髭(HiGE) @ 渋谷クラブクアトロ

先月13日にもここで最速ライブレポートした、髭(HiGE)主催の「13日の金曜日恒例(?)ライブ・イベント」こと「CLUB JASON」。フロアの天井からは、先月ステージにわらわらと登場したプリティなゾンビ・ダンサー13体の血みどろマスクが天井から吊るし上げられていたり(これは実のところ、クアトロのステージには13人もダンサーが乗らないという物理的制約からこうなったと思われる)、関係者受付では事務所社長氏はじめスタッフがご丁寧にジェイソンのマスクをかぶってお出迎えだったり、渋谷クラブクアトロにはライブが始まる前から笑気ガスのような悪ノリ感が広がっている。

そんなじんわりとした熱気の中、19:11にメンバー登場。“アメニウタエバ”で開演!――のはずが、いきなり須藤のギターの音が出ない。普通ならオーディエンスは戸惑いメンバーは焦り、立て直すのに必死になってしまうところだが、「これがライブのいいところ!」の須藤のひと言でメンバー苦笑&フロア失笑、トラブルも燃料に変えて♪ランララーラ、と軽やかなビートを刻んでいくのはさすがだ。曲中のブレイクで「はいどうも、髭ちゃんですよ!」と挨拶する頃には、もう高度100万kmのサイケデリック安定飛行に入ってしまっている。前回も書いたが、髭ちゃんのエンターテイナーとしての図太い成長ぶりはこんなディテールにも観て取れる。

満員のクアトロを見回して「渋谷の街にこんなにたくさんの人がいるんだってことに、すごい感動してます」と、どこまで本気かさっぱりわからない例の口調でMCかます須藤。3月4日に発売されたばかりのアルバム『D.I.Y.H.i.G.E.』の曲は“オーバーグラウンド/アンダーグラウンド”“ミートパイ フロム ロシア”“D.I.Y.H.i.G.E.”“ミスター・タンブリンマン”の4曲に抑えていたのは、5月の全国ツアーに向けて温存していたということだろう。が、逆にその分“右脳の片隅にて”のようなインディー時代の曲も聴けたりするのもいい。

そして、その極めつけは2003年の1stミニアルバム『LOVE LOVE LOVE』収録の“無題”! ダルなサイケデリック・ブルースのトラックに乗せて、須藤がポエトリー・リーディングの要領でロクでもない真実を片っ端から暴いていく特濃ナンバーであり、こんな「お祭りごと」でもなければそうそうお目にかかれない曲だ。さらにこの日は、“無題”から“Electric”(昨年「40分1曲シングル」として発表した、“Acoustic”の超エレクトロ版リアレンジ・バージョン)につないで壮絶なクライマックスを描き、さらに“無題”に戻る、という離れ業も難なく披露――と見えたのだが、終演後にメンバーに聞いたところ、この曲は2日前のゲネプロが終わった後で「やっぱりやろう」ということで慌ててリハーサルを開始したらしい。そんなバタバタ感も、この日のアクトにいい感じの開き直り感を与えていたのかもしれない。「うまくいった! 今日のプレイでいちばんうまくいった!」という須藤のMCが、そんな心境をよく表している。

「楽しい? よかった! すっごいいろいろ考えたから。みんなが引くぐらいずっと考えてたから」と須藤が言う通り、ところどころで3人組ゾンビ(須藤いわく「ニョキニョキ」「ミスピーチ」「フランケン」という名前らしい)が登場したり、そのゾンビがなぜかフロアにシャチの形の巨大風船を投げ込んでみたり、という寸劇チックな演出が、“D.I.Y.H.i.G.E.”“ギルティーは罪な奴”などのアゲ系の曲と相俟って爽快なまでの高揚感を煽っている。が、さらによかったのは、その高揚感を“ミスター・タンブリンマン”のような穏やかな曲でもそのままキープしていたことだ。演出とか創意工夫とか、そういうレベルを超えた「場」としての充実感が、この日のステージにはあった。

アンコールではなぜか、メンバーの口をガムテープでふさいで回る須藤。自分はガムテープで目隠しして「僕はU2のボノです!」とうそぶきながら、ジョン・レノンの時代は世界が争ってたから平和を歌えばよかったけど……みたいなMCを、またもどこまで本気かわからないトーンでうやうやしく繰り広げていく。「僕はみんなのことが大好きなだけなのに、どうして変なことばかりやっちゃうんだろう?」。いや、それが須藤寿という人だからですよ、須藤くん。ロックに誠実であるがゆえに、にこやかに錯乱していくロック。それが髭だ。ということが、改めて随所に垣間見えた一夜だった。

「また、13日の金曜日に!」と言って去っていった髭の5人。次の「13日の金曜日」は11月か。その前に、5月のツアーだ。東京は初の新木場STUDIO COASTワンマンだ。さらにその前に、昨年同様エイプリルフールに開催される三軒茶屋Heaven’s Doorワンマンというもあるので、文字通りアンダーグラウンドでの髭ちゃんを体感したい人はぜひ。ぎっちぎちの満員だとは思うが。(高橋智樹)

1.アメニウタエバ
2.溺れる猿が藁をもつかむ
3.GOO
4.オーバーグラウンド/アンダーグラウンド
5.B級プロパガンダ
6.ブラッディ・マリー、気をつけろ!
7.右脳の片隅にて
8.Mr.アメリカ
9.無題
10.ミートパイ フロム ロシア
11.D.I.Y.H.i.G.E.
12.ギルティーは罪な奴
13.ミスター・タンブリンマン
14.ワンモアタイム ワンモアチャンス
15.ドーナツに死す
16.黒にそめろ
17.下衆爆弾
18.ハリキリ坊やのブリティッシュ・ジョーク
19.ロックンロールと五人の囚人
20.ダーティーな世界(Put your head)

アンコール
21.I’m so sick.
22.白い薔薇が白い薔薇であるように
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