打首獄門同好会/ぴあアリーナMM

打首獄門同好会/ぴあアリーナMM - Photo by 朝岡英輔Photo by 朝岡英輔

●セットリスト
01. ニクタベイコウ!
02. デリシャスティック
03. 筋肉マイフレンド
04. 死亡フラグを立てないで
05. TAVEMONO NO URAMI
06. 牛乳推奨月間
07. はたらきたくない
08. 猫の惑星
09. カンガルーはどこに行ったのか
10. New Gingeration
11. シュフノミチ
12. まごパワー
13. 布団の中から出たくない
14. 私を二郎に連れてって
15. 鬼の副長HIZIKATA
16. 島国DNA
17. きのこたけのこ戦争
18. 日本の米は世界一
19. 地味な生活

Encore
20. 換気パッパ by ひらけ!カンキッキ
21. 明日の計画


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12月10日・ぴあアリーナMMで行われたワンマンライブのタイトルは「新型コロナウイルスが憎いツアー2020~2022 ツアーファイナル「新型コロナウイルスが憎かった」」。ここには深い意味が含まれているので、最初にその点を丁寧に説明しておきたい。注目すべきなのは「2020~2022」だ。このツアーは3年近くに亘って続いてきた。

2020年2月29日・Zepp Tokyoで行われるはずだった「獄至十五ファイナルワンマンツアー」ファイナル公演は、新型コロナウイルスの影響で2月26日に政府から出されたイベント開催自粛要請によって中止。その後の「新型コロナウイルスが憎いツアー2020」のツアーファイナルとして2021年1月11日に開催される予定だったぴあアリーナMM公演も、新型コロナウイルスの感染拡大を考慮して同年5月9日に日程変更。2021年3月20日・Zepp DiverCity(TOKYO)公演を皮切りにスタートした「新型コロナウイルスが憎いツアー2021」のツアーファイナルとなるはずだった5月9日のぴあアリーナMM公演は、またしても新型コロナウイルスの影響で中止……という、ツアーファイナルの中止に次ぐ中止を経て、ようやく迎えたのが今回の公演だったのだ。そして、本来のキャパシティの50%で使用する「声出しありエリア」、キャパシティ100%による「声出しなしエリア」を設けていたのも、注目すべき点として触れておきたい。不安のある層にも配慮しつつ、マスクをした状態による観客の声出しをOKとするやり方は、現在の状況下でベストの開催方法だったと思う。前置きが長くなってしまったが、このライブの模様をレポートする。

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  • 打首獄門同好会/ぴあアリーナMM - Photo by タカギユウスケ

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開演時間を迎えて大型スクリーンに映し出されたオープニングムービー。赤飯(オメでたい頭でなにより)と大抜卓人が、間もなく始まるライブについてのトークを繰り広げた。このふたりは、先述の「獄至十五ファイナルワンマンツアー」ファイナル公演の生き証人。Zepp Tokyoでの有観客ライブは断念せざるを得なかったが、中止が決まった数時間後には無観客会場からの無料生配信ライブが行われる旨が発表され、当日の実況中継を担当したのが赤飯と大抜だったのだ。思い出などをふたりが語り合ったあとは、打首獄門同好会のYouTube番組『10獄放送局』がスタート。コロナ禍が始まって以降、感染症対策のために換気タイムがライブの途中に設けられるようになったのを記憶している人も多いだろう。この換気タイムを楽しいものにするために、大澤敦史(打首獄門同好会)、青木亞一人(アシュラシンドローム)、チダケイイチ(LD&Kスタッフ)によって結成されたスーパーユニット「ひらけ!カンキッキ」は、オリジナルソング“換気パッパ”と“換気ミラクルデスティニー”をこれまでに制作してきた。換気タイムはもはや必要ではなくなっているが、今回の『10獄放送局』の企画で換気ソング第3弾・3部作完結編を制作することになったひらけ!カンキッキ。遊び心を暴走させながらニューソング“俺たちの換気デイズ”を作り上げていく様が、観客を大喜びさせていた。

盛りだくさんのイントロダクションを経て、ついに幕を開けた本編。SE“新型コロナウイルスが憎い”が鳴り響き、高まり続けた観客の手拍子。歌詞の《新型コロナウイルスが憎い》が終盤で《新型コロナウイルスが憎かった》となり、大澤敦史(G)、junko(B)、河本あす香(Dr)、風乃海(VJ)がステージに登場。「2年9ヶ月ぶりの質問です。声出す準備はできてますか?」と大澤会長が観客に呼びかけて“ニクタベイコウ!”がスタート。拳を振り上げながら興奮を露わにする人々の熱量がものすごい。《肉食べ行こう》に対して《そうしよう》という声が「声出しありエリア」から起こった瞬間が素敵だった。コロナ禍前では恒例だったことを取り戻しつつあるのだ。ステージ上のメンバーたちも、感慨深かったのではないだろうか。

