ブラック・キッズ @ 渋谷クラブクアトロ

ブラック・キッズ @ 渋谷クラブクアトロ - ブラック・キッズブラック・キッズ
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とにかく切なくて、泣けて、胸がきゅんきゅんと締めつけられっぱなしの40分。今年一年を振り返ってみても、これほどまでに痛切に、ギター・ポップの効能を感じさせてくれるライブはなかった。

ブラック・キッズは、アメリカはフロリダ州ジャクソンヴィルから飛び出した男女混合5人組ギター・ロック・バンド。07年夏に発売されたデビューEP『Wizard of Ahhhs』やライブが海外音楽メディアで絶賛され、08年期待のバンドとして年初に名前が挙げられたバンドの一つだ。また日本でもアルバム発売を待たずして、EP収録のキラー・チューン“ボーイフレンド”がフロアを席捲。個人的には、この前のJAPAN CIRCUITでもDJタイムにスピンされフロアが「1、2、3、4」と大盛り上がりとなり、洋邦リスナーを問わない浸透ぶりをあらためて実感したばかり。待望の初日本公演ということで、フロアもほぼ満員、メンバー5人を熱狂的な歓声で迎えた。女の子2人は、想像以上に小柄で、チャーミング。バンドのたたずまいとして、凸凹感がなんともいえない味わいをかもし出している。

1曲目は、“ルック・アット・ミー(ホウェン・アイ・ロック・ウィッチュー)”。まず、レジーは思ったよりがっしり体型で、声量もなかなか。あのニュアンスに満ちた声質も、生々しく妖艶さが増している。しゃくりあげるようなあの唱法がもたらす切迫感には、ひたすら胸をかきむしられる。それと対照なのが、女の子2人のたどたどしいコーラス。とにかく可愛い! 成熟と未熟を象徴するような、この歌声のコントラストが、胸のきゅんきゅんを増幅させていく。

演奏も決してタイトとは言えないけど、各面々ともグルーヴィに音色を鳴らせているし、ちゃんと曲の要所をおさえていてくれるので、聴いていてもストレスがない。特に、アリのグルーヴ感覚は抜群で、プリミティヴな躍動感がブリーピーなシンセの音色に満ちていた。あらためて、ライブで感じたけど、このバンドのブラック・コンテンポラリーやソウル・ミュージックのヴァイブの取り込み方は、実に現代的。アルバム・プロデュースを手がけたバーナード・バトラーの尽力もあると思うけど。“パーティー・トラウマティック”や“リッスン・トゥ・ユア・ボディ・トゥナイト”みたいな、いなたいファンクネスとギター・ポップのゆるゆるな融合感には、このバンドならではのオリジナリティがすごく出ていると思う。ただし、そうした方向性のチャーム・ポイントは、ライブでの反応を見る限り、オーディエンスに全面的にウケているとは言いがたいシーンがあったため、ちょっと残念。


何よりもライブで強烈だったのは、曲に常に横たわっている痛みと悲しみが、ものすごいリアリティをもって迫ってくるところ。“陰”を知ってるからこその“陽”。この世界への違和感と疎外感に苦しむ魂が、自分の居場所を確保するため、ギター・ポップに可能性を見出した。あの振り切れたポップさの裏にあるそんなストーリーが、痛いほどに透けてみえる。そこが、胸をくるおしいほどにきゅんきゅんと締め付けてくるのだ。

とりわけ突き抜けたポップ・チューン“ボーイフレンド”の盛り上がりは圧巻。ブラック・キッズの楽曲には、エレクトロ、80Sといった、今どきなエッセンスがあちこちにちりばめられてはいる。だけど、この曲のきらめきはもっと普遍的なものだ。“ボーイフレンド”は彼らの強みともいえる、音楽に対峙する意識の普遍性と、圧倒的なポップ感覚が、一番象徴的な形で凝縮されている。ところで、ライブの帰り道、渋谷のクリスマス・イルミネーションがいつにもまして「沁みるー」、と感じた人は少なくないような気がするけど、どうだろう。(森田美喜子)


セットリスト

1.ルック・アット・ミー(ウェン・アイ・ロック・ウィッチュー)
2.ヒット・ザ・ハートブレイクス
3.パーティー・トラウマティック
4.アイ・ワナ・ビー・ユア・リムジン
5.リッスン・トゥー・ユア・ボディー・トゥナイト
6.ストレンジ・パワース(マグネティック・フィールズのカヴァー)
7.アイヴ・アンダーエスティメイティド・マイ・チャーム(アゲイン)
8.ラヴ・ミー・オールレディ
9.マイ・クリスチャン・ネーム
10.ボーイフレンド

アンコール
1.アイム・メイキング・アイズ・アット・ユー
2.ハリケーン・ジェーン
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