UK.PROJECTが主催する夏の恒例イベント「UKFC on the Road」。今年は名古屋、大阪、下北沢をまわるツアー形式で開催してきたこのイベントのファイナル公演が8月22日に新木場STUDIO COASTで行なわれた。ヘッドライナーには、3年間の活動休止から復活を果たしたthe telephonesが出演したほか、BIGMAMA、POLYSICS、TOTALFAT、[ALEXANDROS]というオールスターズが顔を揃え、「UKFC」の歴史を語るうえで欠かすことのできないTHE NOVEMBERSなど、過去にUK.PROJECTに関わりのあったバンドも参戦するという「原点回帰」となるラインナップ。自分たちが鳴らすべき音に正直なメンツが集結したこのイベントは、UK.PROJECTという事務所兼レーベルが、リスナーに愛され、アーティストに愛されながら、その歴史を刻んできたことを伝える1日となった。
FRONTIER STAGEのトップバッターを飾ったのは、はち切れんばかりの衝動を音へと叩きつけたteto。歴戦の強者が名を連ねるメインステージではダントツの最年少だが、そんなプレッシャーを微塵も感じさせない荒々しいプレイで爪痕を残した。胡散臭い世の中に中指を突き立てる“溶けた銃口”のあと、かつてUK.PROJECTの社長からもらった言葉として、「俺らの曲には“奴隷の唄”とか“洗脳教育”っていう曲があるけど、そういうのを出してもいいですか?って聞いたら、好きなことをやればいいと言われた」と語った小池貞利(Vo・G)。全ての過去を傷だらけの両腕で抱きしめる“忘れた”が素晴らしかった。
昨年はトリ、今年は21年目にして新ギタリストが加入するというまさかの展開を経て、4人体制でステージに登場したPOLYSICS。ピコピコ楽しいデジタル音が爆音のバンドサウンドと絡み合う“Young OH! OH!”を起爆剤にフロアを根こそぎジャンプさせる。ここ最近は3人でのライブにも慣れてきてはいたけれど、やっぱりPOLYSICSのライブは「4人編成」がしっくりくる。鉄板の“シーラカンス イズ アンドロイド”と“Let's ダバダバ”を畳みかけたあとの、the telephonesのカバー“Urban Disco”が最高だった。
真っ黒の衣装に身を包んでステージに現れたTHE NOVEMBERSは、“Hallelujah”を皮切りに、呑み込まれるような轟音サウンドに耽美なメロディと咆哮とを織り込んでゆく。メンバーが激しく身体を揺さぶりながらプレイする、鬼気迫る激しいパフォーマンスに、フロアのお客さんはただ茫然と立ち尽くすのみ。小林祐介(Vo・G)の咆哮が痛烈に響き渡った“黒い虹”まで、そのステージには、音楽だけでなく文学やアートに至るまで自分たちが嗜好とするカルチャーをピュアに継承する、彼らの美学が貫かれていた。
ライブの折り返し地点で、会場の湿度をぐんと上げたTOTALFAT。「どうも、こんにちは!お祭り番長TOTALFATです! 楽しんでいくぞ!」という言葉のとおり、この場所で果たすべき自らの役割を全力で体現する底抜けに楽しいパフォーマンスだった。レゲエのリズムにのせた新曲“Your Goddamn Song”や“PARTY PARTY”の絶頂を越えて、「the telephones、おかえりー!」と叫んだあとの“Place to Try”は感動的だった。UK.PROJECTという絆で結ばれた彼らは、決して慣れ合うわけではないけれど、ふとした時に喜びを共に分かち合える、ひとつの大きなファミリーであることが垣間見られる瞬間だった。
