スティング @日本武道館

スティング @日本武道館 - pic by Masanori Doipic by Masanori Doi
00年代に入ってさまざまなプロジェクトに携わってきているが、ロック・バンドとしてステージに臨んだのはポリス再結成を除いたら2005年の来日以来となるスティング。

クラシックやオーケストラなど、そうした趣向とは無関係な素のロック・ミュージシャンとしてのスティングのほぼ12年ぶりのライブだ。

オープナーはザ・ポリスの“Synchronicity II”で、いきなりエネルギッシュな演奏をたたみかけていくが、ある意味でその後のスティングのソロ活動を予見させるような楽曲でもあったため、冒頭に持ってくるところがとても印象的だった。

続いてポリス時代のサウンドが炸裂する“Spirits In The Material World”へとなだれ込んでいくが、とにかく音が近い。武道館だから比較的ステージと観客との距離が近いとか、そういう次元の問題ではなくて、バンドの音が総体としてとにかく迫ってきて、その圧力がすごいのだ。

スティング @日本武道館 - pic by Masanori Doipic by Masanori Doi
さらにポリスの楽曲に特徴的な研ぎ澄まされたようなサウンドのエッジが立ちまくっているし、演奏の確かさとドライブ、テンション、すべてがトップ・ギアのものすごいパフォーマンスとなっている。ポリスのサウンドが好きということであれば、どのようなオーディオ環境をも越えて、この日のライブのサウンドこそが最高峰のものだったと断言してもいいほどの音とパフォーマンスが迫ってくる。

続いてスティングはしばらくセカンド『白いレガッタ』からの“The Bed’s Too Big Without You”のレゲエ・ベースラインを披露しながら客とのコール・アンド・レスポンスを試み、そのままタイトなリズムとともにソロ時代の最大のヒット曲のひとつ“Englishman in New York”に斬り込んでいく。

非常に洗練されたジャズ・ファンク・ポップとしてヒットして、これまでライブでもそういう楽曲として披露されてきたこの曲だが、完全に硬質なポリス=スティング・ロックとして今回叩きつけてきたのがとても痛快だ。

そして、今回の新作『ニューヨーク9番街57丁目』からの新曲“I Can’t Stop Thinking About You”へとなだれ込んでいくが、これがここまでの流れとまったく同じロック・ナンバーとして鳴り響き、新作のあからさまなロック・アプローチの意図も理解できたように思った。

それはまさに、このライブでのカタルシスのためにあったということなのだ。

スティング @日本武道館 - pic by Masanori Doipic by Masanori Doi
なにがスティングにこうさせたのか。とにかくこれは原点回帰とかそういう次元ではないのだ。むしろ、自身のロックの源泉、あるいはその音楽性の強味のすべてをあらためて再発見したというような、ハイパーなエネルギーが湧き続けてくる感じで、かつて知っていたつもりの楽曲の数々とこのような形で再会することはあまりにも嬉しいとしか言いようがない。

しかも、その興奮を存分に観客に味わわせたあとで、新曲群と近作の楽曲に突入していくこのステージの構成もあまりにも素晴らしかった。しかし、これも冒頭から続く圧倒的なパワーに溢れた演奏があって初めて成立するものなのだから、なにかがスティングの中で弾けているとしか説明のしようがないのだ。

終盤は『テン・サマナーズ・テイル』からの名曲でNasの“The Message”でのあまりにも切ないサンプリングとしても有名な“Shape of My Heart”からまた名曲シリーズへと戻り、あとはフィニッシュまで疾走するばかりという感じだった。

途中スティングがベースからギターに持ち替え、デヴィッド・ボウイの“Ashes to Ashes”のカバーを披露する一幕もあったが、演奏の途中から凄まじくハードなリフを刻む新作の“50,000”へとそのままなだれ込む展開もまた見事だった。

その後は二度のアンコールまで、名曲と名演のノンストップだったが、なによりも感銘を受けたのは、今回の新曲群の強さがこうした過去の名曲群にまったく引けを取っていないことだ。

今回のライブのセットもものすごくソリッドなものになっていたという印象がただひたすらに残った。

新作の内容そのものもそう思わせたものだったが、これは本格的にまた新しい章の始まりなのかとしか思いようのない内容のパフォーマンスだった。(高見展)

〈SETLIST〉

1. Synchronicity II
2. Spirits in the Material World
3. Englishman in New York
4. I Can’t Stop Thinking About You
5. Every Little Thing She Does Is Magic
6. One Fine Day
7. She’s Too Good for Me
8. Mad about You
9. Fields of Gold
10. Petrol Head
11. Down, Down, Down
12. Shape of My Heart
13. Message in a Bottle
14. Ashes to Ashes
15. 50,000
16. Walking on the Moon
17. So Lonely
18. Desert Rose
19. Roxanne / Ain’t No Sunshine

Encore
20. Next to You
21. Every Breath You Take
22. Fragile

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