NICO Touches the Walls/幕張メッセイベントホール

NICO Touches the Walls/幕張メッセイベントホール - All photo by Atsushi KimuraAll photo by Atsushi Kimura

●セットリスト
1.N極とN極
2.Broken Youth
3.FRITTER
4.THE BUNGY
5.まっすぐなうた
6.夜の果て
7.武家諸法度
8.妄想隊員A
9.衝突
10.BAD ROBOT
11.バニーガールとダニーボーイ
12.ストロベリーガール
13.GUERNICA
14.B.C.G
15.サドンデスゲーム
16.そのTAXI.160km/h
17.チェインリアクション
18.泥んこドビー
19.マトリョーシカ
20.パンドーラ
21.プレイヤ
22.梨の花
23.image training
24.フィロローグ
25.芽
26.(My Sweet)Eden
27.エーキューライセンス
28.ビックフット
29.風人
30.TOKYO Dreamer
31.手をたたけ
32.マシ・マシ
33.SHOW
34.VIBRIO VULNIFICUS
35.mujina
36.渦と渦
37.Funny Side Up!
38.来世で逢いましょう
(アンコール)
EN1.Ginger lily
EN2.天地ガエシ


ライブでは終盤にやることの多い“N極とN極”を、光村龍哉(Vo・G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)のトリプルギター編成でぶっ放すオープニングからして、観る者の意表をついてきたNICO Touches the Wallsの幕張メッセイベントホールワンマン。「幕張、楽しんでいこうぜー!」(光村)と、対馬祥太郎(Dr)のビートに乗っかって鳴らされたのは、『TWISTER -EP-』収録の最新ダンスチューン“FRITTER”。続くは、サポートメンバー・浅野尚志のバイオリンが加わり、よりエキゾチックになった“THE BUNGY”だ。“まっすぐなうた”では光村が歌詞を飛ばし自分で苦笑いしていたが、要はそれだけ前のめりな気持ちだったということ。実際、冒頭5曲で真っ先に伝わってきたのはバンドの好調っぷりだった。光村の喉はよく鳴っているし、古村の掻きむしるようなギターソロも抜群。坂倉、対馬のコンビネーションは軽やかながら安定感がある。

NICO Touches the Walls/幕張メッセイベントホール
「-Electric Side-」、「-Acoustic Side-」、「-Lake Side-」、「-Funny Side-」と4種の副題を添えながら、趣向の異なるライブを並行して展開。約半年にわたって行われたNICO Touches the Wallsの「“N X A” TOUR」。ツアーファイナルの幕張公演と、約2週間前に行われた愛知・大阪公演は「-Funny Side-」にあたり、それらのライブをファニーたらしめていたのが、セットリストの大半を占める「ミステリーゾーン」というコーナーだった。「ひょっとしたら今年イチ……いや、このバンドが始まってから一番おかしなことをこれからやろうとしています」、「僕らの珠玉の名曲の数々が怒涛のように押し寄せてくるコーナーです。あなたは生きて帰れるでしょうか?」。光村の言葉に客席の期待が膨らむなか、いよいよ未知の領域へ突入していく。

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以前には数曲をメドレー形式で演奏する「ノンストップメガミックス」を披露したことのある彼らだが、今回の「ミステリーゾーン」はそれとはまた別のものだった。例えば、“妄想隊員A”のサビから突如“衝突”のサビへワープしたり、“GUERNICA”の間奏に“B.C.G”のリフが入り込んできたり、“image training”に“フィロローグ”のコーラスを重ねたり、メロとコードは“手をたたけ”なのにキメの刻み方が“マシ・マシ”になっていったり――といった具合。各曲・各パートの旋律やリズムをいち素材として捉え、それらをコラージュ、大きな一枚絵として再構築していくようなイメージである。客席から一際大きな歓声の上がった“BAD ROBOT”をほんの一瞬で終わらせたり、“ストロベリーガール”を音源とは全く違うテンポで演奏したりと、基本的には聴き手を容赦なくぶん回すような展開。しかし、呆然とするどころか、次の楽曲を察する度に喜んだり驚いたりしているオーディエンスの順応性もなかなか侮れない。

NICO Touches the Walls/幕張メッセイベントホール
ニコは元々ライブアレンジに拘りを持ってきたバンドだが、それでも、ここまで変則的なことをやったのは今回が初めてだったように思う。30曲弱を40分間で演奏したそれは、いわば人力マッシュアップ。メンバーは、ライブ当日を迎えるまでの間、とにかくひたすら練習したらしい。デジタルの力に頼ればもっと簡単にできるだろうに、あえて茨の道を選択するのはどうしてだろうか。その理由は、戯れ合うように音を合わせる、会場中の誰より楽しそうな4人の姿を見れば明らかだった。

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セットリスト通りの曲順で組んだプレイリストを再生すれば、何となくの雰囲気を作ることのできてしまうこのご時世で、そこからはみ出してしまう部分があるからこそ、ライブって、バンドって、面白い。誰の顔色も窺うことなく「今やりたいこと」の方へ全力で舵を切ることにより、ロックバンドのファンならば誰もが感覚的に知っているであろうその価値を、今一度、自分たちの手で輝かせてみせる。形は歪でもいい、自分たちがロックバンドである意味を、高らかに鳴らす。スタジオでやっていて楽しい楽曲をひたすら詰め込んだ最新作『TWISTER -EP-』にも通ずるその戦い方は、歳月を経て衝動に立ち還った、今のニコにしかできないことだ。

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《傷だらけになって今 手に入れた その光》(“プレイヤ”)というフレーズは、これまでの欠片を繋ぎ合わせることにより新たな剣を作ってみせた、彼らの現在地そのものだった。ニコというバンドの人生活劇的な楽曲“SHOW”では、真っ白な光を浴びた光村が、身を捧げるように絶唱した。「そんじょそこらのバンドにはできないことだと思います」(光村)という言葉に滲むのは、誇りと矜持。いつのまに、こんなにも骨太なバンドになったのだろうか。“VIBRIO VULNIFICUS”、“mujina”、“渦と渦”と曲数を重ねるにつれ、メンバーの表情は一層充実感に満ちていき、そのサウンドは迫力を増していく。クライマックスに差し掛かり、オーディエンスも思い思いに踊るなか、「何やったって自由だ、音楽の上では!」と光村が叫んだ。

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アンコールでは“Ginger lily”を演奏。そのあと光村が、ツアータイトルにある
「N X A」は「NICO X(10)th Anniversary」という意味なのだと明かしたものの、直後、実は諸説あるのだと話し、回答をぼやかした。その感じもまた、一筋縄でいくことのないこの人たちらしいかもしれない。

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「音楽の上では何やったって自由ですから、これからも一緒に遊んでいきましょう!」(光村)と語る彼らは、いったいここからどこへ向かっていくのだろうか。その行方を私たちはまだ知らないが、きっと彼らのことだから、予想だにしないことをやってのけるのだろう。フィナーレを飾った通算40曲目“天地ガエシ”の晴れやかな響きに、思わず胸が高鳴った。(蜂須賀ちなみ)
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