で、観たところからレポートしますと、まず、2つの点でとてもびっくりした。1つめ、すんげえ超満員。ホールのドアを開けたら人がこぼれ出してきそうなほどパンパン。こんなに人気あったのか。いつの間に。で、2つめは、これも「いつの間に」と驚いたんだけど、こんなにライブがいいバンドだったっけ!?ということ。各楽器の出音とバランス、ミックス、プレイそのもの、グルーヴとかアンサンブルとかそういうのまで含めて、「えーっ、ここまでハイレベルだったっけ!?」という感じだった。前にちゃんと観たのは昨年9月なんだけど、たった5ヶ月でえらいレベルアップしている。
波多野のギターの繊細さと正確さは、明らかに「歌いながら弾く人ができること」のレベルを超えている。昨年5月から新加入の福井のプレイは確実に音のボトムをぶっとくしている。特に驚いたのがドラム山口大吾、技術面とグルーヴ面の両方において、もう若手トップクラス。さらに、キックとスネアのタイミングが、波多野の歌のタイム感にばっちり合っているので聴いていて気持ちいい。昔、僕はドラムをやっていたことがあって、その時に学んだことの中のひとつに「手首が柔らかいプレイをできるドラマーはいいドラマー」というのがあるんだけど、まさにそれ。彼の手元をじっと見ていたくなる瞬間が、何度もあった。
もともと、このバンドの曲って、はっきり言ってライブに向いていない。まずリズム、3拍子とか変拍子とかの、のりづらいリズムの曲が多い。メロディ、明快で美しいものではあるんだけど、みんなでシンガロングできるようなわかりやすいコード進行とわかりやすい抑揚を持つタイプのものではない。歌詞、波多野の「自分には世界はこう見える」という感覚を、共有されやすいようにデフォルメしたり単純化したりすることなしで、感覚的なまんま聴き手の前に放り出すような作風なので、みんなで歌って一体感に包まれるようなもんではない。もっとこう、聴き手と音が一対一で向き合う感じ。アレンジ、ひとつひとつの楽器のプレイも、「ガーッとあがってガーッとさがる」ではなくそのいちいちにもっとややこしい緻密さがからみついているアンサンブルも、演奏的に難しいというか、技術が要求される。しかも損なことに、「うわあこれ演奏難しいなあ、すごいなあ」ってほどわかりやすく難しいタイプではなく、普通にスッと聴けるんだけど、よおく聴くと実は難しいタイプのそれだ。
という意味で、ライブに向いていないと書いたのだが、それを生でこんなに完璧に、かつすばらしいグルーヴでもって演奏されたことにびっくりした。しかも、それを必死でなんとか形にしているのではなく、余裕まである感じ。1回目のMCの時だったか2回目の時だったか、しゃべり終わって曲にいこうとしたらベースの機材トラブルでしばらく間が空いてしまったんだけど、波多野が「“一度だけ”やります!」と、予定になかった曲を急遽やって、やってるうちにベースも直って参加、トラブルがかえって盛り上がる結果に、みたいな局面まであった。
それから。とにかく、ここまで延々書いたように、本来ライブ向きではない、掛け値なしにすばらしいけどわかりやすく共有されやすいタイプではないPeople In The Boxの音楽が、ライブという場において、こんなに超満員になるほどのファンに求められていることがびっくりしたし、うれしかった。
バレンタインデーの土曜日に、People In The Boxのライブを観に、こんなにいっぱいの人が集まっているのって、変なことだと思う、おかしなことだと思う、異常なことだと思う、ほんとにうれしい、ありがとう。というようなことを、波多野は2度MCで言った。ってことは、本人も自分たちの音楽のその特殊性をわかっていて、だからうれしかったんだと思う。(兵庫慎司)
朗読
1.完璧な庭
2.ユリイカ
3.見えない警察のための
4.レントゲン
5.海抜0m
6.昏睡クラブ
7.6月の空を照らす
8.She Hates December
9.一度だけ〜ブリキの夜明け
10.サイレン
11.犬猫芝居
12.月曜日消失
13.泥の中の生活
14.水面上のアリア
15.はじまりの国
16.ペーパートリップ
17.ヨーロッパ
アンコール
18.新曲
19.Alice
アンコール2
20.鍵盤のない、