ヒトリエ@新木場STUDIO COAST

ヒトリエ@新木場STUDIO COAST - all pics by 西槇太一all pics by 西槇太一
「ワンマンツアーのファイナルをやりに、東京に戻ってきました。今日ここにいるみんなと一緒に、笑って泣いて、踊り狂って、我を忘れて帰れるようにしたいと思います!」。万感の想いとともに呼びかけるwowaka(Vo・G)の言葉に、新木場STUDIO COAST満場のオーディエンスが大歓声で応える――。2月24日にリリースされた2ndアルバム『DEEPER』のリリースツアーとして、3月から全国13公演にわたって行われてきた「ヒトリエ 全国ワンマンツアー2016 『one-Me Tour "DEEP/SEEK"』」もいよいよこの日がツアーファイナル。『DEEPER』を通して格段に磨きのかかったバンドの表現力によって、ヒトリエのハイパーな楽曲構成とその中で息づくセンチメントが、フロア狭しとばかりのスケールと胸震わせるリアリティをもって鳴り渡っていく、至上のステージだった。
ヒトリエ@新木場STUDIO COAST
wowakaが速射砲の如く撃ち放つ言葉の数々と、wowaka&シノダ(G・Cho)のWギター/イガラシ(B)のスラップベース/ゆーまお(Dr)の性急なドラミングがデッドヒートを繰り広げながら狂騒感の扉を大きく開け放つ、『DEEPER』のオープニングナンバー“GO BACK TO VENUSFORT”でライヴがスタートした時点から、これまでのヒトリエよりもひと回りもふた回りもパワフルなロック感を放射していたヒトリエ。4つ打ちビートとポストロック的なギターフレーズが絡み合う“シャッタードール”のダンスビートがフロアをでっかく揺らし、「今日はみなさんの全身、肉体が木っ端微塵になるぐらい踊っていただきます!」と絶叫するシノダのハイブリッドな音色が奏でる“Swipe, Shrink”の幾何学的な旋律が交感神経を刺激するようにミステリアスに響いていく――。
ヒトリエ@新木場STUDIO COAST
序盤から『DEEPER』曲で積極的に攻めまくる展開からも、『DEEPER』に懸ける4人の自信が伝わってくるし、アルバム『WONDER and WONDER』以降の『モノクロノ・エントランス』とシングル2作『シャッタードール』『ワンミーツハー』を通しての「バンドアンサンブル虎の穴」とも言うべき鍛錬の日々を経て圧巻の熱量と色彩感を獲得したヒトリエの現在地を、その音と歌が何より明快に物語っていた。「人いっぱいじゃね? みんな俺らを観に来てるんだよね。ヤバくね?」とフロアを見回すシノダ、「とてもケンカじゃ勝てない人数ですね(笑)。でも、今回ケンカじゃございませんから。我々も武器を持っておりますから。もうね、皆殺しにしちゃいますから!」と意気揚々と語りかける言葉に、ひときわ熱い拍手喝采が湧き上がっていく。
ヒトリエ@新木場STUDIO COAST
本編17曲の中に『DEEPER』全10曲をすべて盛り込みつつ、『WONDER and WONDER』の“なぜなぜ”“インパーフェクション”、インディーズ時代の“アンチテーゼ・ジャンクガール”“踊るマネキン、唄う阿呆”などを織り重ねる中で、ヒトリエサウンドの「今」のタイトさと訴求力を自ら証明するようなアグレッシヴなアクトを見せてくれた4人。もともとwowakaが己の自我と自意識を結晶させるところから始まったヒトリエの楽曲が、バンドとしての肉体性を得ていくことによって、より開放的なダイナミズムを内包するようになり、4人のアンサンブルをさらに激しく躍動させていく――そんなポップ拡大再生産的な無限のサイクルを描いてきたヒトリエの歩みを象徴するようなアクトに、思わず胸が熱くなった。
ヒトリエ@新木場STUDIO COAST
「結成して4年半ぐらい経ったんですけど。バンドを続けるっていうことは、楽しいことばかりではなくて。それを味わうためにいろんな悔しさだったり、苦しさだったり、泣きたくなるようなことも数多く経験してきて。でも、それを振り払ってくれるような喜びがあるんですよね。その一番濃い瞬間が、まさにこのライヴっていう場所で」とwowakaが語る。「僕の本当に個人的な、自分勝手に始めたことが、こんなに多くの人の何かになることができてるんだなって、ライヴをしてると実感して。本当の意味で、いつもあなたたちに生かされています。いつもありがとうございます」――静かに語りかけるwowakaの言葉に、惜しみない拍手と歓声が広がっていった。

「ライヴしてると幸せだけど、いつまで経っても足りないんだよね。僕らはもっともっと素敵な場所に行けると思うんだよ。だから――行こう!」。そんなwowakaのコールから “カラノワレモノ”へ流れ込み、さらなるクライマックスへと昇り詰めていったライヴ本編は、レーザー光線飛び交う“トーキーダンス”で怒濤の大団円! アンコールでは「本当はやるつもりじゃなかったんだけど、急遽僕がわがままを言って……」というwowakaの言葉に続けて披露したのは、ボカロ時代の楽曲“プリズムキューブ”。この4年間で大きな進歩を遂げたヒトリエの歩みを噛み締めるようなひとときが、ツアーファイナルの熱気を美しく彩っていた。

さらに、今回のSTUDIO COASTワンマンをヒトリエ初のライヴ映像作品として8月17日にリリースすること、ヒトリエ主催のツーマン企画「bAnd」の第4弾を下北沢GARDENで開催(対バン相手は後日発表)することをシノダが立て続けに発表。フロアの温度がさらに高まったところで、アッパー&カラフルなポップ感と覚醒感あふれる新曲“ハグレノカラー”、そして“センスレス・ワンダー”を連射、大充実のツアーを最高の形で締め括ったヒトリエ。彼らが切り開く「これから」の風景への期待感をいやが上にもかき立ててくれるアクトだった。(高橋智樹)
ヒトリエ@新木場STUDIO COAST
●セットリスト
1.GO BACK TO VENUSFORT
2.シャッタードール
3.Swipe, Shrink
4.アンチテーゼ・ジャンクガール
5.ワンミーツハー
6.サークル サークル
7.バスタブと夢遊
8.Inaikara
9.なぜなぜ
10.フユノ
11.カラノワレモノ
12.輪郭
13.後天症のバックビート
14.踊るマネキン、唄う阿呆
15.MIRROR
16.インパーフェクション
17.トーキーダンス

(Encore)
18.プリズムキューブ
19.ハグレノカラー ※新曲
20.センスレス・ワンダー
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