一方、同時進行でサブステージとなるFUTURE STAGEのほうでも、その名のとおり、未来のUK.PROJECTの歴史を担ってゆくであろうバンドたちによる、見逃せないステージが繰り広げられていた。今年4月に新たにUK.PROJECTに加わったばかりのpostmanは真っ直ぐなギターロックを鳴らすと、寺本颯輝(Vo・G)が「次はメインステージに立ちたい」と熱い想いを口にした。照明をほとんど使わずに仄暗いステージで、ファルセットボイスを駆使しながら混沌のポストロックを鳴らしたpolly、男女ツインボーカルとスクリーモ、トリプルギターを擁するバンドサウンドを自在に操り、BIGMAMA・金井政人(Vo・G)をプロデューサーに迎えた“Moondrop”で、音源で聴く以上の衝撃を与えたaint、激しさと冷徹さを絶妙にブレンドしながら、ドリーミーな音像と朴訥としたメロディで唯一無二の世界を作り上げたodol。そうした音楽を聴いていると、研ぎ澄ました感性を剥き出しにして、何に補正されることもなく、自分たちの思うままの「ジャンル」を作り上げていくようなバンドこそ、「UKFC」に出演するバンドの共通点だと気づく。このステージで印象的だったのは、9月26日(水)にリリースを控えた最新アルバム『Diamond』からの楽曲を中心にした攻めのセットリストで臨んだウソツキ。バンド名とは不似合いなほど真っ直ぐに「愛」を綴った“名もなき感情”は、バンドに新たな名曲が加わったことを確信できる歌だった。そして、どこかノスタルジー漂うロックンロールをへそ曲がりな感性で鳴らすHelsinki Lambda Clubまで、ステージの広さこそメインステージに比べれば小さいが、そこに宿るオリジナリティの濃さでは、メインステージに全く引けを取らない6組だった。
再びステージはFRONTIER STAGEへと戻る。今年、RX-RECORDSでの12年間の活動を経て、ユニバーサルミュージックからメジャーデビューを果たしたBIGMAMAが後半戦の口火を切った。東出真緒(Violin・Key・Cho)が奏でるバイオリンとパンキッシュなバンドサウンドが絡み合う“荒狂曲“シンセカイ” ”に始まり、メジャーデビューを機にバンドの原点へと返り、BIGMAMAの真骨頂となるエッセンスをこれでもかと詰め込んだ“Strawberry Feels”へと続く。ウォーウォーという野性的なコーラスが雄々しく響き渡った“ファビュラ・フィビュラ”を含めて全8曲にMCはなし。ここ数年、ますます鋭利さを増していくBIGMAMAのライブだが、演奏を終えたあと、金井が「おかえり」とひとこと。誰にとは言わず、そこに全ての想いを残してステージをあとにするところが金井らしかった。
約1週間前にZOZOマリンスタジアムでのライブを終えたばかりの[ALEXANDROS]は、明らかにフロアとの距離が近いライブハウスの距離感を楽しんでいた。強靭なバンドサウンドの中で絶対的な存在感を放ち、全てを包み込んでしまう川上洋平(Vo・G)のメロディに酔いしれる“Starrrrrrr”を含む前半から、禍々しくヘヴィなサウンドが炸裂した最新シングル“Mosquito Bite”の攻撃的なモードの後半へと、フロアを激しく揺さぶる圧巻のステージ。MCでは、「距離が近いですね」と川上。「めっちゃ楽しみにしてましたよ、UKFC。バンド数も増えて、今は新木場コーストでできるようになって。今後もどんどん成長してほしいイベントなので、よろしくお願いします」と、磯部寛之(B)も言葉を重ねた。全7曲のステージだったが、最前列の柵の上に立ち、お客さんとハイタッチをした“Kick&Spin”の頃には、まるで彼らのワンマンライブのような一体感が出来上がっていた。ライブを観るたびに破格の進化を続けていく[ALEXANDROS]は、バンド結成当時から抱いていた野心を現実のものにするために、これからもどんどん広い世界へと羽ばたいていくだろう。
