プライマル・スクリーム @ 新木場スタジオコースト

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プライマル・スクリーム @ 新木場スタジオコースト
アンコールの“Come Together”の圧倒的な多幸感の中で、ぼんやりとプライマルの初来日公演のことを思い出していた。1990年渋谷クアトロ。無残の一言だった。ヘタクソで未熟なのはまだいい。客を舐めたようなやる気のない演奏態度に滅茶苦茶腹が立った。そのとき、まさか彼らが21世紀まで生き残り、英国ロックを代表するような存在になるとは想像もつかなかったし、これほど長く濃密なつきあいが続くとは考えもしなかった。ふてくされたような態度でダラダラと歌っていたちんぴらバンドが、26年たった今、こんなにも素晴らしく、瑞々しく、しかもプライマルらしさを1ミリも失っていないライブがやれるとは、まったく信じられない。

プライマルらしさとは何だろう。それは煎じ詰めて言うと「ロックンロール」ということになる。この日のライブでも、ロックンロールの妖しさ、危うさ、際どさ、いい加減さ、スリル、色気、エネルギー、飛び跳ねる高揚感、深海の魚のようにうねるダウナーな酩酊感、チープでキッチュなフェイク感、といったものが渾然一体となって迫ってくる。そいつがたまらなくかっこいい。一時かなりソリッドに、タイトになっていたバンド・サウンドはこの日は適度にルーズに、荒々しくなっていて、ボビー・ギレスピーのヘロヘロでヨレヨレのヴォーカルと見事に調和する。張り詰めた緊張感というより、この微妙なテンションの緩さがプライマルのロックンロールであり、だからこそ彼らは愛される。

プライマル・スクリーム @ 新木場スタジオコースト
彼らの表現は、「変わらなきゃいけないところ」と、「変わっちゃいけないところ」が絶妙なバランスで存在している。時代やシーンの変化に応じて変えていく部分と、一転不変の幹の部分。ハウスをやっても、ストーンズ風ロックをやっていても、ギターポップをやっても、ポスト・パンクをやっても、ゴリゴリのガレージ・パンクをやっても、彼らの根っこにあるロックンロールのエッセンスは変わらない。この日は最新作『カオスモシス』収録曲と、初期からの定番ヒットが交互に登場するような構成だったが、1曲ごとにテンポもリズムもサウンドもがらりと変わるのに、違和感が全然ない。どこを切っても不安定で危うくて際どいプライマルらしさが横溢している。古いヒット曲だけでなく、新しい曲にも等しくヴィヴィッドな反応があり、歓声があがるのは、彼らが未だ現役第一線にいる証拠だ。

流れるように進行した全15曲。アンコールは1曲だけとあっさりしたものだったが、堪能した。この日会場を埋め尽くした超満員の客は、ほとんどが満足して帰路についたはずだ。お金をいただいた以上のものを必ず返す。その姿勢が、26年前ともっとも変わった部分だろう。それを確認できた夜。長生きしていれば、こういういいこともあります。(小野島大)

〈SETLIST〉
01. Movin' On Up
02. Where the Light Gets In
03. Jailbird
04. Accelerator
05. (Feeling Like a) Demon Again
06. Shoot Speed/Kill Light
07. (I'm Gonna) Cry Myself Blind
08. Higher Than the Sun
09. Trippin’ on Your Love
10. 100% or Nothing
11. Swastika Eyes
12. Loaded
13. Country Girl
14. Rocks

En1. Come Together
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