04 Limited Sazabysが主催する「YON FES 2019」が、今年も愛知県・モリコロパーク(愛・地球博記念公園)で開催された。以下の記事では、2日目(4月7日)に出演した全アーティストのライブの模様をレポートしていきたい。
初日同様、フォーリミメンバーによる前説を経てライブがスタート。初年度以来の出演となるKEYTALKは初っ端から“MATSURI BAYASHI”、“MONSTER DANCE”、“Summer Venus”の3連投で会場のテンションを引き上げる。そのように自らに期待される役割をきちんと果たしていた一方、4人の演奏が衝動溢れるものだった理由は、KEYTALKにとってフォーリミが「一緒に切磋琢磨してきた仲間でありライバル」、つまり初心を思い出させてくれる存在であるからだ。終盤にはフォーリミのKOUHEI(Dr・Cho)を招き、お互い小さなハコでライブをしていた頃の楽曲=“夕映えの街、今”を披露。その間、手持ち無沙汰になった八木優樹(Dr・Cho)は客席エリアへ勢いよく飛び込んでいった。
続いてはENTH。昨年のライブは勢い先行型だったが、今年は絶妙な不敵さがあり、人の庭を荒らして帰るぐらいのテンションだったのが良かった。特に「"TH"」のようなビートが様変わりしていく楽曲で、オーディエンスをしっかり沸かせていた点にその手腕が表れていたように思う。客席エリアの様子を察してdaipon(Vo・B)が「もうみんな(曲を)待ってるね」とMCを切り上げるほど、みんながENTHにワクワクしていたのだ。
「敬愛すべき04 Limited Sazabys、ならびにこの時間この会場に集まってくれたあなたに、とびきりの愛を込めてやらせていただきます」。SKY STAGEのSUPER BEAVERは、渋谷龍太(Vo)が巻き舌交じりにそう宣言してから演奏を始めた。「『音楽でひとつに』とか馬鹿なこと言ってんな。お前ひとりで来い」と、コール&レスポンスにてあなただけの声を上げるよう促す彼ら自身もまた、自分と戦うみたいに、全身から振り絞るようにして歌い鳴らす。バンドとあなたもひとりの人間であって、ライブは「一対一」以上でも以下でもない。いつだってどこだって、SUPER BEAVERはその点に誠実なバンドだ。
LAND STAGEにはHump Backが登場。「夢みたい」と感慨を漏らすぴか(B・Cho)は元々フォーリミのファンであり、「メンバーの夢はバンドの夢」と語る林萌々子(Vo・G)の夢は「バンドで自分の好きな歌を歌うこと」。それを叶えてくれるのが、ぴか、美咲(Dr・Cho)の存在とのこと。そんな美しき関係を体現した王道ど真ん中の3ピースサウンドが、馬鹿みたいに綺麗な空の下で堂々と鳴り響く様子は、ひたすらに痛快だった。
「あいつらがとても大事にしている地元・名古屋のフェスにようやくSiMを呼んでくれました。coldrain、ありがとう!」。1日目の10-FEET同様、フォーリミにとってフェス主催の先輩であるSiMからはそんな愛ある冗談も飛び出した。「ブレずにやっててすごく素晴らしいなと思います。おめでとう!」とフォーリミへ賛辞を贈るMAH (Vo)。そんな彼らが轟かせる晴天に似合わない漆黒のサウンドは、このバンドがブレずにやってきた証そのものである。信頼の裏返しとしてオーディエンスを煽りに煽りまくった結果、巨大なサークルがあちこちで発生。“KiLLiNG ME”ではフォーリミ・HIROKAZ(G)とのコラボもあった。
昼下がりのLAND STAGEにSPECIAL OTHERS。メンバーそれぞれの鳴らす音の粒が、次第に同じ方向に向かっていき、いつの間にかアンサンブルが始まっている。オーディエンスはリラックスしながら身体を揺らしており、ここまでの流れとは異なる空気が生まれた。「YON FES 2016」がきっかけとなったフォーリミ・GEN(B・Vo)とのコラボ曲“loop”では、もちろんGENが登場。
クリープハイプのライブは“栞”からスタート。歌詞になぞらえ「《元気でね》というよりかは《GEN来てね》という感じですね」と尾崎世界観(Vo・G)が言うと、フォーリミ・GENが登場。同曲はツインボーカルで届けられた。GENが去ったあとには6曲を演奏。クリープハイプが「YON FES」に出演したのは初年度以来のことである。特に“5%”~“二十九、三十”の行間を含んだ、背中で語るような演奏には、この3年間での変化や成長がよく表れていた。友達でも先輩後輩の関係性でもないが、交わる時がやって来たら再会するようなバンド同士。そういう適度で適切な距離感がクリープとフォーリミの間にはあるように思う。
