾きのシンセ・フレーズやパッドのパーカッションにより、抑制を効かせながらもダンス性を増幅させてゆく。

「コンバンハー、トーキョー!」と高らかに挨拶し、前日にファンからプレゼントされたというTシャツを見せびらかすオリー。アルバムに触れたときには、ジェイミー・エックス・エックスのクールな批評精神や、ジェイムス・ブレイクの内省的なエレクトロ・ソウル、そしてディスクロージャーの若くして洗練されたダンス・ポップを彷彿とさせるところがあると思っていたけれど、こうしてライヴに触れてみると、イヤーズ&イヤーズは決してそれだけではないバンドであることがよく分かる。特にオリーが曲間に見せる喜びようは、可愛らしいと言ってもいいほど無邪気で人懐っこいものだ。

マイキーがエレクトリック・ベースを抱えてグルーヴを加える“Worship”の後には、「君、どこからきたの? えっ、ドイツから来たの!? じゃあ日本の人!!」とオーディエンスと言葉を交わし、再び集中力を引き出して演奏へと向かおうとするオリーからも、楽曲に込めた美意識を大切にしようとする姿勢が窺える。でも楽しくて仕方がない、みたいな、どうにか感情を自制しようとするところがまた人間臭い愛嬌として目に映るのである。そんなオリーがキーボードでピアノの旋律を奏でながらの“Memo”の後には、マイキーがフロアタムを打ち鳴らして上昇線を描く“Ties”で「So good! Thank you! 日本では、上手くいってるみたいだね!」とやはりご機嫌な笑顔を覗かせてしまうのだった。

そして、ブリット・アウォーズにもノミネートされたヒット・チューン“King”。オーディエンスのシンガロングが熱を増幅させる中、いよいよオリーはステージ下に降りて練り歩きながら歌ってしまう。彼の美声は、ところどころでまだ力強さに欠けてしまうところもあったけれど、再びピアノの旋律でフックを浮かび上がらせながらの“Eyes Shut”は、イヤーズ&イヤーズの深い印象を残す楽曲のしなやかさが際立っていた。

『コミュニオン』の成功の最初の足がかりとなったシングル曲“Real”で、オーディエンスの歌声が高揚感をサポートしつつ、本編はクライマックスを迎える。「アリガトー! ダイスキー!」と飛び跳ねながら両腕を掲げ、ファンから貰ったうちわで扇ぎながら満足げな表情を見せるオリーである。さらにアンコールの催促に応えると、“Desire”を披露しようとするところで、この曲の日本版ビデオを監修・出演したダンサー/コレオグラファーの菅原小春がスペシャル・ゲストとして招かれる。このエモーショナルな楽曲を、彼女は切れ味鋭い独創的なダンスで視覚化し、めちゃくちゃカッコよかった。初にして、来日公演という機会の魅力が凝縮されたステージであった。(小池宏和)


〈SETLIST〉
01. Foundation
02. Take Shelter
03. Shine
04. Worship
05. Gold
06. Memo
07. Ties
08. King
09. Eyes Shut
10. Without
11. Border
12. Real

En1. Desire
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