銀杏BOYZ/日本武道館

銀杏BOYZ/日本武道館 - All photo by 高田梓 (AZUSA TAKADA)All photo by 高田梓 (AZUSA TAKADA)

●セットリスト
1. エンジェルベイビー
2. まだ見ぬ明日に
3. 若者たち
4. 駆け抜けて性春
5. べろちゅー
6. 骨
7. 円光
8. 二十九、三十
9. 夢で逢えたら
10. ナイトライダー
11. トラッシュ
12. I DON’T WANNA DIE FOREVER
13. 恋は永遠
14. BABY BABY
15. 新訳 銀河鉄道の夜
16. 光
17. NO FUTURE NO CRY
18. 僕たちは世界を変えることができない

(アンコール)
EN1. 人間
EN2. ぼあだむ
EN3. もしも君が泣くならば



バンド始動から14年目にして初の武道館。でも、リリースされたばかりの新作が目覚ましいセールスを記録して、がっつり全国をツアーして、武道館をひとつの到達点に設定していたとか、そういうタイミングではない。2014年の『光の中に立っていてね』は武道館に相応しい傑作だったが、製作時期の数年に渡ってライブ活動を停止していたバンドは、アルバムの完成前後に峯田和伸(Vo・G)を残して離散してしまった。峯田は当初一人きりで、後にサポートメンバーを迎えてライブ活動を行い、また新曲を発表し、「日本の銀杏好きの集まり」と銘打たれたこの日のステージを迎えたのである。

この武道館で初めて銀杏BOYZのライブに触れた人や、昨年の『奇跡の人』や朝ドラ『ひよっこ』で峯田和伸=銀杏BOYZの存在感が気になった人もいると思い、経緯をざっと振り返ってみた。要は、ロックバンドとしても普通じゃない武道館公演だということを理解して頂ければ幸いである。そしてそれは素晴らしいライブだった。開演と同時にスクリーンに映し出されるのは、銀杏BOYZのライブに目を見開いて興奮し、歌い、涙を溢れさせる多くのファンの姿である。銀杏の熱狂がどういうものかを一発で理解させ、「日本の銀杏好きの集まり」の意図を一発で理解させてくれる。

銀杏BOYZ/日本武道館
下手側にブランコが配置されたステージ(峯田は、後にGOING STEADY〜銀杏BOYZのマネージャーを務めることになる同級生=斎藤正樹氏と高校3年の時にグリーン・デイを観に行き、帰り道にブランコに乗りながら「俺、将来バンドやるわ」、「じゃあ俺はマネージャーやるわ」と言葉を交わしたエピソードを紹介していた)。サポートメンバーが一人ずつ登場してギラギラとした騒音を塗り重ね、最後に姿を見せた峯田が歌い出すのは、今夏の「恋とロックの3部作」シングルのひとつ“エンジェルベイビー”だ。大音量の爆音を掻い潜り、眩いメロディがロックの原体験を映し出してゆく。
銀杏BOYZ/日本武道館
「2017年10月13日、銀杏BOYZ。今日だけは、今日だけは、日本を背負って歌わせて頂きます。日本国旗のもと、“若者たち”を歌います」。飛び抜けて華やかな照明演出が用いられているわけではないのに、このとき、バンドの音が場内の体感光量を増幅させた気がする。山本幹宗(G)、加藤綾太(G/2)、藤原寛(B/AL)、岡山健二(Dr/classicus)というサポートメンバーたちは、峯田の恐るべきボルテージと足並みを揃えるように身をよじらせ、飛び跳ね、転げ回って音を繰り出す。そして満場のオーディエンスは峯田から歌メロを奪うように、渾身の歌声を張り上げていった。

「周りが42.195kmを走るつもりの走り方で走って、でも俺は、100mを走るみたいな走り方がしたかったんです。ぶっ倒れて、周りにどんどん抜かれて、空を見上げて。でも、42.195kmをあっという間に自分のものにしてやるってつもりで、始めたバンドです。銀杏BOYZは」、「生まれて良かったって思った日なんか、1日もありません。でも、生きてて良かったって思った日なら、何度かあります。今日みたいな日です」。峯田は、まるで自己紹介をするようにキャリアを振り返る。“べろちゅー”や“骨”の生々しい湿度を持った恋の情熱が広がり、“円光”として生まれ変わった歌でマイクを頭に打ち付け、40歳を目前にした彼がクリープハイプの“二十九、三十”を思い入れたっぷりにカバーする。まさに、42.195kmのキャリアがぐっと凝縮されるようだ。

銀杏BOYZ/日本武道館
“夢で逢えたら”や“I DON’T WANNA DIE FOREVER”の合唱は皮膚を震わせるほどで、その歌声に包まれる峯田はまるでグラマラスかつシンボリックなロックスターのように振舞っていた。色とりどりのハーモニーポップ“恋は永遠”に命を吹き込んで見せる演奏は、ただ前のめりなだけではない5人の技術が注ぎ込まれていて見事だ。そして“BABY BABY”を披露する前に、峯田はゴイステと銀杏の元バンドメイトたち、元マネージャーに感謝の思いを口にする。「あいつらは今は隣にいないけど、ステージの後ろから見守ってくれてる」。そして、背景いっぱいの星空のような電飾と、厳かなロックサウンドのレイヤーの中から届けられる“新訳 銀河鉄道の夜”は、気が遠のくような美しさであった。

銀杏BOYZ/日本武道館
凄絶極まりない歌声と、決壊する轟音に満たされる“光”の後、熱量を死守するように“NO FUTURE NO CRY”と“僕たちは世界を変えることができない”で本編を駆け抜ける。「どうせまた、しょうもない毎日が続くから、こんな日がまた来ることを願って!」と峯田は叫んだ。アンコールは、ここに集まった人々の命を照らすように客電が全点灯される“もしも君が泣くならば”までの3曲。しょうもない日々に向けて渾身の、美しいメロディを投げかけること。そのことに意味がないなんて、一体誰が言えるだろう。銀杏BOYZらしい、新たな約束を残すための武道館公演であった。(小池宏和)

終演後ブログ
【速報】銀杏BOYZ、14年目にして初の武道館は、また訪れるしょうもない毎日のための約束だった
書きたいことがたくさんあるので後日公開のライブレポートもぜひご覧頂きたいのだが、差し当たって、こんなに客席が明るく照らされる武道館ライブは見たことがない。 開演と同時に、スクリーンには銀杏のライブで真剣に歌い、真剣に暴れ、真剣に頭がおかしくなっているファンたちの顔と声が溢れ返る。何しろ公…
【速報】銀杏BOYZ、14年目にして初の武道館は、また訪れるしょうもない毎日のための約束だった

※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫び申し上げます。

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