ダイナソー.Jr @ 渋谷O-EAST

ステージ向かって左のJ・マスシスの後ろには、マーシャルのアンプが8つ積み重ねられている。そして1曲目“ALMOST READY”から予想通りの爆音、超爆音のディストーション・ギターが耳をつんざき、鼓膜をビリビリと刺激する。

はっきり言って、3ピース・バンドならではのサウンドのバランス感覚とか、ヴォーカル・マイクの音量調整とか、彼らは全く考えていない。吐き出される音の9割方はJの爆音ギター音であって、もそもそと歌うJの歌声はノイズの煙幕の向こう側で不明瞭極まりない。1曲終わる度に神経質なほどチューニングを調整しながら、爆音に次ぐ爆音、ノイズに次ぐノイズを淡々と撒き散らしていくJ。しかし、これでこそダイナソー.Jrなのである。「殺伐系」の呼び名に恥じない彼らの真骨頂である。

キャリアは既に20年を超え、USオルタナティヴの大御所と言っていい存在であるダイナソー.Jr。ニルヴァーナやソニック・ユースと肩を並べるバンドだが、彼らのサウンドはいい意味で進化しない。遥か昔からそのプリミティヴな爆音とニヒルと達観を孕んで乾いたメロディは不変である。そう、乾いていてそっけない、むしろオーディエンスを爆音でもって突き飛ばすようなアンチ・フレンドリーなサウンドが彼らの基本だ。

しかし、“FEEL THE PAIN”や“THE WAGON”、“FREAK SCENE”といったナンバーではフロアのあちこちで奇声を張り上げながら笑顔で互いの身体をぶつけ合い、モッシュに突入するオーディエンスが続出。そこには確かにカタルシスがあって、飄々たるたたずまいのステージ上の彼らとフロアの私達を繋いでいく。コール・アンド・レスポンスも合唱も一切生まない、最高に殺伐とした「共犯関係」がそこにはあった。(粉川しの)
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