5thアルバム『Chasing the Horizon』を引っさげて昨年秋からスタートしたツアー「Chasing the Horizon Tour」は、国内のライブハウスでの対バンツアーでキックオフし、その後MAN WITH A MISSION史上最大規模となる阪神甲子園球場でのワンマンを敢行。アジアとヨーロッパでワールドツアーを巡ると、再び日本に帰り「Chasing the Horizon World Tour 2018/2019 〜JAPAN Extra Shows〜」と銘打ったツアーに突入した。アルバムのリリースから約1年をかけて、じっくりと国内外を回って行ってきたライブで、『Chasing the Horizon』の曲はさらに強靭に磨き上げられ、またMAN WITH A MISSIONというロックバンドとしてのスケール感もより一層大きくなった。週のど真ん中の平日にもかかわらず狼ファンで埋め尽くした横浜アリーナの2デイズ、その2日目も、ライブハウスのような熱気を生み出しながらも、アリーナという大きな会場でロックミュージックの果てない夢やロマンを見せる高揚感で観客を一体化した。
アルバム『Chasing the Horizon』の曲を中心に据えたセットリストではあるが、今回の「Extra Shows」では今年に入ってリリースされた“Left Alive”や最新の“Remember Me”など新曲も披露。ツアーを行ないながらもその先へと突き進んでいる姿も見せた。とくに“Remember Me”では、前日のライブでこの曲が主題歌を務めるドラマ『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』に出演する俳優陣がサプライズ出演をし会場を盛り上げたということもあって、観客から「今日は!?」という声が上がったが、この日はゲストの登場はなし。とはいえ、残念がる観客の心と体を、ドラマティックなEDMのごとくカタルシスたっぷりに上昇していく力強いバンドサウンドとキャッチーな歌心でグッと掴むと、会場を揺るがすように一斉にジャンプさせ、シンガロングを生み出していく。エモーショナルで熱量の高いトーキョー・タナカ(Vo)のボーカルも曲を引っ張り上げていて、リリース間もないが、すでに新たなライブのアンセム曲となり得ている。これからのライブでもどう飛躍していくのかが楽しみでもある。
またこのロングツアーを通して育て上げてきた『Chasing the Horizon』での曲は、どれもライブには欠かせない曲として獰猛に、スリリングに、アグレッシブに進化を遂げている。“Take Me Under”や“2045”など、さまざまな音楽性が掛け合わさった重厚なミクスチャーサウンドも、ライブを重ねることで変幻自在なモンスターとなって、観客のコブシをあげさせ、あるいは熱唱させ、また心に染み入るようにも響かせる曲となった。タイトル曲である“Chasing the Horizon”ではジャン・ケン・ジョニー(G・Vo・Raps)が、今回のツアーや世界ツアーで得た思いを語り、そしてアルバムに込めた思い同様に、「コレカラモ、遠クニ何ガアルノダロウト野放図ニ、青臭ク信ジタイ」とびっしりと横浜アリーナという大きな会場を埋めた観客を見て、「バンドヲ続ケテヨカッタト思イマス。ミンナノオカゲデ成リ立ッテイル。コレカラモ何カヲ追イ続ケテイク、我々ノ音楽ガミナサンノ心ニササレバ幸イデス」と付け加えた。
懐かしい曲を、と言って“Mash UP the DJ!”からスタートしたメドレーでは、カミカゼ・ボーイ(B・Cho)がフロアへと降りて会場を走り、観客とハイファイブしたりしながら、アリーナ後方ブロックへとダイブ! 観客にベースを弾かせたり、自らもガシガシと弦に噛み付いたりと大暴れで、体を張ってフロアの温度を上昇させた。この日2度ほどフロアへと降りて、広い会場を2周している。ジャン・ケンに「完全ニ距離感マチガエテ、疲レテルケド」と突っ込まれていたカミカゼだったが、こういう野放図に暴れまわるメンバーや、キレッキレのセッションの後にこじんまりとした手品を見せるスペア・リブ(Dr)&DJサンタモニカ(Djs・Sampling)の愛嬌たっぷりな存在も、フレンドリーだ。楽曲もバンドとしての見た目もオルタナティヴなMAN WITH A MISSIONだが、今やその存在はロックシーンの王道として、新たな道を開拓していくアイコニックなバンドになり得ている。狼たちがこの先で何を巻き起こすのか、今回のライブを観ても期待感しかない。(吉羽さおり)