打首獄門同好会/ぴあアリーナMM - Photo by タカギユウスケPhoto by タカギユウスケ
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入場時に配布されたうまい棒を勇者の剣のように観客が掲げた“デリシャスティック”。全エリアの人々が一斉にスクワットをする様が壮観だった“筋肉マイフレンド”を経て迎えた最初の小休止。「この言葉を言いたくて仕方なかった。ツアーファイナルへようこそ! 2年9ヶ月かかりましたね。コロナ禍になってライブハウスが一時期、世の中の悪者みたいになってしまって、ライブの開催が許されない時期が長く続きました。ライブハウスがどんどんなくなってしまいそうだったし、音楽業界で働いている人たちも職を失いかねない状況の中で我々、みなさんも含めてですよ。我々はずっと戦ってきた。『がんじがらめの決まりを守るからライブをやらせてくれ。ライブに行かせてくれ』という戦いをやってきた2年9ヶ月だったと思います。その結果、俺たちは耐えに耐え、耐え抜いて、守り抜いてツアーファイナルを迎えられてます。我々は一緒に戦い抜いたんだと思ってます。長い苦しい戦いは、どうやら俺たちの勝利です。今日は存分に勝鬨を上げていってください」――強い実感の込もった大澤会長の言葉に胸が熱くなった。

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サビに差し掛かる度に純白の天使に扮した桃乃木かなが登場し、キュートなダンスで観客をキュンキュンさせていた“死亡フラグを立てないで”。青木亞一人(アシュラシンドローム)もほんの僅かな担当パートのためだけに現れ、死亡フラグを示唆する一節を哀愁たっぷりに歌い上げていた。続いて、プリンを発端とする不穏な事件の発生を予感させられた“TAVEMONO NO URAMI”。農林水産省の若手職員によるYouTuber「タガヤセキュウシュウ」の野田広宣、白石優生が曲中で牛乳を一気飲みした“牛乳推奨月間”。バックドロップシンデレラのカバーバージョンを、同バンドの豊島”ペリー来航”渉を招いて披露した“はたらきたくない”。猫がもたらす救いと癒しを再認識させてくれた “猫の惑星”。しまじろうが愛らしい存在感をふりまいた“カンガルーはどこに行ったのか”……様々な要素が盛り込まれた曲たちが披露され続けて、前半は終了。5分間の換気タイムでは、ひらけ!カンキッキの“俺たちの換気デイズ”のMVがスクリーンで公開された。

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新生姜の被り物姿の河本あす香がドラムを叩きながら「久々にコール&レスポンスをしたいと思います!」と呼びかけ、《岩下の》《新生姜》という元気いっぱいの声を観客と交わしたあと、大澤会長、junko、風乃海も新生姜に扮して合流。岩下の新生姜の公式キャラクター・イワシカも登場した“New Gingeration”。テレビアニメ『極主夫道』の主人公・龍(CV津田健次郎)のドスの利いた曲紹介を経て演奏が始まった同アニメのOP主題歌“シュフノミチ”。高齢者を骨抜きにする恐るべき力を描写した“まごパワー”。厳しい気候との我々の戦いをゲストのコウペンちゃんが全力で応援してくれた“布団の中から出たくない”。あの有名ラーメン店の看板を彷彿とさせる黄色のライトでステージが染まった“私を二郎に連れてって”。新撰組の羽織を身に纏ったレキシ(池田貴史)がステージの隅々までを巡りながら観客を盛り上げた“鬼の副長HIZIKATA”。アリーナ席に投入された数匹のマグロ(※マグロを模したバルーン)がピチピチと跳ね回った“島国DNA”。キノコとタケノコのぬいぐるみを手にした豊島”ペリー来航”渉(バックドロップシンデレラ)、アサヒキャナコ(バックドロップシンデレラ)も加わり、我が国に於ける戦後最大の内戦が壮大に表現された“きのこたけのこ戦争”。大澤会長の《日本の米は》に対して観客による《世界一》という大きな声が返された“日本の米は世界一”。羽根飾りを装着したサンバダンサーの佐藤麻理子・中島洋二・若松裕美(Lindona)、即興打楽器集団「LA SEÑAS」のメンバーたちが加わり、ぴあアリーナMMが煌びやかなサンバカーニバルの会場と化した“地味な生活”……こうして文字で描写すると意味不明なものもある気がするが、紛れもなくこれらのことが怒涛の勢いで起こりながら本編は締め括られた。

