それこそ18:36、「東京最終日! いっちょ盛り上がっていくぞー!」とピースサインを掲げながら光村が叫び、満員のフロアがとびっきりのピースサインで返した開演の瞬間から、4人が手をつないで深々と頭を下げたアンコール最後の瞬間まで、その「光り輝くブルース」とか「流線型のカオス」とでも言うべき独特のロックが吹き荒れる、この上なくエモーショナルなステージだった。
ロックンロールの艶と妖気と色気をたっぷりまとって、空も裂けよとばかりに叫び歌う光村。そこに、エッジの利いたコードから“THE BUNGY”の暴走カントリーのようなフレーズまで弾きこなす超絶ギタリスト・古村と、時にスラップ奏法なども駆使しながらアンサンブルの底でしなやかにうねるベース・坂倉が絡み合い、若かりし頃のデイヴ・グロールみたいな対馬のオルタナ・ドラミングがNICOのサウンドに圧倒的な加速力を与えていく。「やばいっすよ! 何がって……汗が」と思わず光村がこぼすくらい、“バニーガールとダニーボーイ”“そのTAXI, 160km/h”までの序盤戦で、すでにBLITZのオーディエンスの間には異様な熱気と歓声が渦巻いている。相変わらず女子の甲高い声が目立つが、フロアには男率がかなり高くなってきている気がする。半々とまでは行かないが、見たところ4割くらいは男子だ。
野球ネタが歌詞に盛り込まれた“泥んこドビー”では「シーズンは終わりましたが、WBCが残ってます! でも『サムライジャパン』って(笑)……みんな、応援してくれよな!」と、誰の代弁者だかよくわからない呼びかけを嬉々としてかます光村。その横でスピーカーから勢いよくジャンプをかまし、“夜の果て”ではバイオリン奏法のフレーズから泣きのソロまで多彩なプレイを披露する古村。対馬は爆裂ドラミングと同時に光村との歌のハモリをばっちり決めてみせたかと思うと、「小学校の先生やってる友達から色紙もらって、そこに生徒の寄せ書きで、≪『NARUTO』の曲は変わってしまいましたが、あきらめないで新曲作ってください≫と書いてあった話」を披露するし、ロックンロールの暗黒をえぐるようなベース・プレイを聴かせる坂倉はMCで「ツアー中、座骨神経痛の治療のために接骨院に通って、ついでに鍼を打ってもらったらポイントカードがたまった話」でキッズを沸かせてみせる。「バンドの魔力と快楽に身を捧げているロックンロール信奉者」の部分と「カッコつけたり構えたりせず、オーディエンスと真っ向からコミュニケートしようとする4人の真摯な青年」の部分とが、危ういバランスで共存しているのも、NICOの面白いところだ。
特に光村。細身の身体をくねらせながら悶えるように歌い弾き叫び回る姿はロック・スターの濃厚な匂いに満ちているし、もっと気難しそうに黙ってたりスカしたりしてても(いや、むしろそのほうが)アーティスティックなムードはいくらでも演出できるはずだ。が、光村は違う。終盤「ここからノンストップだぞー!」という流れで、「あなたとコンビに?」「ファミリーマート!」となぜかCMネタでコール&レスポンス。そのまま「やっぱりイナバだ! 100人乗っても?」「大丈夫!」とか「ドンドンドン、ドンキー?」「ドンキホーテ!」とか「ガスター?」「10!」と続けてしまう。それでも「ロック感台無し!」ではなく、その渾身の「みんなとわかりあいたい!」という想いが、鋭利なロックと一体になってダイレクトに飛び込んでくるのが心地好い。
“Broken Youth”で真っ白に弾けるようなサウンドを炸裂させて、本編終了。アンコールで再び登場した光村、「みんな熱すぎて、マイクケーブル焦げたよ!」と笑ってみせる。「まだ僕ら、ひと皮もふた皮もむけてパワーアップしていくんで!」という決意表明とともに、最後は1音1音噛み締めるように“エトランジェ”をじっくりと響かせる。彼らのロックはもっと大きく、強く咲き誇っていくに違いない――という確かな手応えを感じさせるステージだった。(高橋智樹)
1.(My Sweet)Eden
2.GANIMATA GIRL
3.バニーガールとダニーボーイ
4.そのTAXI, 160km/h
5.SIMON SAID
6.image training
7.泥んこドビー
8.夜の果て
9.葵
10.雲空の悪魔
11.anytime, anywhere
12.アボカド
13.B.C.G
14.有言不実行成仏
15.THE BUNGY
16.Broken Youth
アンコール
17.武家諸法度
18.エトランジェ