ポルカドットスティングレイ/代官山UNIT

ポルカドットスティングレイ/代官山UNIT - All photo by 上山陽介All photo by 上山陽介

●セットリスト
1. 夜明けのオレンジ
2. 人魚
3. ハルシオン
4. テレキャスター・ストライプ
5. 本日未明
6. ミドリ
7. サレンダー
8. フレミング
9. ポルカドット・スティングレイ
10. 顔も覚えてない
11. 極楽灯
12. シンクロニシカ

(アンコール)
EN1. レム
EN2. ジェット・ラグ
EN3. エレクトリック・パブリック



「25歳になりましたっ!」。出てくるなり、まず自分で言ってしまうのが雫(Vo・G)の、というか、ポルカドットスティングレイの潔さそのもののような気がして、思わず笑ってしまった。バースデー記念ライブというものが別段珍しいわけではないけれど、フロントマン自らが「誕生日」と宣言してスタートするライブは、他であまり見たことがない。というわけで、そう、この日は雫の25歳を記念してのライブで、その名もズバリ「ポルフェス14 "教祖爆誕 ワンマン"」。ついでに言えば「教祖」と自ら言い切ってしまうアイロニーと、それを承知でポルカに「入信」するファンという自虐的な構図も、ライブが始まってしまえば、シャープでエキセントリックなサウンドと、ひたすら観客オリエンテッドのエンターテインメントによって、祝祭的な空間へと塗り替えられてしまう。

ポルカドットスティングレイ/代官山UNIT
前回の東京でのワンマンは、「女子団員限定」ライブで、オーディエンスともども非常に熱の高いステージを作り上げていったのだけれど、今回は通常のワンマン。でも心なしか、これまでは明らかに男性ファンのほうが目立っていたフロア前方にも、女性ファンの姿が増えてきたように思えた。何気ないことだが、あのタイミングであえて「女子限定」のライブを行ったことがこうして効いてきているのを見て、改めてポルカの活動ひとつひとつが、必ずその次、その先へと続く布石になっていることに気づかされ、そのきめ細やかさに思わず嘆息してしまった。

ライブに足を運ぶたびに何らかのサプライズを用意してくれていて、それは決してただのギミックではなく、ポルカがどんどん大きくなっていく様子を、ファンもリアルタイムで体感していくような、そんな楽しみ方を提示してくれている。だからこそ、メジャーデビューが決まって、そして1stアルバムのリリースも決まって、その後の動きも見えてきて──という、この一連の流れの中で観るポルカのライブは、短いスパンの中でもその勢いの加速を感じられて、バンドサウンドの成熟をダイナミックに感じ取ることができるのだ。実際、この日のライブの演奏は、ほぼ1ヶ月前のワンマンと比べても、演奏力も新曲の成熟度も格段に上がっているように感じた。

ポルカドットスティングレイ/代官山UNIT
ライブは“夜明けのオレンジ”で始まった。ジャジーでスウィンギンなサウンドで一気にポルカワールドへ。続く“人魚”の大サビで響く雫の伸びやかで艶のある歌声、“ハルシオン”で聴かせる、エジマハルシ(G)のリードと雫のバッキングのギターアンサンブル。そしてサビの爆発力。ウエムラユウキ(B)とミツヤスカズマ(Dr)が支えるリズムのタメ、引き、決めのバランスも、素晴らしく心地好い。もともと演奏能力に長けたメンバーが集まっているということもあるが、個人個人の才能がしっかりひとつのバンドの音として求心力を携えてきたのは、ここ最近のことではないかと思う。“テレキャスター・ストライプ”などは、客席とのコール&レスポンスのタイミングも含め、アウトロのハルシのギターソロまで完璧だった。11月8日(水)にリリース予定のデビューアルバム『全知全能』で、改めて過去のヒットチューンを何曲か新録バージョンとしてレコーディングしたことも、ライブの演奏に良いエフェクトをもたらしているのかもしれない。