LAND STAGEにはSurvive Said The Prophet。SUNNY CAR WASHの代打ではあったものの、「どこのシーンにも属せなかった」と言っていたフォーリミが、ラウド界の異端児・サバプロがのびのびやれる場を作ったことには大きな意味がある。「一番最後に呼ばれてこんなに温かく迎えてもらえることが不思議でしょうがないです!」とYosh(Vo)が喜ぶほどの盛況っぷりにライブバンドとしての確かな力量を見た。
「大切な仲間の大切な日です。あなたにとっても大切な日ですよね?」。そう投げかけてから演奏を始めたBLUE ENCOUNTは、そんな日に立ち会える喜びを爆発させるように鳴らしていた。サウンドが前のめりにドライブするなか、機材トラブルにより辻村勇太(B)の音が出なくなる場面もあったが、機転を利かせ、その間他3人が“monolith”のカバーを披露。終盤、「フォーリミに出会えてなかったら音楽を辞めてた」という田邊駿一(Vo・G)が、「04 Limited Sazabysというバンドを作ってくれてありがとうございます!」と舞台袖のフォーリミメンバーへ叫ぶ場面は感動的なものだった。
ハルカミライのライブでは、橋本学(Vo)の野生児的な立ち振る舞いやまっすぐな歌声、バンドが楽しくてしょうがないのだと言わんばかりにフレッシュなサウンドに胸を打たれた。無邪気な喜びに満ちたパンクサウンドが鳴らすのは、彼ら流の人間賛歌。たくさんの拳が上がるなか、橋本はフォーリミがトリを飾るSKY STAGEを指し、「あっちに行ってもっと歌う元気、取り戻させてやるよー!」と笑っていた。
そしていよいよフォーリミの登場。“message”、“fiction”、“escape”を終えると、GENが「名古屋が生んだスーパーヒーロー、04 Limited Sazabysです」と挨拶。オーディエンスを煽るRYU-TA(G・ Cho)の声は、目一杯張り上げられていて裏返る寸前の状態。若干前のめり気味に鳴らされた“Chicken race”では、やや速めのテンポを物ともせずKOUHEIのキメがバッチリ炸裂。巨大スクリーンがカッティングをするHIROKAZの手元を捉える。心なしか、その動作にはいつもより力が入っているように見えた。
“Shine”は音源にも参加したスペアザの芹澤 "REMI" 優真(Key)を迎えた編成での演奏。続くMCでGENは、ここまで出演したバンドに対し、「(フォーリミを)本気でやっつけに来てる。こんなに嬉しいことはないです」とコメント。その上で「でもやっぱり、最後にはフォーリミが一番カッコよかったって思わせたいんですよ! だってここ名古屋だし!」と断言した。自分自身に生まれ変われ。そうして鳴らされたのは“Squall”だ。
「ラスト! 渾身の“monolith”!」と“monolith”で本編終了。まるで、周囲からの期待と愛を自らの力に変え、最終的に良いところを全部掻っ攫っていく主人公のように。今年の「YON FES」におけるフォーリミのライブは、2日間とも非常に頼もしいものだった。
オーディエンスからの「フォーリミ、フォーリミ!」コールに対し、「いや、(アンコールの)求め方よ!(笑)」(KOUHEI)、「もっと出せんだろ、丘の上!」(RYU-TA)などと言いながらメンバーが再登場。GENから「『YON FES』って本当に俺たちの宝物になってます。今後も守っていきたいのでみなさん一緒に守っていってください」と改めて伝えたあと、アンコールとして“swim”を演奏。そしてKEYTALKの首藤義勝(Vo・B)を迎えて“Remember”を、さらにSUPER BEAVERの柳沢亮太(G)、BLUE ENCOUNTの江口雄也(G)が加わりもう一度同曲を披露した。
こうして「YON FES 2019」は幕を閉じたのだった。なお、rockinon.comではこの2日間のライブレポートを掲載したが、4月30日(火)発売の『ROCKIN'ON JAPAN』6月号では「YON FES 2019」特集を改めてお届けする予定。鋭意制作中です。楽しみにしていてください。(蜂須賀ちなみ)
1日目のレポートはこちら。