●セットリスト
M1.CENTER OF UNIVERSE
M2.シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜
M3.名もなき詩
M4.GIFT
M5.Sign
M6.ヒカリノアトリエ
M7.君がいた夏
M8.innocent world
M9.Tomorrow never knows
M10.Simple
M11.思春期の夏〜君との恋が今も牧場に〜
M12.365日
M13.HANABI
M14.1999年、夏、沖縄
M15.足音 〜Be Strong
M16.ランニングハイ
M17.ニシエヒガシエ
M18.ポケット カスタネット
M19.himawari
M20.掌
M21.Dance Dance Dance
M22.fanfare
M23.エソラ
EN1.overture ~ 蘇生
EN2.終わりなき旅
「みなさんも、『25周年を記念して、何かすげえライブになるんじゃないか?』――そんなふうに期待して来てると思いますけども。今日は、その期待の遥か上を行くライブになると。そのための準備をして来ました! もう、出し惜しみとか一切ないんで。あの曲もこの曲もやりたいと思います!」
Mr.Childrenのデビュー25周年を記念して、全国ドーム&スタジアム9会場・計15公演にわたって開催され、9月9日の熊本・えがお健康スタジアムでツアーファイナルを迎えた「Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25」。
そのツアー後半、日産スタジアム2Daysの2日目=8月6日のステージは、冒頭の桜井和寿(Vo・G)の言葉通り、Mr.Childrenの25年史の高純度なダイジェストでもある名曲揃いのステージが、そのまま日本のロック/ポップミュージックのドキュメントにもなっていくような、圧巻のスケールの名演だった。
アルバム『Q』の1曲目“CENTER OF UNIVERSE”で幕を開けると、そこから“シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜”、“名もなき詩”をはじめシングル曲を序盤から惜しげもなく畳み掛けていく。トータル3時間に及ぶアクトの大半をシングル表題曲で固めてみせた死角なしの内容だった。
1曲1曲イントロが鳴り渡るごとに、7万人のオーディエンスが歓喜に沸き返り、高らかなクラップとシンガロングが夏空を震わせていく。何より、そんなサービス満点の選曲を、誰よりもステージ上のメンバーが全身で楽しんでいることを、「さあ始まったぞ! 準備はいいか横浜? ぶっ飛ばして行くよ! ついてきて!」という桜井の熱いコールが如実に物語っている。
そして――そんなバンドのエモーショナルな意気込みは、このツアーに参加したプレイヤーのラインナップからも伝わってくる。
桜井和寿/田原健一(G)/中川敬輔(B)/鈴木英哉(Dr・Cho)のメンバー4人に、SUNNY(Key・Cho)、山本拓夫(Sax・Flute)、icchie(Trumpet・Trombone)、小春(Accordion・Cho/チャラン・ポ・ランタン)を加えたホールツアー「ヒカリノアトリエ」での8人編成に、さらに四家卯大(Cello)、沖祥子(Violin)、西村浩二(Trumpet)を迎えて今回のツアーに臨んだMr.Children。
“GIFT”などの曲では最大11人編成での壮麗なアンサンブルを響かせた一方で、メンバー+SUNNYの5人でソリッドな演奏を繰り広げたり(“innocent world”など)、ホーン/ストリングス/アコーディオンの音色を曲ごとに塗り重ねたりしながら、楽曲の魅力を丹念に、かつ伸びやかに咲き誇らせていく。
「誰かが寂しかったり迷ったり傷ついたりしてる時に、ポケットの中に入れて持ち歩けるような……手のひらサイズの希望の歌にしたいと思って作った曲です」とホールツアーの8人編成でセンターステージから音を紡いでみせた“ヒカリノアトリエ”。
「台風の予報もちょっと前まであって、一瞬『できないんじゃないか』と思ってたんですけど。蓋を開けてみれば、雨も降ってない、夏にぴったり――夏にぴったり? それは今からやる曲だ(笑)。僕らのデビュー曲です!」と快活に語る言葉とともに歌い上げた“君がいた夏”。
自分たちの楽曲にこめられた想いを語る桜井のMCも、それを鳴り渡らせる歌とサウンドのひとつひとつも、すべてが開放的なモードの中で、会場の熱気と響き合っていく。
桜井弾き語りの“Simple”、鈴木がボーカルをとった“思春期の夏~君との恋が今も牧場に~”など、ライブ後半もさらに多彩な展開を見せる中、「僕らにとってはとっても大事な歌で。旅について、人と人との出会いについて、人を愛することについて、自由って、家族って、平和って、日本って――みたいに、いろんなことをこの1曲の中で歌っています」という言葉に続いて桜井が歌い始めたのは“1999年、夏、沖縄”だった。
《時の流れは速く もう三十なのだけれど》の歌詞を《〜もう25年が経ったけれど》、《そして99年夏の沖縄で》を《そして2017年8月6日 日産スタジアム》にアレンジして歌ったところで、桜井がひと言ひと言嚙み締めるように回想する。
昔「ノストラダムスの大予言」で「1999年に世界は滅亡する」と言っていたが、世界は滅亡することなく2002年にバンドはデビュー10周年を迎えたこと。その頃はまだ若く素直になれずに、「今僕らのことを『いい』って言ってくれる人がいたとしても、どうせすぐにどこか他のところに消えていってしまう」と思っていたこと――。
「でも、10周年を過ぎると、本当に時間が経つのはあっという間で……気がつけば今日、僕らにとって25年目。10周年の時はひねくれてて、『どこかに行ってしまう』と思っていたファンの人が――今こうして見渡すとわかるように、こんなに、こんなに今もまだ、僕らの音楽に耳を傾けてくれて、コンサートに足を運んでくれる人たちがいることを、本当に嬉しく、幸せに思ってます。どうもありがとう!」
間違いなく90年代以降の日本の音楽シーンの最先端をリードしてきた表現者が、「今、ここ」で自らの音楽を共有してもらえることの喜びを微塵の衒いもなく語る言葉に、満場の拍手喝采が巻き起こっていく。
ライブ終盤には、7月にリリースされたばかりの最新シングル曲“himawari”を披露。「優しいんだけど激しくて、まっすぐなんだけどねじ曲がってて、醜いんだけど美しい――そんな相反する想いを、この曲の中に投げ込みました。この曲で、みんなを今日はコテンパンにやっつけたいと思います!」と意気揚々と宣言した桜井の言葉通り、光も闇も「その先」へと突き動かすような力強いメロディとサウンドスケープが、夏の夜空ごと日産スタジアムを包む込むように響いていた。
特効の花火轟く“Dance Dance Dance”から“fanfare”、さらに七色の紙吹雪が舞い踊った“エソラ”で本編を終えた後、アンコールの冒頭に演奏されたのは、まさにデビュー10周年=2002年にリリースされたアルバム『IT'S A WONDERFUL WORLD』に収められた“overture”〜“蘇生”の流れ。
《何度でも 何度でも/僕は生まれ変わって行く》の一面の大合唱が、文字通り“蘇生”という楽曲にリアルな躍動感を与え、巨大な会場をさらなる多幸感で満たしていく。
「どうもありがとう! すっごい幸せ!!」
最後の“終わりなき旅”を前に、桜井は晴れやかな表情で観客にそう告げていた。ひたむきに歩み続けてきたバンドの足跡が、この上なく鮮やかな形で2017年という時代に刻まれ、さらに未来へ続いていく――そんな瞬間を7万人のオーディエンスと分かち合えた、最高の一夜だった。(高橋智樹)
終演後ブログ