医者に行ったら、原因不明なので治しようがないと言われた。よって、昨日のSHIBUYA-AXの1日目も、ライブ中盤で声がやばくなり、「ああ、もうダメかも……」と思った時に、フロアがウワーッ! と盛り上がって、そのパワーを浴びたらいきなりどわーっと声が出るようになって、最後まで乗り切れた。というようなことを、MCで言っていました。
で、その奇跡の復活状態のまま2日目へ突入したらしく、終始絶好調。そして、本当に楽しそう。ギター・鍵盤・ベース・ドラム・自分の、最小限な形にバンドを再編成し、ソリッドでシンプルで、そしてとにかくあっついファンク・モードに突入したのは、去年の秋からだが、その時の「初期衝動爆発!」みたいなノリと勢いが、そのまんま続いている。1年前はやや戸惑い気味だったフロアも、今ではすっかり「わー!」とか「きゃー!」とか「ひゃー!」とか叫びながらアガりまくっている。「熱狂」とか「熱闘」とか「熱血」とか、とにかく「熱」という字を使って表したくなる空気。音そのものも、大変にグルーヴィーでえらく気持ちいい。
ただし。そこまでやっても、これほどまでに以前とはモードを変えても、なんだか、どうしても、100%ファンキーにはなりきれない。熱狂して、何もかも忘れて楽しんで、みたいにはいかない。どっかこう、さめている。バンドには何の問題もない。そうだ。原因は本人だ。
何がファンキーじゃないって、どんなにハジけて歌ってもどっかしら哀愁や空虚さを漂わせてしまう声がファンキーじゃない。実はとても緻密で精密な美しさを持つ、乱暴さとは無縁なメロディーがファンキーじゃない。何よりも、理屈っぽすぎるし、暗すぎるし、辛気くさすぎるし、くどくど説明や描写をしすぎる歌詞が、もう、まったくもってファンキーじゃない。
そして、その、ファンキーなのにファンキーじゃなさが、僕がスガシカオの音楽をどうしようもなく好きな理由である。1年前、このはっちゃけライブ・モードに突入した時、そのうち辛気くささがなくなっちゃうかも、とちょっと心配したのですが、杞憂でした。どっちも比例してパワーアップしていた。最新アルバムの“コノユビトマレ”が僕は異様なまでに好きで、人を励まし元気づけなぐさめ奮い立たせる歌として、2008年現在この日本において他の追随を許さない最高峰の曲だと思っているのだが(歌詞を引用したいんだけどJASRACがめんどくさいので、興味のある方は「Uta-net」とかで検索してください)、これを15曲目でぶちかまされた時は、なんだかもう、泣きそうでした。
なお、アンコール1回終わって、ひっこんで、客電点いて、「これをもちまして本日の公演は――」ってアナウンスが流れても、誰も帰らず手拍子も止まらず「シカオ」コールが巻き起こり、急遽2度目のアンコールに。“このところちょっと”をプレイする5人も、フロアも、みんな笑顔でした。(兵庫慎司)
1.Thank You
2.NOBODY KNOWS
3.フォノスコープ
4.黄金の月
5.13階のエレベーター
6.GO! GO!
7.たとえば朝のバス停で
8.Fire(カヴァー曲)
9.バナナの国の黄色い戦争
10.Call my name
11.FUNKAHOLiC
12.SWEET BABY
13.19才
14.リンゴジュース
15.コノユビトマレ
16.奇跡
17.イジメテミタイ
18.午後のパレード
アンコール
19.session〜ストーリー
アンコール2
20.このところちょっと