ポルカドットスティングレイ/代官山UNIT
これまでまだ発表されていなかった、この1stアルバムの詳細についても、雫から様々な情報が発表されていく。まず、新曲が8曲入ること。その8曲のうち4曲は、まだライブでも演奏されていないものであること。アルバムリリースに続いて、初の全国ツアーが決まったこと。しかもこれまでよりも大きなキャパでのライブになるだろうことなどなど。で、そのまだ1度もライブでやっていない新曲のうちの1つ“サレンダー”を、「宇宙で最初の演奏を聴いてくれ」と言って披露。跳ねるようなリズムとレンジの広いメロディライン、雫のファルセットが曲調に美しくマッチする。ユウキのヘヴィなスラップベースも鮮やか。この緻密で洗練された展開もまたポルカの新境地だ。

ポルカドットスティングレイ/代官山UNIT
「アルバムには旧曲もたくさん入ってまして、このバンドを作ってから、一番最初に作った曲も、『全知全能』バージョンとして入っています」と雫が語ると、繰り出されたのはもちろん“ポルカドット・スティングレイ”。改めて聴くと、この曲はサビへと至るアプローチが非常に秀逸。そして、この曲が生まれたからこそ、ポルカの音楽活動は本格的にエンジンがかかってしまったのではないだろうか、と思う。間に挿入される各メンバーのソロ回しも、もはや若手バンドとは思えないほど堂に入ったものだった。演奏後、「気づいた? 歌詞が一部日本語になったの」という雫。そして、この曲のアコースティックバージョンが『全知全能』のCD作品にのみ、ボーナストラックとして収録されることも告げられた(先日、一足先に試聴したのだが、これが本当に素晴らしかった)。こうしてバンドにとって大切な楽曲も、どんどんアップデートされていくのが面白い。

ライブ終盤。この夏のフェスでも「やり散らかした」という、「ポルカ初のネタ曲」“顔も覚えてない”では、最高にヒートアップしたシンガロングとスクリームが大音量でフロアから上がり、“極楽灯”ではクリアなギターのアルペジオと煌めくようなギターソロに聴き入り、ラストは「みんな燃え尽きる準備はできてる?」と、超高速“シンクロニシカ”へ。間違いなく今のポルカの中で最強のキラーチューンを猛烈にアグレッシブなアレンジで突きつけて、ステージを去っていく。

ポルカドットスティングレイ/代官山UNIT
アンコールの拍手が響く中、突如ステージ後方を覆っていた暗幕が開き、スクリーンに映し出されたのはなんと、新曲“レム”のMV。砂漠の中でメンバー同士が、サントリー「ヨーグリーナ」を奪い合いながら戦いを繰り広げるという、スタイリッシュさと笑いどころが絶妙に入り混じったMVをフルで公開。不自然な「ヨーグリーナ」の登場に、タイアップだと気づいた客席からは「マジ?」と驚きの声も上がる。そして登場した4人は、続けて再び“レム”を演奏した。スケール感と爽快感とメジャー感のあるこの楽曲は、ポルカのネクストステップのための重要曲として、今後しっかり刻みつけられることになるだろう。その後、「これも、みなさんが宇宙で一番初めに聴いてください」と、初披露の新曲“ジェット・ラグ”へ。ポップな歌メロに雫のキュートなボーカルが乗る。これもまた、今までのポルカにはなかった楽曲だ。こうしてこの日のライブでも、少しずつ、『全知全能』の振れ幅の広さが明らかになっていった。

ラストはユウキの「最後まで盛り上がっていけますかー!」の声から、雫への「誕生日!」、「おめでとう!」のコール&レスポンスが始まり、“エレクトリック・パブリック”へ。お馴染み「SAY YESマン」も登場し、オーディエンスがひとつになるお約束のアクションと、決めの「YES!」の掛け声がこれ以上ないほどバッチリ決まって、熱狂の中でこの日のステージは幕を閉じた。最後に雫が言っていた、「メジャーデビューしたら、日本のシーンを引っ張っていくヒーローになりたいと思います」という言葉が記憶に残る。この小柄でキュートな「教祖」が、どこまで日本をポップにしてくれるのか、これからも楽しみにしながら見届けたい。(杉浦美恵)

ポルカドットスティングレイ/代官山UNIT

終演後ブログ
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すでに11月8日(水)に、1stフルアルバム『全知全能』のリリースが発表されているポルカドットスティングレイ。代官山UNITで行われたワンマンライブに行ってきました。メジャーデビュー直前のワクワクに加え、この日はなんと、雫(Vo・G)の誕生日。というわけでライブのタイトルは「ポルフェス14 "…
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