手拍子と歓声に応えて再登場した打首獄門同好会……というつもりだったのだが、なんだか様子がおかしい。頭にバンダナを巻き、生足剝き出しのハーフパンツ姿の青木亞一人(Key)、上下金ラメスーツの大澤会長(G)、のれんのようなプレスリー風のフリンジが両腕から垂れ下がっているチダケイイチ(Vo)がステージに立っていた。そして届けられたのは、ひらけ!カンキッキの換気ソング第1弾“換気パッパ”。生演奏で聴くことができて観客は大喜び。冬場になると寒いので怠りがちだが、換気はしっかりしないといけないなと思わされた。

打首獄門同好会/ぴあアリーナMM - Photo by 朝岡英輔Photo by 朝岡英輔
打首獄門同好会/ぴあアリーナMM - Photo by 朝岡英輔Photo by 朝岡英輔
「この苦しい時代に急に見舞われて、俺たちの役割みたいなものを感じたんですよ。諦めがちじゃないですか、こんな状況になったら。『諦めなきゃいけないのかな』という気持ちにどうしても追い詰められてしまう。それでも何度ふりだしに戻されても、またスタートしてゴールを目指す奴が目に届くところにいると、『それもありなんだな』っていう気持ちになるんじゃないかなと思うんですよ。何度駄目になってもめげず、挫けず、懲りず進んでゴールに辿り着く。そういう姿が見えると、みんなの背中を押せるのかなって。ロックバンドの役割というか……言葉ではなんとでも言えるけど、やっぱり行動で示さないといけない時だと思ったんですよ。だから今日こうしてやり遂げた姿が、少しでもみなさんの励みになったら嬉しいです。どんなに先行きが真っ暗で見通しの悪い時でも、素晴らしい明日を、楽しい明日を、幸せな明日を願ってもいい。信じてもいい。そこに向かって突き進んでいい。そう思ってほしいです。それがこの時代の俺たちの役割だと思いました。俺たちとみんなが次に立てる計画は、もっとシンプル。またライブハウスで一緒に遊びましょう」――この言葉が添えられたラストの曲“明日の計画”は、とても胸に沁みた。新型コロナウイルスの影響によって様々な制約が課された中、柔軟な発想と行動によって道を切り拓いていたのが打首獄門同好会だ。3日間の準備期間で実現させた2020年2月29日の配信ライブ、自由な視点で360°動画を楽しめた「VRライブハウス」、声出しをしないで観客をひとつにするスタイルを提示した“筋肉マイフレンド”のスクワット、換気をお楽しみタイムへと転じた“換気パッパ”“換気ミラクルデスティニー”“俺たちの換気デイズ”、『10獄放送局』の企画の数々……などなど。彼らが貫き続けた「楽しい」を諦めない姿勢は、たくさんの勇気を我々に授けてくれた。そして様々な曲たちも、大切なことを教えてくれたように感じる。どんなに厳しい状況に置かれてもご飯が美味しかったり、猫がかわいかったり、布団やお風呂が気持ちよかったり、明るく笑えたりしたら、そこには必ず希望が宿る。ギリギリまで追い詰められたとしても、素敵な何かを見つけられるのだと全力で示してくれるのが、彼らがテーマにしている「生活密着型ラウドロック」なのだと思う。そんなことを“明日の計画”を聴きながら考えさせられた。

打首獄門同好会/ぴあアリーナMM - Photo by タカギユウスケPhoto by タカギユウスケ
全曲の演奏が終わったあとは、ステージ上にゲストが集合して記念撮影。ミュージシャン、人気キャラクター、農林水産省職員、女優、サンバダンサー、プレスリーな会社員……多種多様な方面の人々が並んでいる姿はシュール極まりなかったが、雑多な賑やかさが楽しくて仕方ない。繰り返す《せせり》の4回目の《りー》、《つくね》の4回目の《ねー》のタイミングでカメラマンがシャッターを押すのが懐かしかった。この撮影スタイルがコロナ禍前の恒例だったことを思い出した。そして迎えた終演。何度も大笑いして、胸を激しく震わせもしながら、打首獄門同好会のことが改めて大好きになれたライブだった。(田中大)

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