●セットリスト
1. DON-GARA
2. 音楽依存症生活
3. 私を二郎に連れてって
4. TAVEMONO NO URAMI
5. 歯痛くて feat.Dr.COYASS
6. 糖質制限ダイエットやってみた
7. まごパワー
8. New Gingeration
9. 島国DNA
10. ニクタベイコウ!
11. ヤキトリズム
12. 47
13. 今日も貴方と南武線
14. きのこたけのこ戦争
15. 88
16. 10獄食堂へようこそ
17. 1/6の夢旅人2002
18. デリシャスティック
19. Breakfast
20. 日本の米は世界一
21. カモン諭吉
(アンコール)
en.1. 布団の中から出たくない
en.2. フローネル
「獄」という真っ赤な文字が躍るTシャツを着たファンによって満杯となった日本武道館。会場内に入った人々を出迎えたのは、大型スクリーンで上映されていたバラエティ番組『10獄放送局』だった。「会長」こと大澤敦史(G)と、友人の青木亞一人(アシュラシンドロームのボーカリスト)が、菅笠を被って四国八十八ヶ所巡りのお遍路をしていて仰天! 「この人たち、何してんの⁉」と思ったが、すぐに事情は呑み込めた。打首獄門同好会は、1年がかりで様々な公約を果たす「目指せ武道館!! 2017-2018 戦獄絵巻」を展開していたが、四国の音楽フェスに出演できず、「北海道~九州全地域 フェス全国制覇」を達成できなかったのだ。しかし、彼らは諦めなかった。「四国にはフェスと呼ぶにふさわしい大型イベントがあるではないか!」と、お遍路の旅に出ることにしたのだという。大雪に見舞われた四国での会長と青木の奮闘が、開演前から観客を沸かせていた。
ライブ本編は、元気いっぱいに歌いながらドラムを打ち鳴らした河本あす香(Dr)が先陣を切った“DON-GARA”からスタート。重低音を刻みながら歌う会長、長い髪を振り乱しながらベースを弾くJunko(B)、彼らのライブをVJとして支えるサカムケ&風乃海の雄姿も眩しい。「ついに立った夢の大舞台!」と胸が熱くなるオープニングであったが、スペシャルゲストの「男鹿ナマハゲ太鼓」も一緒になって情熱的に太鼓を叩いている光景が、かなりシュールだった。
その後も、片時もステージから目を離すことができなかった。まるでニンニクヤサイマシマシのように濃厚且つ熱々だった“私を二郎に連れてって”。新生姜の被り物をしながら演奏をしていたメンバーたちの姿が実に美味しそうだった“New Gingeration”。マグロ型風船がピチピチとアリーナ内で飛び跳ねた様が大海原を思わせた“島国DNA”。《せせり せせり せせり せせり》という激しい観客のコールが、武道館に新たな伝説を刻んでいるのを感じた“ヤキトリズム”。きのこの山派とたけのこの里派に分かれた観客同士が身体をぶつけ合っていた様が、「1970年代から続く日本最大の内戦」と呼ばれている紛争が今後も続くことを示唆していた“きのこたけのこ戦争”……などなど、打首獄門同好会が追求してきた「生活密着型ラウドロック」の恐るべきパワーを再確認させられる場面ばかりだった。そして、Dr.COYASSと、青木亞一人、森田釣竿(漁港)、豊島”ペリー来航”渉&アサヒキャナコ(バックドロップシンデレラ)、onちゃん(北海道テレビ放送のマスコットキャラクター)など、時折、スペシャルゲストも登場。打首獄門同好会が仲間たちに深く愛されていることが伝わってきた。
観客が掲げた何千本ものうまい棒が神々しく揺れた“デリシャスティック”。このバンドが最初に作った記念すべき曲“Breakfast”。武道館の天井から吊るされている大きな日の丸の下で《日本の米は世界一》と観客が一斉に叫ぶ姿が弥生時代から脈々と続く稲作文化への誇りに満ちていた“日本の米は世界一”。民衆の素直な欲望を託した《カモンカモンカモン福沢諭吉》という大合唱が感動的だった“カモン諭吉”で本編は終了。そしてアンコールで、まず披露されたのは“布団の中から出たくない”。この曲とコラボレーションをした「コウペンちゃん」が登場し、ちびっ子の観客がピョンピョン飛び跳ねながら大喜びしていたのがかわいかった。
全篇がクライマックスだったとしか言いようのないこのライブは “フローネル”によって華麗に締め括られた。「家に帰ったら温かいお風呂に浸かって、温かい布団でお休みください!」という会長の言葉と共にスタートし、湯煙のような穏やかな熱気で完全にひとつになっていた武道館。大恩人のKenKenが突然登場するサプライズを経て、爽やかなエンディングへと辿り着いていた。
今、こうして振り返っても、粋なアイディアとユーモアの数々が冴え渡るステージだったことが、鮮やかに思い出される。打首獄門同好会のことが気になっている人は、実際に生の現場に足を運んだ方がいい。ラウドロックの刺激、身近な事物の再発見が呼び起こす共感、笑い、感動を一気に噛み締めさせてくれるこんなバンドは、世界中の何処を探してもいないと思う。(田中大)