「ウィー・アー・ザ・テレフォンズ! UKFC、帰ってきたぜー!」という石毛輝(Vo・G・Syn)の甲高いあの声を合図に、いよいよthe telephonesの出番がやってきた。岡本伸明(Syn・Cowbell・Shriek)が激しくステージを暴れまわり、長島涼平(B・Cho)と松本誠治(Dr)の躍動感あふれるグルーヴが炸裂する“D.A.N.C.E to the telephones!!!”が投下されると、フロアが一瞬にして熱狂のダンスフロアへと姿を変えてゆく。「俺らは踊らせることしかできないから、踊ってくれ!」と突入した“Yeah Yeah Yeah”、「UKFC」という場所だからこそ披露したかった初期曲“RIOT!!!”。曲が進むにつれて高まってゆく熱狂の度合いからは、the telephonesというバンドがどれほど愛され、その復活を熱望されていたかが伝わってくる。“Keep Your DISCO!!!”、“Urban Disco”を連続投下する怒涛のフィナーレ。さらに、アンコールでは、UK.PROJECTについて、「この世の中にカウンターカルチャーを叩きこんでやろうというレーベルです」と語り、感謝を伝えると、巨大なミラーボールが無数の光でコーストを満たし、たくさんの風船がお客さんの頭上を弾んだ“Love&DISCO”でライブは終了。最後は出番を終えた出演者たちがサブステージで楽しそうに踊る姿も印象的だった。
トータル13組。9時間にわたり繰り広げられたイベントは、来年のthe telephonesがメジャーデビュー10周年を記念して、より精力的な活動を繰り広げるという嬉しいニュースと共に幕を閉じた。石毛もステージの上で言っていたが、おそらく来年も「UKFC」は開催されるだろう。今後、このイベントがどんなふうに進化していくか注目したいと思う(秦理絵)。
●セットリスト
【FRONTIER STAGE】
teto
1.拝啓
2.Pain Pain Pain
3.高層ビルと人工衛星
4.溶けた銃口
5.忘れた
POLYSICS
1.SUN ELECTRIC
2.Young OH! OH!
3.That's Fantastic!
4.Sea Foo
5.How are you?
6.シーラカンス イズ アンドロイド
7.Let's ダバダバ
8.Urban Disco (the telephonesカバー)
THE NOVEMBERS
1.Hallelujah
2.Misstopia
3.Gilmore guilt more
4.こわれる
5.Xeno
6.黒い虹
TOTALFAT
1.夏のトカゲ
2.Phoenix
3.晴天
4.Your Goddamn Song
5.Intermission
6.PARTY PARTY
7.Place to Try
8.DA NA NA
BIGMAMA
1.荒狂曲“シンセカイ”
2.Strawberry Feels
3.POPCORN STAR
4.ヒーローインタビュー
5.MUTOPIA
6.ファビュラ・フィビュラ
7.秘密
8.CPX
[ALEXANDROS]
1.LAST MINUTE
2.city
3.Starrrrrrr
4.ハナウタ
5.I Don't Believe In You
6.Mosquito Bite
7.Kick&Spin~Adventure
the telephones
1.D.A.N.C.E to the telephones!!!
2.Yeah Yeah Yeah
3.DaDaDa
4.RIOT!!!
5.Homunculus
6.A.B.C.DISCO
7.Keep Your DISCO!!!
8.Urban Disco
En1.Monkey Discooooooo
En2.Love&DISCO
【FUTURE STAGE】
postman
1.光を探している
2.Moongaze
3.正夢
4.夢と夢
polly
1.生活
2.花束
3.新曲
4.バースデイ
5.狂おしい
aint
1.君のこと
2.透明な世界
3.催花雨と踊り子
4.Moondrop
5.Alnitia
odol
1.大人になって
2.four eyes
3.綺麗な人
4.years
5.生活
ウソツキ
1.新木場発、銀河鉄道
2.ボーイミーツガール
3.夏の亡霊
4.名もなき感情
5.一生分のラブレター
Helsinki Lambda Club
1.Skin
2.ユアンと踊れ
3.King Of The White Chip
4.PIZZASHAKE
5.Jokebox
6.Lost in the Supermarket
7.素敵な負け犬
8.This is a pen.